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『人間仮免中』からの再出発~ジスキネジア・急性ジストニアを経て~『港町ブルース』へ

以下、今から10年前の漫画「人間仮免中」執筆時、2012年2月時点での1日ぶんの服薬である。
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(デポ剤)
・リスパダールコンスタ(50 mg)
(服薬)
・フルメジン糖衣錠(0.5 mg✕10錠)
・ヒベルナ糖衣錠(5 mg✕16錠)
・レボトミン(25 mg✕10錠)
・アローゼン顆粒(2 g)
・インヴェガ(6 mg✕2錠)
・デパケン R(200 mg✕6錠)
・ソメリン(10 mg✕1錠)
・アモバン(10 mg✕2錠)
・エホチール(5 mg✕3錠)
・アキネトン(1 mg✕6錠)
・セルベックスカプセル(50 mg✕3錠)
・イソミタール原末(0.2 g)
・ブロバリン原末(0.4 g)
・ソラナックス(0.4 mg✕2錠)
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当時、執筆 途中から精神障害者一級になった。

脱稿とほぼ同時に寝たきりになり、身体介助を受ける 暮らしになった。

当時悩まされていたのが、抗精神病薬の副作用のひとつである「ジスキネジア」と呼ばれる筋肉の不随意運動であった。

自分の意思とは関係なく、体の筋肉が思わぬ具合に、まるで舞踏病のように動き続けてしまうのだ。
これは自分では止められず、体が動き続けられるだけ 動き続けてしまう。

30代から徐々に徐々に「ジスキネジア」は始まり、37歳から45歳ぐらいまでの間、1番ひどく続いた。

加えて、37歳から45歳ぐらいの間まで、「急性ジストニア」(抗精神病薬の副作用の一つである錐体外路障害。不随意な筋収縮であり、頭頸部 や体軸の筋肉に出現しやすく、激しい 苦痛を伴う)が頻繁に起こるようになった。
その度にぶっ倒れては、筋肉の収縮の痛みに耐えかねて泣いたものであった。

そんな中、ただひたすら「お父さん 恋しさ」から描き上げた 漫画が、「人間仮免中」であった。

止まないジスキネジアと、頻繁に起こる急性ジストニアの中で描いた この漫画は、線もヘロヘロ、箱を書いてタクシー と書き入れなければなんだか分からない、低学年の小学生が描いたような絵柄である。

それを、331 ページまで描き続けた。

描き上げた後、「バルネチール」(ベンザミド系第1世代抗精神薬。スルトプリド。副作用の強さと危険性から現在ではあまり使われていない)をさらに大量に処方された。
私はほとんど喋れず、歩行もたどたどしくなり、思考も鈍麻 して、完全な 寝たきりとなった。

2012年5月22日、イースト・プレスという 出版社からこの「人間仮免中」が出版された。

「このマンガがすごい 3位」「この漫画読め2位」「本の雑誌 1位」。

書店員さん方がコーナーを設けてくださり、一気に売れた。

当時 私は全面的な福祉のサポートを受けるため、生活保護の暮らしをしており、入ってくる 印税は国に返還していた。

「人間仮免中」のネームを描くのは早かった。
描きたいことだらけだった。
素直にそのまんま、ワクワクした気持ちをのせてネームを描いた。

作画は膨大な時間がかかった。

この漫画のアシスタントしてくれた友達二人はどちらも知的 障害者で、二人とも統合失調症も併発していた。

私たち3人は、「人間仮免中」という漫画を描くという「作業療法」を行ったのだった。

片方 目の見えない私は、ベタやスクリーントーン、枠線などを手伝ってもらった。

この3人での作業は、非常に楽しいものだった。

表紙だけは、お父さんと東京で暮らしていた、まだ薬も少なく専業主婦をやれていた頃、お父さんにプレゼントした絵を使用した。

だからちょっと インチキである。

断筆してから10年ぶりの漫画であった。

この漫画を皮切りに、「人間仮免中 つづき」、「鬱くしき人々のうた 実録・閉鎖病棟」、地道に地道に漫画を描き続けた。

私の遅筆 っぷりは、自分の存在を忘れ去られたり、「もうとっくに死んでる」と思われたりと、そんなようなペースであった。

地道に地道に描き続け、今現在はフルカラーで、「人間仮免中 シリーズ第3章」に当たる「港町ブルース」の執筆を、不定期連載でじりじりと続けている。

医学は進歩し、また病気も軽減してくれ精神2級まで戻り、良い 主治医に恵まれ、訪問看護のサポートを受けながら執筆を続けている。

現在の服薬は、
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(日中)
・セパゾン2 mg✕3
・ブロムペリドール(インプロメン)0.6 g✕3
・補中益気湯7.5 g
・葛根湯エキス顆粒7.5 g
(就寝前)
・ブロムペリドール0.9 g
・ビペリデンリン塩酸塩錠1 mg
・サイレース2 mg✕2
・ユーロジン2 mg✕2
・バルプロ酸ナトリウム徐放錠A200 g✕3
・エビリファイ錠6 mg
・エビリファイ OD12 mg
(デポ剤)
・ゼプリオン150 mg
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長い道のりであったが、「人間仮免中」当時の病状からは、相当軽くなった。
今はこれっぽっちの服薬で済んでいる。
現在これですっかり落ち着いた。

ジスキネジア からも急性ジストニアからも解放されている。 

筆が早いとは言えないけれども、フルカラーで「港町ブルース」の執筆ができているということが感慨深い。
そして非常にありがたいことだと思っている。

よろしければ、サポートお願いいたします!!頂いたサポートは夫やわたしの医療費や生活費に使わせて頂きます。