- 運営しているクリエイター
#自由詩
詩:ついによこたわる木
ついに横たわる老木
虚ろな目を開いて
何を見るともなく見る
無気力は墨を染み込ませたように広がって
今に始まったことではないと呟く
冷たい地面に耳をつけていると
なつかしいほど遠くから
あたたかい足音が響いてくる
眠れぬ夜は幾日と続いて
白い花びらがちらちらと
なぐさめのように降りそそいだ
ついに横たわる老木
小鳥はさえずり
太陽がのぼり
雲がながれて
恋人たちにも別
詩:翡翠色の午前二時
真夜中の庭から庭へと
彼岸花を辿る旅
百歳の古井戸の底の水
揺れる植物の一つ一つ
ひかりというひかりが
夜の終わりを見つめているのでした
裸足で家を逃げた子ども
ちいさな公園でひとり
銀色の箱舟が
空に溶けていくのを見るのでした
人のいない街は時間がうつろっても
灰色のままで
道の先で信号が
きいろ、きいろ、きいろ、
と点滅するのでした