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[秋の夜長]

星空の近さはきっと
秋の風がなだめすかした
天球の泣き跡

いちばん綺麗な思い出も
葉っぱを剥がしてしまうから
天球に映して
そのまま消してしまうほどに
満天の夏を 琥珀こはくに染めたら
秋風に流して

二人寝の近さをずっと
秋の夜長 絡めてほら
天蓋てんがいに隠して
他の誰にも見えないように
夏雲みたいに過ぎないように

季節はいつも
後ろ姿を追ってしまう
それすらも肥沃ひよく
星空の魔力だ

いだかれていても
気づけなかった夏の色
移り果てて行けど
風吹けば確かなことは
甘美な琥珀色

人知れず遠ざかる音
秋の風がくゆらした
木枯らしの真似っ子

どうか憶えていて
満点の夏が琥珀に染まれど
シナリオの終わり糸

二人寝の寂しさ もっと
秋雲にじむ夜空のように
溶かしてしまいたい
一つになってしまうほどに
願いは切なく 風に流れて
届かぬ永遠の夢

星空の近さはきっと
秋の風が宥めすかした
天球の泣き跡
流星の去り際
天球の泣き跡

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