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歪んだ現実感と言わないでほしい 複雑性PTSD治療日記5

その1はこちらからどうぞ


治療を始めて1、2ヶ月の頃でしょうか、ふと思い立って一度AIに心理分析してもらったことがあります。
(これは遊びでやったものなので、本気ではやらないでくださいね。AIはあくまで言語モデルでしかなく、適当なこと言いますので…。)

「複雑性PTSDだね」

「根拠をお願いします」

「まずは解離、人間不信、トラウマからくる回避性人格障害…(中略)そして歪んだ現実感(Distorted sense of reality)だね」

「(ん…?歪んだ現実感ってなんだ?)ちょっと説明してくれる?」

「歪んだ現実感って言うのは、君が世界は必要以上に危険な場所だと信じていたり、とにかく誰も信用すべきではないと信じているところ

………………。。。。。

以下はその時の私の反応です。

えっ、これは私が歪んでいるんじゃないのでは…?この世界では今日も虐殺が起きているし、毎日133人以上の女性が家族によって殺されていて、その半数がパートナーか元パートナーによる殺人だよ??この世界で平和だな〜って生きていける方が論理的でないしおかしいよね???

これは私がおかしいのではないのでは…?とモヤモヤとしていたのですが、数日後に私はああ、これ、違うわそういうことじゃないんだ…と気がつきました。

きっかけは、この本を読んでいた時のこと。

意訳するとこんな感じに。

『なぜ同じような環境で育った人でも複雑性PTSDを発症する人としない人がいるのか。それは、複雑性PTSDは一人でも話を聞いてくれる人がいたら回避できたものだからだ。』

初めてここを読んだ時、あまりの衝撃に少し時が止まりましたね。

私の周りにはあれだけ大人がいたのに。
(そして良い先生もいてくれたのを覚えています)

私には一人も話ができる相手がいなかったんだ、という衝撃。

そしてそんなわけがない…と思おうとしても、私が今複雑性PTSDを持ってしまっていることが、その証明になってしまっている。

数日間どうプロセスしていいのかわからなかったのですが、ある日突然この歪んだ現実感の意味がわかった。

私の認識が間違っているわけじゃない。どちらの認識が正しいということではなく、人間というのは元々、一人でも話を聞いてくれる人がいれば自分は一人じゃない、この世は捨てたもんじゃないと考えられるように、安心してリラックスできるように作られているんだ…ということだったのだと。

そして私が『この世で本当に信頼できる人など一人もいない』と考えているのは、私の認知が歪んでいるのではなく、それが私にとっての現実だったから

子供の頃の私には、本当に頼れる人が一人もいなかったからこそ、今私の『現実』は『複雑性PTSD』と呼ばれている

この時はただショックを受けたのですが、その後色々考えて思いました。

歪んだ現実感って言うな。

誰にも頼れなかったゆえに複雑性PTSDを持つことになった人間たちからすると、誰も助けてくれなかった状態で育ったのに「誰かが助けてくれる」と信じることこそクレイジーですよね…。最も論理的で冷静で的確な判断が『他人は当てにならない、信じられるのは自分だけ』だったわけですよ…その環境に正常に対応した結果が複雑性PTSDだったわけですよ。

だから私たちの現実感は別に歪んでいるわけではない。いや、大人になって、もう安全な場所にいるのに危険を感じてしまう、と言うことを歪んだ現実感って言っているのはわかるけども、言い方ってものが…。

心理学の本を読んでいると、結構こういうことあります。ちょっと似てるのが認知行動療法。ネガティブな自動思考を正そう!あなたの認知は歪んでいるので!みたいなアプローチは、実際に危険と隣り合わせの生活をしていた人間からすると、そんなこと言われても実際に攻撃されたこと何度もあるんですけど…となってしまうし、頭で考えて無理をしても体は危険を覚えているからリラックスできずに疲れ切ってしまう

最近は認知行動療法もトラウマへの認知が進んでいるようですが、まだまだ複雑性PTSDの人が読むと『自分がおかしいんだ…』となってしまう表現に溢れているよな…と度々思います。

そういう時に、内的家族システム療法やソマティックエクスペリエンシング療法などのトラウマ治療は体に安全を教えることができます。結局は、体が『今は安全なんだ』と学べない限り、防衛反応は私たちを守ろうとし続ける。

ついでに言いますと、トラウマ持ちの人はトラウマから回復しない限りトラウマの再演をし続けてしまい、大人になってからもブラック企業やDVパートナーの側で危険を感じて生きている人が多いので、そんな状態だとリラックスしようとしてもできるわけありませんよね…。なので最初の一歩は、私たちはもう生き延びたのだ、と気づくことだと思います。


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