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『バーチャル焼肉屋』ごっこ~食べられない身体の夫との『被災地の方へ』~

お父さんと、たまには 焼肉屋でカルビをたくさん食べた気分になろう!!
ということになった。

腹いっぱい、二人で 昔みたいに、焼肉屋さんでカルビやらレバーやら、牛タン やら ロース やら、ミノやらハツ やら、食べまくった気分になろうということにした。

それも、ちょっと上等な焼肉屋さんだ。

そのぶんのお金を勘定したら、だいたいこのぐらいはかかるよな??
ビールだって飲むし!!
そんな話 になった。

もちろんお父さんはもう、病気のため焼肉を食べられない体をしている。 
私も とっくにお酒をやめたし、長いこと肉を食べてないせいで、たまに 肉を食べるとお腹が びっくりして下痢をする。

だから 二人で、「バーチャル 焼肉屋」で「食べたつもりになるごっこ」というものをやった。

トルコで地震があったから、被害にあった、トルコの人たちや、シリアの人たちに、代わりに食べてもらうことにした。

トルコ大使館には、「カルビとロースと牛タンのぶん」振り込んだ。
国境なき医師団には、「レバーとミノ とハツのぶん」 振り込んだ。

お歳暮やお中元の時期。
いつも私たちは、「バーチャル 特別なものを食べたごっこ」というのをやる。
お父さんは食べられない。
だから私も食べない。
だからお世話になった人に、「自分たちが食べたいものを送って」、「食べたつもりになるごっこ」をする。
これは本当に嬉しいことなのだ。
そして美味しいと言われると、私もお父さんも、「あー 美味しかった!」そんなふうに思うのだ。

豪勢な肉ばかり たくさん食べて、ビールを飲んで、そんなことをちょっと「夢でやってみた」のだ。
気分が良かった。
腹がいっぱいになった。
一晩、上等な焼肉屋で、パ-ッとお金使って肉を食いまくって、腹いっぱいになって、酔っ払って帰ってくる。

私たちの小さな楽しみ、今はもう出来ない、二人のデート、「バーチャル 焼肉屋ごっこ」。

トルコの誰それさんは、カルビの代わりにお薬をもらえたかなあ。
シリアの誰それさんは、レバーの代わりに美味しいお水を飲めたかなあ。

それはとっても幸せな夢だった。
ちっちゃいけれども 幸せな夢だった。
お父さんと私の、今もうできない デート。
もうできない、お酒を飲んだり とか肉を食ったりとか。

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