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栄養士はバカばっかり…と言われているけど何か?

食や栄養、健康にまつわる情報が蔓延する中、これらの情報を発信している人の中には、栄養士の資格の未取得者も数多くいます。

食や栄養に関する民間資格も数が多く、その民間資格を活かしてのことでしょう。

しかも、実際に栄養士よりも栄養士資格未取得者の方が、食や栄養について詳しく、栄養士なんて言われた通りカロリー計算だけやっているだの言われる程、栄養士や管理栄養士はかなり蔑まれた存在です。

とても残念なことですが、現実と言えば現実。

中には、栄養士は能力がないだの🐎🦌だの平気で言う人もいます。


栄養士を育成する環境は劣悪

新卒の栄養士、管理栄養士の求人先の多くは給食委託会社であり、この業界は所謂ブラック企業と言われています。

当然給食委託会社で働きたい子はいないに等しいのですが、就職先がなくしぶしぶ…という感じで就職になります。

…というのが今では当たり前になっています。

私等のようなアラフィフ世代は、新卒だった当時、管理栄養士未取得でも、辛うじて直属のスタッフとして雇えてもらえた事業所もありました。

とは言っても、昔の栄養士や管理栄養士の業務は給食管理が中心で、献立作成や厨房業務がメインでしたけどね。

ただ、委託だろうと直営だろうと、厨房業務は激務であり、早番遅番のシフト制で、重労働なうえに重い荷物を運ばされるし、給料が安いというのは変わりありません。

人間関係も事業所によってまちまちですが、かつての厨房はスタッフの大半が主婦で構成されていたので、女の職場独特の陰湿さが強く表れているところもあります。

違うところと言えば…

直営だと給料は安くても、ボーナスはしっかり貰えていた…というものがあるのですが、栄養士で新卒の場合は先輩や上司の指導を受けながら業務に臨むメリットがあるのです。とは言っても、その先輩や上司が優しい人とは限らないですけどね。。。

但し、管理栄養士の場合は、いきなり責任者をやらされるケースがあります。

直営で働く場合、スタッフが移動によって入れ替わることがない為、勤続年数の長い人は、当該事業所の患者の食事内容や細かいコメントを把握しています。それなので、もし新人が詳細を知らずに仕事を誤ったとしても、先輩スタッフのフォローでインシデントに繋がらなくて済むようになります。

シフトについては給食委託会社と同様に、早番や遅番が入ります。調理員と同様に調理業務を行う他に、献立作成や発注業務が入ります。直営である程度規模が大きい病院だと、栄養士を複数配置しているので、交代で献立作成や発注業務を行うので、すべて一人の栄養士が事務作業をやらなければならないわけでもありません。新人で仕事に慣れないのであれば、初めは厨房スタッフとして働き、慣れてきたら給食管理業務に着手することも選択出来る場合もあります。

厨房現場では、メイン料理を先輩スタッフが調理し、比較的後から入職したスタッフが小鉢を担当するような流れで入っています。

普通だったら…栄養士であっても、新人にいきなりメイン料理を作らせないのですが。。。これは事業所によってまちまちですが、先輩スタッフに指導を受けながら厨房業務を行うって感じで仕事が進みます。

委託会社に比べると、直営で厨房業務を行う方が、時間をかけて仕事を覚えていけるメリットがあります。

これに対して委託会社では、栄養士が1人しか配置されないように契約されていることが多く、事務作業に関しては1人の栄養士が全て担うことになります。

福祉施設であれば調理師がチーフになる場合がありますが、病院だと治療食の勉強をしている栄養士がチーフになるケースが多いのです。

栄養士が事務作業の多くを抱えている他、調理員と同じようにシフトを組んで、厨房に入らなければならない状況が多々あります。これは直営も委託も同じで、厨房業務と併行して献立作成や発注業務を行わなければなりません。

ただ、調理員が不足するとピンチヒッターとしてやらされるのは、直営も委託も同じです。

しかも、委託会社の栄養士の場合、先輩スタッフが配置されていなく、一人栄養士となるので、厨病業務をしっかり覚えてから給食管理業務を覚えるなんて悠長なことを言ってられないのです。

特に今の厨房の体制では、調理業務ですらも、栄養士は教育される機会を与えられていません。


でも、栄養士が育たないのはこればかりが原因ではないんです。

10年以上前に管理栄養士養成施設のカリキュラムが変わり、臨床栄養に力を入れた内容となったので、管理栄養士もチーム医療の一員として位置付けられてきています。かと言って、栄養士が臨床栄養について全く学ばないわけではありません。

折角学校で臨床栄養を学んでいても、仕事現場ではその知識を活かせないことが多々あります。

それでは、仕事が終わってから自己学習すれば?って思いますよね?

これは言い訳って思うかもしれませんが、厨房業務はかなり肉体的にきつい仕事です。(だからブラックだと言われるんですけどね)

シフト制勤務というだけでも身体がかなり疲れますが、この仕事はとにかくスピード勝負なんです。限られた人数で限られた時間までに配膳出来るように段取りを取らなければならないんですよ。

これはまさに、FFシリーズによくある時制イベント状態です。

ああ、毎日が時制イベントか。。。

鍋や釜等の重いものを持ち上げなければならないのもあるのですが、とにかく身体を早く動かさないと、仕事が間に合わなくなります。それなので、この仕事をやっていると自然に包丁さばきが早くなるし、家事のスピードもアップします。(笑)

続けてくるうちに慣れてくることですが、これが当たり前になると、無意識に体力を消耗することになります。おまけに朝も早いので、疲労感半端なし!

朝が早い分帰りも早いんだから、勉強時間あるんじゃね?と思いますが、家に帰るとバタンキューなんですよ。

私が厨房業務をやっていた20代の頃は、直営で厨房業務を行っていましたが、それだって仕事が終わった後はかなり疲れました。

しかも、発注業務というものが精神衛生上良くない仕事であり、昔は栄養計算ソフトが入っていない事業所がまだまだ残っていました。栄養計算ソフトがあれば発注漏れのリスクがかなり低減されるのですが、手書きといったアナログ方法でやると、うっかり注文し忘れがあります。おまけに手計算でやるものだから、発注量を間違って出してしまうこともあります。

発注ミスをしたらどうしよう…

そんな後ろ髪を引かれる思いで、職場を去る(家に帰る)のですが、これが精神的負担になります。

それに若い時と言えば、友達と遊んだり、彼氏とデートってこともあるから、そんなこんなで疲れを増してしまい、家に帰っては安心してバタンキュー…ということで、教科書開いて勉強してられる余裕なんかあっか!!という状態です。


手書きの帳票作成ほど時間の無駄はない

今はPCで処理することが当たり前になっていますが、昔は、献立表や発注書、その他食料構成表、栄養出納といった帳票類も手計算でやっていました。

簡略化を図ってはいたのですが、これをまともにやっていたら、夜が明けてしまうくらい大変です。

献立表1日分、治療食の展開したものを手書きで書くだけでも10分20分では済まされません。発注書も同様です。しかも、発注業務は在庫状況を確認しながら作成します。

この在庫状況を調べるだけでも相当な品目があり、複雑になります。

倉庫にある食品は調味料だけではありませんですからね。

調味料だって、砂糖、塩、しょうゆ、みりん、酢、酒、みそだけでなく、ドレッシング(ボトル、分包タイプ)やタレもあるし、マヨネーズ、ケチャップ、こしょう、辛子、わさび、おろしにんにく、おろし生姜…このほかにも…

乾物、ジャム類、つくだ煮類、漬物、缶詰、冷凍の野菜や肉や魚及ぶ冷凍加工食品、おやつやデザート、小麦粉、パン粉、サラダ油等

これらの在庫状況を調べるだけでもコピー用紙4枚分あるのです。

これを一つ一つ手計算していくのです。

1日あたりの食材の使用品目数は少なくとも述べ50個ほど。全体の使用量を計算したら、発注単位で割って発注量を決めて発注書に記入といった作業を繰り返すのです。

間違えれば厨房から大目玉喰らうし…

今は栄養計算ソフトを使うことが主流になっていますが、今のように献立さえ入力してあれば殆どの帳票が出来上がる状態とは訳が違います。

これは、栄養出納や食料構成においても同様であり、一つ一つの計算作業があって出来上がるものです。

献立作成は栄養士としての力を身に着けることに繋がりますが、発注業務は時間ばかりかかる上に、現場を通して臨床栄養や生理学、食品学といった知識に結び付けられないのです。

給食委託会社となれば、献立表は出来上がっている状態にて給食管理業務を行うので、栄養士はただの発注マシーンとなってしまうだけ。治療食の展開をしていくことで知識も身に付くのですが、献立作成の経験をさせてもらえないことからも、成長の機会を失ってしまいます。


新卒で病院直属の管理栄養士として就くことが出来たけど…

一見聞こえは良いですが、中小病院の専属の管理栄養士として、新卒者が従事すれば、これはこれでトラブルが発生します。

中小病院では一人管理栄養士ですからね。指導してくれる先輩はいません。

給食委託会社で働いていても結局調理のスキルを身に着けるまで至らなかった場合もありますが、こちらのケースは、給食管理の基本のキも分からないまま、栄養管理業務を行うことになります。

これが直属の管理栄養士が献立作成を担うとなると、厨房のオペレーションを考えずに作成することも少なくありません。

これが仇となって調理師が激怒します。

挙句の果てに「栄養士(管理栄養士)は料理が出来ない」と。

いくら管理栄養士が大学で臨床栄養学を学んだとはいえ、食品があっての栄養療法なので、いきなりエスカレートは芳しくないんですよ。

最初は厨房、厨房に慣れてきたら給食管理、これらの業務が一人前になってから栄養管理と段階を踏めば、基本がしっかりした栄養士(管理栄養士)が出来上がるし、調理師との信頼関係を構築しやすいと思うんですけどね。

(調理師と管理栄養士がお互いに主張しても上手くやっていけないもの)


食の安全

現在、食のネタとして浮上しているのが食の安全の問題。

食品添加物や残留農薬といったことが騒がれています。

いくら医療や福祉の現場で栄養学が見直されていると言っても、臨床現場で用いる栄養学は栄養素に着目したもの。

実際、栄養補助食品に人工甘味料が使われている商品は少なくありません。

食品衛生管理者という資格があるが、これを取得する資格が栄養士や管理栄養士にはなく、薬剤師にはあります。

おかしいと思いませんか??って私は思いますが。

食の安全を確保しつつ、適切な栄養を補給することして、健康な身体づくりに繋がるんじゃないですかあ?

ある保健所主催の講習会に参加した時、そのテーマの中には食の安全に関する項目がありました。

実際に聞いたものはと言うと…

最近ネット等で食品添加物の危険性について情報が拡散されているけど、食品添加物は基準値内で使用されているのだから、食品添加物を使われることによる害を心配する必要はないとのこと。

いや…だから、食の安全こそ、栄養士や管理栄養士が向き合う問題でしょ?

でも、この講習で言われたことを鵜呑みにしている人もいるわけだから…

これだから…栄養士や管理栄養士が🐎🦌と言われるんじゃ…



価値観は様々

栄養士が持っている栄養学の知識は古典栄養学に基づいたものと言われればそれに過ぎませんが、これには個人差があります。

栄養士の中には向上心のない人もいますし、新しい知識を取り入れたくない人もいます。

行政が提示したものが正しいと思い込んでいる人もいます。

でも、これが全ての栄養士の姿ではありません。

中には真実に目を向ける人だっていますし、医療に携わりながら医療の在り方に疑念を持つ人もいます。

また、今持っている知識だけでは物足りないと思い、新たにスキルを身に着ける人もいます。

まあ、栄養士の資格は取得したけど、学校で学んだ時点で栄養士として働きたくなくなり、全く知識を活かしていない人もいますけどね。


医療の世界となると、利権が絡んでいる部分もあり、栄養士や管理栄養士が知識が豊富になって栄養療法で病気を治療してしまうと、製薬会社が儲からなくなるという恐れもあるのでしょう。

栄養士(管理栄養士)の資格を廃止する…なんて話もチラホラありますし、栄養療法は力にならなく栄養学は必要ないというものの見方が改善されてきたかと思いきや、医師や看護師や薬剤師が栄養学を学んできているから、栄養士(管理栄養士)は不要だという説もないわけではありません。

栄養の知識は、他のスキルや知識に展開できるものです。

給食委託会社で働いて、調理や発注業務に慣れて、上司に可愛がられて満悦しているようでは、何年経っても進歩はないですよ!


#私の仕事

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