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『助けてください、身体、洗えません』~統合失調症~入浴困難~

いつもは土曜日が入浴日であった。

土曜日はベテランさんが二人入ってくださっていた。

しかし 重篤なお宅の介護が増え、ヘルパーさんの手が足らなくなって、新人さんがたくさん入ってきた。

土曜日の新しいヘルパーさんは、かなり若い方になった。
パワフルである。
仕事も早いし話も早い。

だけれども私は、かなり若いヘルパーさんに入浴介助してもらうのが恥ずかしくて、入浴の介助をしてくださいと言い出せなくなっていた。

私のヘルパーさんが入る日は、水曜日と土曜日である。

それで 水曜日の今日、朝のうちに事業所の方に連絡して、私の入浴介助のお願いをしておいたんだった。

水曜日の私の ヘルパーさんは、歳も近いし大きなお子さんもいるし、話しやすいヘルパーさんなので、頼みやすかった。
老人介護福祉施設などで、身体介助を行っているので、慣れている。

何より、気心が知れているヘルパーさんなので、安心だった。

まずは エンジンをかけなくてはと水分を摂り、一服して浴室に入った。

「大丈夫か-い?」

「ここにいるからね-!」

優しい声が飛んでくる。

「今下着 洗い終わりました!」

「今頭洗えました!」

頭と顔を洗い終わったところで、体が冷えた。

一瞬 、湯船に入った瞬間、「怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!!」が襲ってきた。

強烈な不安から、一気に血圧が下がった。

声が出なくなった。

体も動かない。

「大丈夫かーい?」

固まってしまった。

思い切って声を出した。

「助けてください…!洗えません…!」 

ヘルパーさんが すかさず浴室に入ってきてくださった。
背中と首を洗ってくれた。

「ありがとうございます…!なんだか 勢いで行けそうです!」

「大丈夫ですか? できる?」

「頑張ってみます…!」

呼吸を整えて、足から順番に洗った。

丁寧じゃないけれど、とにかくゴシゴシ洗った。

「時短…!!!!!」

スイッチを入れて猛然と洗った。

ヘルパーさんの掛け声がかかってくる。

声が硬直しているが、「大丈夫です!洗えてます!」と 、なんとか 返した。

頭からお湯を被って、体中の石鹸 を流し、わずかに残った湯船のお湯に、ざぶんと身体を滑り込ませた。

奇跡だ。
今日は20分は入れたぞ?! 

頑張った…!!!

お風呂から出て、ヘルパーさんにお礼を言った。

下着を干して、新しい下着に着替え、パジャマも新しいのを着た。

汗をふきながら、ヘルパーさんと だべった。

ヘルパーさんは閉所恐怖症で、ユニットバスが苦手なそうであった。

だから、お風呂に入るのが怖い気持ちが分かると言っていた。

「私いっつもシャワーなの。湯船に浸かってあの狭い空間に閉じ込められるのがちょっと怖くて…」

「分かります 分かります!!私もダメなんです。息苦しくなってきちゃって…」

「10分いられればいいほうだよね 、ユニットバス…」

「私も10分 なんですよ いつもは。湯船に浸かっていられないから」

「でも今日頑張りましたね!!10分以上入ってた!!」

「おかげ様です。体を洗う時 スイッチが全部切れて、どうしようかと思いました。血圧が がっくり下がって、またダメだが襲ってきて、固まっちゃったんですよ。あそこで洗ってもらえてなかったら、体は 無理でした」

そんなこんな 、あれこれと話した。

ケースワーカーさんからお電話が入っていた。

今日のことを伝えて、入浴の日を水曜日に決めたと話した。
ケースワーカーさんも安心していた。

調子がいい時は、お風呂前の動画をTwitter にアップして、気合いで入れるのだが、毎回そうとはいかない。

安定の水曜日。
安定のお風呂。

これからは、そのスケジュールでお風呂に入れる。

ヘルパーさんには、本当に有り難かった。

そうやって 今日の入浴は、つつがなく 無事に終わったのだった。

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