見出し画像

[格子を飛び越えて]

例えば 色褪せた口癖を
耳にする喧噪に何故か
足がすくんでしまうほど
魔法は 甘美で壮大だ
例えば 色づいた桜木を
今年も 目を逸らしやり過ごす
ただ御伽おとぎのような記憶は
人をこんなにも苦しめる

思い出すのを拒むように
アルバムごと棄てればいいと
誓った離別に背を向けても
想いの火はくすぶったままで
触れさせて…

時の格子に縛られて
人は交わり別れてゆくよ
向こう岸 ともに飛び越えられると
たかぶるだけの若気の至り
破れた青春を抱きしめて
いつかまた二人 出逢えた時は
継ぎはぎの翼を広げ 遠くまで
そう言い聞かせて 今は一人眠るだけ

回り出す絡繰りのように
恋や慈しみが見えたなら
二度と戻れないあの二人
少し癒せたのだろうか
歴史を描きかえたいほどに
やるせ無さ こもる六畳で
うずくまりながら探してる
生きてく歓びをひとえ

愛し愛される脈動の音に
押し込めてしまうことの罪
幼さを手放せたらそこに
平穏 それとも諦めか

時の格子に縛られた
ちびなあなたと別れたあの日
僕に全てを背負う強さがあればと
叶わぬ絵空事をただ呟いた
どれほどの雨風にさらされて
いつかまた二人 出逢える場所へ
死してなおたぎるほどの情熱を
手放さず たどり着けと願った

立ち込めるような摩天楼を越え
つかみ取った真珠もヒビ割れた
いつしか二人 ただ黙り込んでいた

ほだし絆されてしまえば
間違いを繰り返すからと
傷ついた内壁 塗りつぶしてくれるような
原色で満たされた 確かな正解をくれよ

時の格子に縛られて
人は交わり別れてゆくよ
向こう岸 飛び越えられる頃 ああ
出逢うのが あなただったなら
破れた青春を抱きしめて
いつか誰かに出逢えた時は
継ぎはぎの翼を広げ 遠くまで
そう思えるまで もう一度だけ

果てしなく 視界を覆うほど
咲き乱れる 野原の先に
ひたすら二人 駆け抜けた道を振り向く


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?