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たべぷろメンバー紹介!#3 ピースボート災害支援センター(PBV)上島安裕さん

多職種多組織連携プラットフォームである「食べる支援プロジェクト(たべぷろ)」には、栄養学者、防災研究者、専門職団体、災害支援NPO、国連機関、民間企業などが集まり、それぞれの強みを活かした連携で「災害時の食と栄養」にまつわる問題の解決を目指しています。たべぷろの中心的な存在として活動を後押ししているメンバーたちを、定期的に紹介していきます。

人こそが人を支援できる。強い信念を携えて災害現場に立つプロフェッショナル

国内外で災害支援に取り組むピースボート災害支援センター(以下PBV)で、2015年から事務局長を務める上島安裕(うえしま・やすひろ)さん。世話役メンバーのなかでは最年少ながら、災害現場での存在感際立つ推進力にメンバー皆が一目置く存在です。多くの現場に立ってこられた経験則を活かして災害支援に取り組む上島さんは、何を考え、どのような課題解決に挑んできたのでしょうか?貴重な話を伺いました。

災害支援の領域でPBV以外の組織にも携わり、活躍する上島安裕さん

――災害支援の分野に入られた経緯を教えてください。

私は、もともと国際交流の船旅をコーディネートするNGOピースボートという組織にいました。緊急人道支援というより平和や開発支援に近い領域で、国際理解を図り、平和な社会を創ることに取り組んでいました。その一環で、災害が起こった際に緊急物資を運んだり、食事をつくったりする支援を行っていたのですが、2011年の東日本大震災が転機となりました。スポット的な支援ではよい支援にはならないことを認識したのです。中長期的な支援で3.11後の復興を見届けられるよう、法人を別にしました。それが、PBVの始まりですね。
東日本大震災の支援がひと段落したら終わりにする予定でしたが、増え続ける自然災害に対応し続けた結果、国内外の自然災害に対して人道支援をしっかり行う方向性に切り替えたんです。

行政と対等な関係性を築ける組織力の重要性

――全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(以下JVOAD)設立にも関わっていらしたのですよね?

PBVの運営の仕方を模索していく過程で、国内の災害支援に携わる様々なアクターを認識するようになりました。彼らの話を聞けば聞くほど、各団体が支援現場で得たノウハウを蓄積し、共有しながら次につなげていくことが災害対応の業界の課題だと捉えました。支援者間の連携を促進して支援の調整を行う組織の必要性を痛感して、JVOADを創る動きに参加したのです。

東日本大震災での被災者支援で課題だったことのひとつに、行政側にとって民間の窓口がわからなかったことが挙げられます。いろんな団体がバラバラに動き、それぞれに「私たちが民間の窓口ですよ!」と声をあげた結果、混乱がおきてしまいました。
だからこそ、行政とタッグを組めるJVOADのような組織が必要でした。全国域のネットワーク組織が協力し合ってまとまっていくと、国や地域の行政も民間に情報を出しやすくなる。この構想は2015年の常総地域の水害や2016年の熊本地震で実現しています。

――PBVは具体的にどのような支援を行っていますか?

災害時における支援は多岐に渡ります。企業と連携した緊急時の物資支援や炊き出しによる食事支援、家屋保全にも対応しています。もちろん、いざという時に動けるよう平時に協力体制を築いていくことが重要ですね。
国内で大きな災害が起きた際、基本的には私は現地に赴き、地元の人たちからの要望に応える形で事業を考えます。海外で災害が起こった際には、現地のパートナー団体と協力して支援を行うこともあります。

PBVの特徴は、ビジョンに掲げている通り「人こそが人を支援できる」ことにあります。私たちが一方的な支援者になるのではなく、地域の被災者とともに協力し合うことで「支援者」になっていくことが大切だと考えています。築いてきたモノやコトがことごとく崩れてしまう「災害」に向き合うときに大切なのは人の力です。人の力を最大化できるよう、良い方向に動かせるよう、ボランティアの方々にも参加してもらいながら支援活動を重ねています。

――転機となった東日本大震災から10数年が経ちました。課題に感じられていた災害支援の在り方はどのように変化しているのでしょうか?

確実に改善しているといえるでしょう。なによりも支援団体間での情報交換が円滑になっています。
災害時に一番強い対応組織となるのは、予算の面でも法律上でも行政です。一方で民間団体の強みは、被災者の声に基づいたスピード感のある行動と多様なリソースを活かした対応力です。そういったなかで、根拠に基づいて動く行政との連携が必要不可欠なので、民間の支援団体と行政が情報を共有できることが肝心です。現在、災害対策本部会議のような場にNPOが正式な一員として入っていることは、東日本大震災のときには考えられなかったことでした。それは災害支援に関わる皆でJVOADをつくった功績ともいえるのではないでしょうか。

また民間の支援団体があまり増えていないという課題があります。災害時に寄付が集まったとしても、平時に寄付が集まらないことから、ノウハウをもつ人材を雇用し維持担保することが難しいことが要因だと思います。
PBVでは、海外の事業で需要を創出して人の雇用につなげたり、研修プログラムを運営したりすることで平時の事業に予算を確保できるよう努めていますが、すべての団体で同様の動き方ができるわけではありません。

以前から行政だけでは限界があるという指摘があるなかですが、まだまだ、災害対応ができる民間のNPOがあるという認知が拡がってきたという段階でしょうか。国による予算が民間の研修のために出るようになってきましたが、それだけでは災害対応全体の底上げにはなりにくいのが現実です。もっと社会的な認知度を高めていき、社会のニーズに応える仕事にしていかないといけないですね。そうすれば先に挙げた課題の解決にもつながります。

食支援から派生する複合的な支援への期待

――災害時の食支援についてはどのように考えていますか?

起きた災害に対する被災地・被災者支援を多角的に進めていくことは大切ですが、状況や場所により必要な支援の質は異なります。食事の支援は「人が集まる」という利点があります。ご飯を出すと絶対集まるんですよ。 
よりよい支援につなげていくためには、食事だけに留めず、派生しうる複合的な支援の可能性を考えることが大切です。たとえば、炊き出しの場で情報収集する、座って食べられるサロンのような場をつくり、被災者のニーズにあった相談者を呼んで語り合える場につなげていく、といったことです。
PBVは食から派生するプラスアルファの支援の調整が可能です。もちろん支援が足りないときは自ら食事をつくり、お届けしています。

――たべぷろへの想い・期待をぜひ聞かせてください。

たべぷろへの期待はとても高いです。災害時に集まる仲間は多いですが、災害がないとき、つまり平時に意見交換ができるというのは実は稀有なんですよ。しかもたべぷろに参画しているメンバーは、日本の災害対応の仕組みを変えられる人だと思います。食や栄養分野に専門性を持つプロフェッショナルな方々と一緒に活動することで、根拠のある情報に基づく動きができる。自分たちが勝手に言っているわけではないことは、とても強いですね。
一方で災害現場で時に実践者となりながら支援調整を行い、数多く食事支援を行っている私たちからは、現場でのリアルな情報を共有できます。このような連携の意義は大きいのではないでしょうか。
繰り返される災害時の食の問題を解決していくことは、実はそんなに難しくないと考えています。なぜなら、課題がわかっているから。
たべぷろというプラットフォームを活用しながら、提言し続け、変化を起こしていきたいですね。

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