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大学でプラスチック汚染の研究をした理由

私は2019年まで大学院でマイクロプラスチックによる海洋汚染の研究をしていた。今日はどうして私がその研究を選んだのかまとめてみる。


元々プラスチックを研究するつもりはなかった

ビビッ!ときて私があの研究室に行きたい!と思ったのは高校3年生の夏。自然や動物が好きだから漠然と「環境」というものに興味があった私は、それっぽい名前の学科を端から調べて見に行っていた。都市環境・環境工学という建築工学系は違うし、応用生物・応用化学という方面も違うな、とモヤモヤしていたところで出会ったのが「環境資源科学科」。このときははっきり言ってプラスチックのプの字も見えていなかった。

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(画像:wikipedia)


興味は「市民の科学・環境への介入」

環境資源科学科の研究紹介を聞いていた時に、まず興味を引いたのは大気汚染の研究をしている先生の話だ。大まかに言うと、空の高さの違う所で空気を収集して分析すると異なる物質が出てくるから、どの汚染物質が気流に乗ってどこから来ているのか調べられる、という内容だったと思う。でもそれ以上にワクワクしたのが、マイクロプラスチックによる海洋汚染の研究「International Pellet Watch」というやつだったわけだ。それは、海岸の砂浜に漂着しているレジンペレットというプラスチック製品の原料になるものを拾い集めて分析すると、汚染物質が検出されるため、その海域の汚染状況モニタリングが出来るというものだった。

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ペレットウォッチはそれだけではなくて、私が特に惹かれたのは次の部分だ。ペレットは残念なことに、世界中どこの砂浜にも落ちている。誰でも見つけやすく軽いため、分析する試料となるものを世界中に呼びかけて一般の人からも集めているということだった。世界中から送ってくれるのは研究者だけではなく、ボランティア団体、学生、子供、地元のサーファー、旅行者など研究には全くかかわりのない一般市民がたくさんいるらしい。そして送ってもらったものを分析し、汚染物質とその濃度をgoogle map上に色でカテゴライズしてそれをWeb上で公開している。

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出典:http://www.pelletwatch.org/gmap/

それを見ることで、送った人は「自分がいつも行くあの浜はこんなに汚れていたのか」「目で見ただけでは分からなくても、あの浜は数字ではこれだけの濃度が出ているのか」と自分ごとにすることができる。科学に関心のない人に対しても身近に感じられる環境啓発活動に繋がる、というところに私は物凄く面白さを感じ、自分がやりたいことはこれだ!と思ったのだった。
つまり、プラスチックの研究がしたくてそうしたというよりは、自然や”環境問題”に関心のない人が興味を持つきっかけを作りたい、というのが根本にある。これはやってきたこと・やっていることにずっと通じている。

理系が苦手だからこそ

結果院まで行った私だが、理系科目が苦手だった。そんな人でも興味を持てたということ、しかもその内容が自分らの生活にかかわる内容であることが、ペレットウォッチのもう一つの良さだと感じた。しかも、歴史が苦手という理由で理系を選び(安易すぎる...)、定期テスト後は数学の先生でありバスケ部の顧問の前をびくびくしながら通っていた私だからこそ、「科学?難しいよね、わかる~。でもこれによって現状こうなっていることがわかるんだよ!」と市民目線になって伝えられるじゃん、というのも良いなと思ったポイントだった。

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結果大学院まで行った

そんな私は、結局大学院まで行った。やはり学部だけではほとんど研究は進められないこと、もっと地点数や試料数を増やして深く広く知りたいと思ったからだ。

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そして理系苦手マンを発動させて、興味はあるけど小難しくて良くわからない、とっつきにくいと言う人たちに情報を届けることをしたいという想いもあった。実際にそうやって色んな年齢・立場の人と関わってとても楽しかった。(悔しいこともあった笑)
科学・研究と、自然や環境に興味のない人の間になりたいという想いから、今は卒業時にまとめた投稿論文用のデータや下書きを社会人になってから改めて教授とやりとりし、やっとこさ英文校閲までこぎつけた。先生、協力してくださっている皆さんに感謝しかない。

そしてそれが今の仕事に通ずることが増えてきている。
最後に改めて、私はプラスチックの研究者になりたいからではなく、「科学とそれ以外」や「自然と、自然に興味のない人」との間になって、少しでも人間として自分達の地球や将来のことを考える人が増えたらいいな、と思ってプラスチックの研究を始めた。



なので、みなさん安心してお気楽におしゃべりしましょう。
読んでくださりありがとうございました。

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