プカプカ

神奈川県在住。獅子座。中学生の頃、先生に書いた詩をほめられ、それから詩人になりたいと思…

プカプカ

神奈川県在住。獅子座。中学生の頃、先生に書いた詩をほめられ、それから詩人になりたいと思うが未だに到達できず。北風に向かうような毎日で現代社会に疑問を持ち続けながら生きる。甘党あんこもの好き。チャーハン好き。「忠臣蔵」好き。動物好き。

最近の記事

「戦争画と出征写真」

「戦争画と出征写真」 ここに一冊の戦争画の本がある そしてここに、1940年(昭和15年)1月4日に出征する 青年とその家族の一枚の写真がある 戦争画の中に、国立近代美術館で観た絵画がある 兵士が折り重なるように、 戦っているのか、ただその場から離れようとしているのか 呻き、苦しみ、息が詰まるほどの重圧から逃れようとしているようだ 私は、立ちすくみ、胸が苦しくなる思いがした 描かれている多くの兵士の表情は、 人の胸の内にある様々を描いているように見える 目を伏せた無表情

    • 「コーヒーと窓の外」

      「コーヒーと窓の外」 カフェでコーヒーを飲んでいた 窓越しの通りで、男と男が喧嘩を始めた 中年の男と若い男 怒鳴り合い、相手をつぶそうと全身で立ち向かっていた 通りがかりの人は遠巻きに様子をうかがっている 周りの時間は止まったように、2人の爆発した時間だけが進んでいた 肉体は血でみなぎり、暴走している 感情が窓越しに伝わってきて 胸の鼓動が速くなり、手が熱くなった 殴り合っていた 人と人は立ち向かっていた 肉体と肉体はぶつかり合っていた 込み上げる怒りに邪魔するものはない

      • 「見えないものの正体」

        「見えないものの正体」 こころは見えない 自分のこころの奥の小さな隙間さえよく見えない 自分のこころのありかさえよくわからないのだから 自分以外のこころは見えているようで見えていないのは明らかだ 怒ったり、悲しんだり、恨んだりするのも こころがこころを勝手に考えて、作り上げて 自己満足しているだけだと思えてくる 悲しいのは自分以外を攻撃することに何の疑いを持たないことだ 深海の暗い底に怪物が住んでいると感じるのも 遠い空の光の向こうに天使が居ると感じるのも こころは知

        • 「何もない」

          「何もない」 何もない 怒鳴られても、怒鳴られても、何も出てこない 脅かされても、脅かされても、何もない 泣き叫ばれても、泣き叫ばれても、何も返せない 白、または、黒、 諦められても、悲しまない 陰湿な言葉を浴びせられても、唇を噛まない 石を投げられても、投げ返さない 罵倒されても、言い返さない 何も感じない、ふりはするけれど 胸の奥で導火線の火は消すけれど 常に持ち歩いているものはある そんなことも知らないようでは、 人をわかっていない 人間をわかっていない そんな人間が

        「戦争画と出征写真」

          「名前」

          「名前」 知り合いの女性の名前に鮎の字のついた人がいた 名前の由来を尋ねると 鮎は綺麗な水のところでしか育たないからと 父がそう願ってつけてくれたと教えてくれた 鮎が清流の透き通った水の流れに乗り 泳いでいる姿が目に浮かんだ 早く遅く流れを変える日常の中で女性の静かな佇まいに 父親の思いを見た気がした 真白で無防備な繋ぐ命に託して願う 世界の誰とも異なるその子自身の個性が 小さくとも、自分自身の花を咲かせるように 託された命の空箱を受け取り 私たちは、それぞれの個性と

          「名前」

          「秋の戦場ヶ原」

          「秋の戦場ヶ原」 白い花(シラヤマギク)がひっそりと咲き ススキの穂がまだ若いころ 戦場ヶ原にひっそりと秋が来る 男体山の肩から陽が昇るころ うっすらと湿る木道をあなたと歩いた 秋の風もさわやかに ふたりの心はトンボのようにあちこち止まり 湯滝から流れる水にサラサラと あなたと歩いてきた道に 運命というものはあるかも知れないと思い 散りばめられた花の優しさと野辺の草の覚悟を 思い起こさせられた 年月を重ねてきた湿原の 野花の生い立ちをあなたと歩み 途中の藪漕ぎも懐かしみ

          「秋の戦場ヶ原」

          「秋晴れの日」

          「秋晴れの日」 秋の晴れた日 河川敷を子供と歩く 小石を拾って投げる 小石はゆっくりと水に沈んでいく 風はさらさらと吹いて 水はひたひたと漂い 草はかさかさと風に揺れ子供の髪を流れる ふと、子供の頃に一人で遊んだ時間がよみがえり 胸がちょっと苦しくなる あの時と同じ、小石を踏んで歩くと小石の苦しそうな声がした 来た道を帰る 人の手のぬくもりを感じながら 小さな手のひらと、小さな指を感じながら ゆっくり帰る

          「秋晴れの日」

          「顔」

          「顔」 微笑んでいた いつも・・・ やさしかった いつも・・・ あたたかかった いつも・・・ 巡る時代と共に生きた 苦労の多い人生だったと聞いた 冬でも暖かい陽だまりのように みんなは暖められた 自分の顔は自分で見られないのだから 苦しくともいつもやさしく微笑んでいなさい、と教えてくれた 陽だまりは消え、微笑みは写真になってしまった もう誰もそんな人になりたいと言わなくなった どこかに居てくれるだけで良かった 迷いながら引き戸を開けると 外の空気とは違う陽だまり

          「触れられないこころ」

          「触れられないこころ」 こころに触れられなくて カラカラと音がする 部屋の空気に寄り添うように 互いに息をしながら 存在の確からしさを探す ペンを走らせる音 ダクトから出る風の音 窓から見える、枝を大きく広げる木の緑 部屋の奥まで届く陽の光 椅子が床を鳴らす音 (全ての2次元はプログラミングされている) こんな時にこそ、君を僕のものにする その手足も、唇も、黒い髪も 胸の奥にある小さな心臓も プリンターに出力して内ポケットにしまっておく

          「触れられないこころ」

          「稜線に立つ」

          「稜線に立つ」 岩だらけの坂を ひとつずつ 胸の音を聞きながら登る 誰の為でもない 人の尊さと偽りを知り、自分の何たるかを知り、 長い道のりを来た 小さく開く高山の花 露から流れる一滴のしずく 空に細く糸のように延びる稜線 果てなく、色を変え、また色を変える空 無関係なものは何一つもなく 全てを受け入れて 時に大きく拒絶さえする 孤高の山々は連なり その姿は信念に満ちて 比べられない時間を蓄えている その大きさに怯み、屈するわけには、いかない ほんの些細な私的な物

          「稜線に立つ」

          「一本の帰り道」

          「一本の帰り道」 駅からの帰り道 いつもの道を歩き、ふと立ち止まる 微笑んでいる自分の顔が 暗がりの中に薄暗く映り私を見ている それは、どんよりとした空の暗い雲か 街灯の揺らぎが闇に映す明かり 子供が泣く声  男のすすり泣き 怒鳴る男の声  怒鳴る女の声  それは風の音だったり、カラスが騒ぐ声だったりする、 電車の過ぎる音だったり、人ごみの音だったりする ひとつひとつが耳の奥に残る  何のためにある音だろう 耳障りで、教訓めいた、絶対正しいという差別的な勘違い 冷たい

          「一本の帰り道」

          「応援歌」

          「応援歌」 苦しめるその影を避けようとして 尚更に、囚われている 繋がれることで正当化される夢を語り 限られた時間を司る仁智の仮面を被り まことしやかに人を語る 惑わされることなく 繋がれることに利用されず 囚われることで安心せず 自分を責めてはいけない 息を整え 足を前に出し、歩き続ける そこは、地の底でも頂上でもない、どこでもない 自身の居るところ 自身が居るべきところ

          「応援歌」

          「こんな道もある、誰かの道」

          「こんな道もある、誰かの道」 道はいつでも分かれている 道の先には、重い雲 大きな石や、小さな石が道を塞ぎ転がって どうにかここまで来た 足が痛くて心はヘトヘトだ 本当はここで休んでいたい しかし、何故だかよくわからないけれど そうもいかない 元気に、進まないといけないんだ よーし、行くぞ、と言ってみる。 これで良いかな。 (自分はどこでその人自身になるのか)

          「こんな道もある、誰かの道」

          「果てしないこころ」

          「果てしないこころ」 今、どこにいるのですか 大きく繁る木の葉に隠れているのですか 落ち葉の中ですか 暗い土の中に眠る白い骨の中ですか うずたかく積まれた古い憎しみの本のページの中ですか 地図の上に落ちた赤いインクの染みの中ですか 小さな黒い尖った虫の背後に隠れているのですか 暗い路を往く水たまりの中ですか 空の黒い雨だれの中ですか 部屋の隅に捨てられた手足のない人形の中ですか 瞳の奥にある海の中ですか 机の奥に隠したナイフの鞘の中ですか 机の中のペンの先ですか 麦の穂の先

          「果てしないこころ」

          「ガタコンと旅」

          「ガタコンと旅」 電車にガタコン 揺れながら 私はガタコン 旅に出る 人から逃れて 人に会うため 自分に会うため 空を見る 差し込む日差しに人を見て 還る自分に 海を見る 人の少ない電車の中で 詩を読みたくて 山を見る ゆっくり走る時間に 自分をゆだねて 音を聞く ガタタン ゴトトン 身体は揺られて トンネルを抜け 陽の当たる 小さな駅は まぶしくて 母親の手を握る子の手は熱く 花が咲くのが 頼もしい 雨の降る 小さな駅は 寂しくて 傘をさす子の 手は冷た

          「ガタコンと旅」

          「動風」

          「動風」 風に向かう 大きな風が息苦しいほどに 吹く 積み重ねたものを揺らし 森の木々の悲しみを知らぬかのように 立ち向かわなければならない程に  存在さえ認めないように 吹く 切り株になってもなお 立ち枯れてさえ枝を出すように どんなに雨に濡れても 風に向かう 灰色の絵具を塗り延ばしたようにうごめき広がる空と 漆黒の大地は、互いに刺激し合うように荒ぶり 風の音は地の奥から耳に響く 真実の自己の影を見て 静かに自分の足で立ち続けること うごめく空から 風が吹く 大き