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薬局のよもやま話~薄利多売な薬売り~

こんにちは。はなたあさかです。
noteでは、主に「勉強・教育」×「薬・健康」×「仕事・生活」をテーマにお話しをしています。

最近は薬の話から少し離れていましたが、私、はなたは本業は薬局の薬剤師。薬や薬局のことも話していきたいと思っています。

一般の方からするとはた目には変わりませんが、実はこの4月から薬局業界では大きな変化がありました。

そんなわけで今日は、改めて薬局業界の裏話をしていきたいと思います。

患者たちにとっての”薬”の値段

薬局で薬剤師をやっていると、ごく稀に値段に不満を持つ方がいらっしゃいます。

ご存知でしょうか。毎月継続的に受診されている方は、おくすり手帳を持ってくるかどうかで値段が変わります。※持ってくると安くなる。

きっちり家計管理をされているのでしょうね。お薬手帳をお忘れになった際に普段より増額していて質問を受けるケースは、たまにあります。

中には、「え、値段上がってない(数十円)⁉…はぁ⁉意味わからん!!」と、増額の理由に納得できず憤慨して出ていった方もいらっしゃいました。

おくすり手帳を忘れたのは自分じゃん、と正直思わないでもないですが、何より、ものの数十円のためにカッとなってしまうその大人げなさには驚きを隠せませんでした。

また、ご存知でしょうか。医療費は、皆さんが払った健康保険で大部分を賄っています。保険の給付額は年齢などで変わっていて、患者が支払う金額の7~9割が保険で賄われています。

こういうお店だと昔はオマケしてくれたもんだけどね、と減額交渉(数十~数百円)をされたこともあります。

国のルールで定められている金額なので無理なんですよ~とかわしつつ、すでに9割分オマケしてもらってるくせによく言うぜ、と心の中で毒づいたのは秘密の話。

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薬の値段は国のルールで決まっています。
質問を受ければ、勿論ご説明を致しますが、
法律と一緒で知らないで損しても基本的に自己責任です。

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自身の健康のために飲んでいるはずの薬。それなのに、たった数十円も無視できないほどお金を支払うのが嫌なのはなぜなんでしょうね。

薬を売って大儲け?(笑)

薬剤師です~というと、何故かお金持ちだと思われることがあります。

薬局にもたまに、資産運用にご興味はありませんか??不動産投資が~??
などと営業電話が来ることがあります。

世間のイメージなんでしょうか??薬局は別に儲かりませんよ(笑)
特に一般の雇われ薬剤師の給料は、会社員とさして変わりません。

そもそも薬局は、お商売として見れば、商品が”薬”なだけの、ただの小売店です。その他のモノと同じように、生産者(製薬会社)がいて、卸売業者がいて、その下流にいる存在です。


他と違うのは、”売値”を自分たちでつけることができないこと。


卸売業者から規定の値段で購入し、国から定められた額(これを薬価という)で販売するのです。

卸売業者と交渉をしてディスカウントをかけてもらうことは勿論ありますが、少なくとも業界内で薬の売値は一律なんです。

そして薬価は2年に1回、見直しが行われます。薬価が上がることは基本的にはなく、現状維持か減額傾向。段々、売値は下がっていくということです。

保険料は年々厳しくなってきており、国は少しでも医療費を引き下げたい。というのがその理由です。

しかも薬は開封販売が前提です。

卸売業者から納入される薬は錠剤であれば100錠ないし140錠で1箱というものが多いです。一方、一人の患者には例えば、1日1錠30日分の処方なら30錠だけお渡しすることになります。

そこで、箱を開封して30錠分をお渡しするのです。

患者さんの体調により薬の量や種類が増減すれば、デッドストック(不良在庫)も出ます。使用頻度の高くない薬であればなおのこと。

大儲けできる、というような業界ではないということですね。

さらに圧をかけるお国

先述の通り薬価の改定は2年に1度行われますが、今年はその薬価改定に当たる年です。この4月から実際に薬価が変わりました。

患者さんからすれば安くなってくれた方がそりゃ嬉しいですよね。

でも、販売する側からすると困る事情もありました。

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実は一昨年の冬頃、とあるジェネリック(GE)医薬品メーカーの不祥事がありました。製造過程での異物の混入です。

これを発端に、業界最大手の一角を含む複数メーカーが、国に届け出ていた製造工程と異なる対応を行っていたなどとして業務停止となりました。

さらには東北地方では震度5強の地震が発生。東北に置かれた工場が機能停止し、供給量が激減した企業も現れました。

残るGEメーカーと先発品メーカーが、欠けた分のシェアの補填に回りましたが、ドミノ倒し的に薬の供給が止まったので、その影響は今もなお継続しています。

薬の製造ラインはかなり大がかりですし、ラインごとの製造量は一定のはず。おいそれと製造する薬の種類や量を増やすことはできないというのは想像に難くありません。(3年先を目安に製造計画を立てるという話もきいたことがあります)

ましてGEがシェアを満たしている医薬品を、先発メーカーがいつまでも多量に生産しているはずもない。

そんな状況の中でも、患者さんの使う薬を途切れさせるわけにはいきません。メーカーにこだわらず、納入できる薬をなんとか提供していくことで、どこの薬局も凌いできたものと思います。なのに。

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薬価改定の話に戻りますが、先述の通り、GEが供給不足で、仕方なく先発品に切り替えた品目もあります。

これらの価格が軒並み引き下げられることになりました。20~30%超の引き下げも少なくありませんでした。

いいですか。引き下げ率20%と言えば、これまでの5箱に1箱は無料でお渡しするのと変わりません。差額分を薬局が負担するとなればかなり厳しい措置です。

国としては、売れるなら値段を下げても問題ないよね、という判断かもしれません。

ですが、GEが入らないために普段より多めに在庫した薬が売値だけ下げられたのでは、薬局側はたまったものではありません。

なんでお金の話をするのか

医療従事者は往々にして金勘定に疎いところがあります。

医は算術などとでも言おうものなら、顰蹙ひんしゅくを買うのは必至。

本人になんの落ち度も無くても、誰でも病気には罹る。だからこそ、高度な知識と博愛の精神を以て、人々に還元する。医は仁術なのだ、と。

そんなことは分かっています。医療は本来、営利を目的とするものではありません。

それに、健康保険という名の公的資金を投入しているのですから、医療は立場としては公共事業にも近しいのかもしれません。

…だけど薬局は主に”株式会社”が運営主体です。

モノ(サービスやプロダクト)を販売して得たお金で成長し、世間に貢献するのが企業です。株主からお金を預かって営業し、利益を出して配当を行うのが株式会社。

要するに薬局は、医療機関であると同時に営利団体です。
その認識を忘れてはいけないと思っています。


では薬局が販売するモノとは何なのか。


そこが重要だったりするのですが、それについては別の記事でお話することにします。本日はありがとうございました。


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