見出し画像

[里を知る]

ワンルームにて 極寒の地
夜更けの雪は降らずとも
やかんの湯気は冬の色
邦を忘れた逸れ者

すまなかったと独り言ち
寂し寝 夜伽の宿をこしらえる
詰められた毛布 心遣いは
記憶に揺らめく日々の忘れ物

何故 故郷を発ち
世を嘆くのだ 時知らず
今年も里帰りは
茶色の小箱

便りの印 明かりを見て
あなたのフォルムに緩む頬
揃いのコート 指輪一つ
邦の予報と比べつつ

瞬時に透き通る東西の街
されども霞むは奥羽越の道
北前の船の出し湊を
北摂の丘から静かに望む

風が運んでくる
シベリアの荒地の音
凍てつく香りは
善知鳥の里にも似て
いつか嫌った手癖 "里に踏みを見よ
異郷に志を果たしてこそ"と

ワンルームにて 寝床を分かち
持ち寄る思い出と身勝手な夢
生まれて一番 愛しき街に
連れてゆきます 見知らぬ正夢

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?