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連載「差押えコラム。未払金を取り返せ!⑱」 ー 差押えまであと少し! ー

※当記事は連載「差押えコラム」の第18回です。第1回から読む方はこちらです。

こんにちは!筆者の渡邉です。このコラムは、私がある会社から、未払いとなった業務委託料を回収するまでの軌跡を記録したものです。初noteでいきなり生々しい体験談ですが、記憶が新しいうちに共有できたらと思い、筆を取らせていただきました。
私のように「会社から給料が払われない」「クライアントがギャラを振り込まない」といった被害にあわれている方にとって、少しでも問題解決の手助けになればという思いで執筆します。
現在は無事に未払金を回収し、元同僚と新たに「合同会社Mauve(モーヴ)」という会社を立ち上げ、アプリケーションやWEBサイトの受託開発を行っています。
※Mauveでもnoteにてコラムを掲載しておりますので、よろしければご覧ください。
https://note.com/mauve_0210/

登場人物の紹介

私は2020年末から、アプリケーション等の制作会社(以下、A社)で、バックオフィスの仕事を業務委託で請け負っていました。

登場人物2 (1)

2021年7月14日 ― 差押えまであと少し① ―

仮執行宣言申立書を提出した約1週間後、裁判所から仮執行宣言付支払督促がA社社長に到着したことを知らせるハガキが届きました。

以前、支払督促を送ったときには社長の不在が続き苦労させられましたが、今回はたまたま社長がオフィスにいる土曜日(7月10日)に送達されたため、スムーズに受け取ってもらえたようです。もちろん、一緒に手続きを進めている栗田の分も含めてです。

こうなるといよいよ、この話も終盤戦です。

仮執行宣言付支払督促の到着から2週間、相手から異議申し立てがなければ、晴れて強制執行が実現できるのです。

A社の社長は異議申し立てをするのか、それとも今回も前回のようにだんまりするのか。期限まで1週間半、緊張した日々が続きそうだと思いました。

2021年7月16日 ― 差押えまであと少し② ―

この日、以前この件を相談した労働基準監督署の上席の方から一本の電話がありました。

用件はというと、A社の未払い賃金が発生してからそろそろ6ヶ月経過することから、未払賃金立替払制度の件で連絡したとのこと。トラブルが起きた2月から、労基署に行ったり裁判所に行ったり(その間に起業をしたり)色々ありました。

時間の経過は本当に早いと感じるとともに、半年経っても未払金が解決していないこと、相当な労力をこの件に注いでいることをあらためて実感しました。

さて、この労基署からの電話、良い知らせではありませんでした。

なんだったかというと、「今回の件で未払賃金立替払制度は利用できない」という内容だったのです。そのため、「今後は民事(裁判)で争うことを推奨する」とのことでした。

実は6月14日(月)に労基署の担当者がA社の事務所を訪問し、社長本人に会社の状況を確認したのだそうです。

その際に社長は「会社は継続しており、今後も人を雇って事業を継続するつもりである」と言ったらしいのです。

未払賃金立替払制度を利用するためには、会社の倒産が条件です。しかし、社長本人の口から会社は継続していると証言されてしまった以上、この制度は利用できないということでした。

私はこの話を、元同僚である野原と山本にも伝えました。彼らもA社から賃金が支払われないまま退職しており、なんとか取り返す方法を探っていました。

野原たちの未払い金は10万円以下の少額(とはいえ個人にとっては大きな金額です)だったため、未払賃金立替払制度に望みをかけていたはずです。野原は悔しさをにじませながら、しかし「もうこのことはなかったことにし、次に進みます」と、ひとつ区切りをつけたようでした。

この件があり、私はあらためて、絶対にA社の債権を差押えると覚悟を決めました。こんなふうに賃金を未払いにして倒産もせずにいるなんて、あまりにも会社として無責任だし、社長自身、自分が何をしているのか理解できていないと思いました。

社長は「今後も人を雇って」と言ったそうですが、その前に賃金の未払いを解決することが重要じゃないでしょうか?

私も今は、自分たちの立ち上げたMauveという会社の経営の一端を担っています。A社のように無責任な考えで人を雇ったり、ましてや労働の対価である賃金を未払いにすることは到底できません。だからこそ、経営の安定していない現時点では人を雇わず、私と栗田の2名体制で会社運営をしているのです。

日本には数百万単位の会社があります。その中でこんないい加減な会社が一体いくつあるのでしょう。そんな適当な姿勢で、顧客を喜ばせる商品やサービスができるのでしょうか。この日は、経営者として会社について色々と考えさせられた一日でした。

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2021年7月26日 ― 差押えまであと少し③ ―

7月10日(土)にA社に仮執行宣言付支払督促が到着して、営業日でカウントしても本日が2週間のタイムリミットです。裁判所からは異議申し立てがあったという連絡はなく、このまま強制執行に進むのだろうと、なんとなく考えていました。

そんななか、私はT社の進捗が気になり、久しぶりに担当者へ連絡しました。

T社はA社のパートナーだった会社で、業務委託料が未払いのままでした。以前、情報交換をした時には、未払金を取り返すべく差押えを視野に入れて動くという話でした。

※T社の未払い賃金についてはこちら

もしT社の進捗が私達よりも早く、既に差押えの段階まで進んでいるようなら、私たちにとってはこれまでのことが無駄になる可能性があります。つまり、T社が先に差し押さえてしまうと、私たちが差押えできるものがなくなってしまうかもしれないのです。

仮にA社の口座に現在、100万円の残高があったとしましょう。もしT社がこの100万円を既に差押えていたら、いくら私たちが手続きを進めてもその時点でゲームオーバーなのです。

ないものは差し押さえられない、ということです。

T社の担当者から返信があったのは、この2日後のことでした。それによると、T社は弁護士経由でA社に支払催促をしている段階とのことでした。この回答を聞き、私は安堵しました。つまり私達の方が早く手続きが進んでいるということです。

ここまで順調といえば順調なのですが、だからこそ私はA社の動きが気になっていました。

社長が最初に賃金を未払いのまま押し切ったときの勢いはかなりのもので、「絶対に支払ってやるものか」という迫力さえありました。それを知っているからこそ、この段階になっても異議申し立てひとつせず黙っているのは奇妙に感じました。

何か策があるのか、それとも裁判所の通知の意味が分からず放置しているだけなのか......。事件が解決した後になっても、この頃のA社社長が何を考えていたのか全くわかりません。

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