見出し画像

連載「差押えコラム。未払金を取り返せ!⑰」 ー 仮執行宣言と公示送達について ー

※当記事は連載「差押えコラム」の第17回です。第1回から読む方はこちらです。

こんにちは!筆者の渡邉です。このコラムは、私がある会社から、未払いとなった業務委託料を回収するまでの軌跡を記録したものです。初noteでいきなり生々しい体験談ですが、記憶が新しいうちに共有できたらと思い、筆を取らせていただきました。
私のように「会社から給料が払われない」「クライアントがギャラを振り込まない」といった被害にあわれている方にとって、少しでも問題解決の手助けになればという思いで執筆します。
現在は無事に未払金を回収し、元同僚と新たに「合同会社Mauve(モーヴ)」という会社を立ち上げ、アプリケーションやWEBサイトの受託開発を行っています。
※Mauveでもnoteにてコラムを掲載しておりますので、よろしければご覧ください。
https://note.com/mauve_0210/

登場人物の紹介

私は2020年末から、アプリケーション等の制作会社(以下、A社)で、バックオフィスの仕事を業務委託で請け負っていました。

登場人物2

2021年6月11日 ― 支払督促の再送達① ―

前回、休日にA社へ支払督促を再送達することになった私は、さっそくこの日、簡易裁判所へ上申をしました。

再送達で使用する書類などは5月20日のコラムに書きましたので、ここでは割愛します。

ここまで何度も書類の送達、再送達を繰り返してきたので、当然、切手代も馬鹿になりません。送達の度に千円単位の切手代がかかりますから、何回も送達すると債権を回収できた時に元の金額から減ってしまうのではないか、という懸念もあると思います。

でもご安心ください。この切手代は、債務者へ請求ができます。そもそも債務者が未払いを起こしていることが原因であり、もし反論があれば受け取り後に異議申し立てをすれば良いだけの話です。

今回のA社社長のように不誠実な行為を繰り返していると、最終的に、本来支払わなくて良いお金までチリツモで計上されてしまうのです。

もしあなたが経営者で、従業員や取引先に対して未払いを起こしそうになったら、まずは相手方に相談しましょう。もちろん相手は怒るでしょうし、不信感も持たれるでしょう。
しかし、本当に後々のことを考えると、早い段階で正直に話し合うことが一番、信頼を失わずにすみますし、コストも最小限にできます。

話を戻すと、今回の再送達でも届かない場合、次は居住実態調査に入ります。
このときの私は、到着して欲しいという思いと、届かない場合はどうするか、そのことを考えて過ごしていました。

未払いが起きてからここまで約3ヶ月。いよいよA社が倒産してしまったら、全ては無駄になります。そうならないことを祈って結果を待ちました。

2021年6月24日 ― 支払督促の再送達② ―

裁判所からハガキが届きました。そこには、6月20日(日曜)に支払督促がA社に到着した旨が書かれていました。ついに、相手が受け取ったのです!

画像 A

やはり私の勘があたったようで、休日のオフィスに社長はいました。

受け取り日から2週間、相手が何も言わなければ仮執行宣言、つまり「差押えしますが、良いですか?」という準備に入ります。

私と同じく、未払い金回収の手続きを進めている栗田の支払督促も無事に到着したようで、2人で足並みを揃えて進めるのは心強かったです。

A社社長が異議申し立てをして通常訴訟に移るのか、それともこのまま認めて反論しないのか。この時点で既に木曜のため、残り1週間半、相手の出方を待つ緊張の日々が続きました。

0228アイキャッチ-2

2021年7月6日 ― 公示送達とは何か ―

A社社長に支払督促が届いてから2週間が経過しました。裁判所に状況を確認したところ、社長からはとくに異議申し立てがなかったことがわかりました。

さて、ここで今私達がどのステップにいるのか見てみましょう。

図1

支払督促を経て、その後は強制執行へと進んでいきますが、その前に仮執行宣言(「差押えしますが、良いですか」の最終確認をするもの)が必要です。

これも支払督促同様、裁判所に申立書を提出し、債務者(A社)に郵便で送付します。そして相手が受け取ってから2週間以内に異議申し立てがなければ、債権の差押え「強制執行」ができるというわけです。

支払督促の送達は、相手の不在でかなり苦労させられました。仮執行宣言でもまた同じように、相手が受け取るまで郵送で対応しなければならないとは思いませんでした。

そこで素朴な疑問です。

もし相手が、仮執行宣言以降の郵便を受け取らなかった場合はどうなるのか、ということです。まさか居住実態調査をしなければならないのかと思いましたが、裁判所いわく「すでに支払督促が到着しているため、その場合は公示送達できます」とのこと。

▼公示送達とは
裁判所の書記官の判断により送付できる、送達方法のひとつです。
具体的にどんな方法かというと、裁判所の掲示板に「(送達すべき相手方に)渡す書類があるので取りに来てください」という内容が書かれた紙が貼られるだけです。

よくみなさんが行く役所の正面口にも掲示板があると思います。それをイメージしていただければ、わかりやすいかと思います。

▼公示送達の効果
貼ってあるだけでは意味がないと感じるかもしれませんが、これが公示送達の最大の強みです。
その紙は貼られてから一定期間(仮執行宣言だと2週間)経過と同時に、相手が実際に郵便物を受け取っていなくても送付したこととみなされ、手続きが進んでいきます。

ただ、これは例外的な方法で、1回でも書類を受け取った(相手がその住所にいた)実績がないと使えないのだそうです。

今回の件でいえば、A社社長はすでに支払督促を受け取っていますから、仮執行宣言からは公示送達も使えます。受け取らない、という技は通用しないということです。
どれだけ時間がかかっても、確実にA社へ届くという状況はありがたいなと思いました。

なお、仮執行宣言の申立書は裁判所のサイトに様式があるため、そちらを参考の上、提出するとスムーズです。
仮執行宣言申立書PDFダウンロード(最高裁判所WEBサイト)

この記事が参加している募集

やってみた

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?