「顔」
「顔」
微笑んでいた
いつも・・・
やさしかった
いつも・・・
あたたかかった
いつも・・・
巡る時代と共に生きた
苦労の多い人生だったと聞いた
冬でも暖かい陽だまりのように
みんなは暖められた
自分の顔は自分で見られないのだから
苦しくともいつもやさしく微笑んでいなさい、と教えてくれた
陽だまりは消え、微笑みは写真になってしまった
もう誰もそんな人になりたいと言わなくなった
どこかに居てくれるだけで良かった
迷いながら引き戸を開けると
外の空気とは違う陽だまりの気配が残っていた
何だか涙があふれてきた
忘れていたものは
自分のそばにあったことに気が付いた
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