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社労士試験とはどんなものなのか(体験談)

今年、社労士試験に合格しました。
そこで試験までのプロセスについて書き残しておこうと思います。
少し長いですがお付き合いください。

なぜ公務員をしていた私が独立・起業し、今年、社労士を目指したのか...については、前回前々回のnoteにまとめています。

ご興味あればぜひ見てみてください。

社労士の歴史をふり返る

試験の話の前に、まず社労士が誕生した歴史についてふり返ろうと思います。

日本の社会保障制度は、健康保険が大正11年、労働基準法が昭和22年と近世以降、段階的に整備されてきました。

では社労士もこの時期から存在したのかというと、答えはNo、みたいです。

そもそも社労士は行政書士の業務に含まれていたようで、戦後、急激に社会保障の改変等が起こったことから、昭和43年(1968年)に行政書士から独立し、専門的な士業となりました。

社労士の歴史は約55年、まだまだ新しい資格といっても良いかもしれません。
※余談ですが、行政書士は明治5年(1872年)に開始されたそうです(名称は行政書士ではなかったみたいです)

試験制度の変更

社労士試験は毎年1回、8月の第4日曜日に実施されます。

社労士の資格が始まった頃の試験内容は、記述式と択一式でしたが、平成12年(2000年)に社会保険労務士試験事務が連合会へ委嘱されたことをきっかけに、現在の選択式と択一式に変更されたそうです。

選択式は穴埋め問題のようなもので、数十個ある答えから適切なものを入れていく問題です。
記述がなくなり、選択式になったのだから簡単になったような気がしますが、実は合格率は記述式の頃の方が高かったようです。

社労士試験の合格率

私は実際に記述式の問題を見たことがないので、安易に現在の選択式と難易度を比べることはできません。
しかしデータを見ると、記述式の頃の合格率は10%前後、年によっては15%前後(宅建士と同じぐらい)の合格率があったことがわかります。
新設したての資格試験ということで、当時は合格者を多く出していたのかもしれませんね。

一方で昨今の合格率は6〜7%台を推移しています。年によっては司法書士試験と同程度(2%代)のときもあり、容易に合格できる資格ではないことは想像できるかと思います。

何が難しい?

選択式と択一式の試験は、全てマークシートです。記述式に比べて対策しやすい試験ではありますが、実は記述式のある行政書士試験より難しいといわれています。

その理由は、次の3つだと思います。

  1. 科目数が多い
    行政書士が5科目であるのに比べ、社労士は10科目あります(いずれも白書、統計等の時事問題も別途出題されます)。

    ちなみに、科目数だけ見れば公務員試験の方が多いです。私は労基署を受験したので、当時30科目ぐらい勉強しました。
    しかし、広く浅く勉強すれば良い公務員試験に比べ、社労士試験では1科目1科目を深く掘り下げて勉強しなければいけません。文言の主語や述語にまで気を配らないとミスしてしまうレベルなので、とても神経を使います。

    途中で勉強を挫折してしまう方は多く、社労士試験が難しいといわれる一因になっていると思われます。(以前の私も挫折したひとりでした)

  2. 苦手科目を作れない
    資格試験は全体の点数が基準点を超えれば合格というものが多いなか、社労士試験は各科目に基準点があります。

    原則、選択式は1科目5点中3点以上、択一式は1科目10点中4点以上です。......基準点、低くない?と言われそうですが、さらに総得点の基準点が設けられています。
    基準点は原則として選択式は40点中28点以上、択一式は70点中49点以上です。

    つまり各科目で基準点を超え、かつ選択式、択一式ともに7割は取らないといけないということです。

    ただこれはあくまでも原則のため、毎年基準点の調整が入ります。昨今の総得点でいうと選択式は25点前後、択一式は45点前後を推移しています。

    また、各科目の基準点の調整もあります。例えば労働基準法の選択式の正答率が悪いため、通常3点以上を2点以上にするというものです。このように基準点調整は年によって変わるため、合格発表までどうなるかは不明です。

    そのため、基準点調整(「救済」という)頼みになる受験生は合格発表まで生きた心地がしないものです。

    なお、令和4年(2022年)は総得点の調整はありましたが、科目の調整はなく、過去3番目に合格率が低い試験となったそうです。

    詳しくは、厚生労働省の考え方をご覧ください。

  3. 運が左右する要素が強い
    年によって基準点調整がどうなるかわからない試験なので、「運」要素が強いといわれています。

    社労士試験には、こんな残酷な一面もあります。例えば選択式を35点、択一式を60点取った受験生がいたとします。総得点だけ見れば余裕で合格できるのですが、選択式35点のうち労働基準法が2点だったらどうでしょうか。どれだけ良い点数をとっても科目ごとの点数をクリアしていないため、救済がない限りこの方は不合格となります。

    さらに、労働一般、社会一般のような一般常識系はかなり運の要素が強い科目といえます。毎年ここで基準点調整の救済がなく、不合格になってしまう方がかなりいるようです。
    1年に1回の試験でこれは辛いですよね。

    実際、10回受けて(つまり10年かけて)合格したという方もいるそうで、そこまで続けられる精神力は賞賛に値すると思います。

最後は気持ちの差なのか?

社労士試験の難しさについて、ご理解いただけたでしょうか。

それでも受験希望者は毎年5万人前後いるため、注目度の高い資格であることは間違いないでしょう。

受験生の中には何度目かの受験という方も、記念受験という方もいろいろな方がいらっしゃると思います。合格には受験対策をどれだけしたかはもちろん大事ですが、実際に受験してみた私としては、最後に合格できるかどうかは気持ちの差が影響するのではないかと思いました。

その話は後々お話しますが、いずれにしてもこれから勉強される方は相当な覚悟を持ってされることを推奨します。

次回は、独学、通学、通信どれを選ぶか。私なりの選択の基準をお伝えします。


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