台湾と日本の女性:高等教育、M字カーブ、デザイン(ふじみ野×ジェンダー)
1.女性賃金上昇の要因
台湾で1994年から男女賃金格差の縮小が上昇し始めた、と前回の記事で指摘しましたが、その要因は何でしょうか。
第一に、女性の高学歴化が挙げられます。高等教育(大学と専科学校)がありますが、日本に比べて、台湾は専科学校(短期大学)が多いのが特徴です。
上のグラフは、高等教育機関への在学率(同年齢の人口数のうち、在学者の比率)を男女別に示したものです。男女の比率ではもともと差がほとんどなかったことがわかります。
下のグラフですが、作者は、1987年をエリート教育から大衆教育の転換期としています。専科では、女性の対男性比が50%を上回っています。大学でも40%台前半に達しています。
ちなみに女性の対男性大学在学率は、2003年をピークの45%前後に達し、その後、やや下降気味です。一方、専科と修士、博士課程の在学率は上昇し、大学と修士課程の進学率は同程度(44%前後)となっています。
日本ですが、下のグラフが女性の進学率を表しています。1990年代初頭から、大学進学率が上昇し始めます。2018年には50%に達しています。台湾と比べて、短期大学、大学院への進学はそれほど増えていません。
この日本と台湾の相違は、ビジネス社会の状況と関係があると考えられます。台湾の場合、大学院修士は、企業社会で活躍する上で、必須の条件となっています。その要因として、欧米で修士以上の学位を取得した人が多いこと、国際関係を有する企業が多く、相手方の高学歴化に適応したものであること、などが考えられます。もちろん、高度な研究能力を修得した人は、実際のビジネスで、その知見や思考力を発揮しやすいと言えるでしょう。
専科学校が選ばれる理由は、より実務的な能力の修得にあります。近年ではデジタルのほか、デザイン、マーケティングなどが人気のようです。
2.M字カーブの解消
では、労働参加率(就業者と就業中者を合わせた比率)を確認してみましょう。1985年と1995年のグラフを比較すると、20歳代前半から50歳代前半まで、労働参加率が上昇していることがわかります。特に、M字カーブといわれる若い年代での下降率が緩和されており、また、下降の開始の年代も上がっています。このことは、結婚、出産などの年齢が遅くなっており、また、結婚、出産を契機とした離職が少なくなっていることを示しています。このことは、女性のキャリア維持、形成、発展に積極的な効果をもたらしていると言えるでしょう
。
台湾では、民間企業で、結婚や妊娠をすると退職が強制されることが多かったとされますが、1990年代以降はこうしたケースも減少していったとみられます(2001年に法律で、上の理由での退職強制は禁止)。
近年はいかがでしょうか。86年とは1997年、96年は2007年、106年は2017年を指します。
3.就業形態、大学で学んでいるもの
続いて、台湾の女性の就業形態をみてみましょう。
下の表は、男性に対する比率ですが、1989年と2004年を比べてみると、雇用主、自営業者は5~6%と確実に増えていますね。公務員は、
11.6%と大きな伸びを示しています。女性の高学歴化は、公務員の増加にも結び付いているようです。
では、女性は学校で何を学んでいるか、という学類をみてみます。2008年と2016年を比較すると、男性ほどではないですが、デザインを学ぶ人が81.3%と大幅に増えています。人数自体は、女性のほうが1.5倍多いですね。デザインは、企業、事業、商品を相手に理解してもらう重要な手段です。女性がビジネスシーンで活躍していることがうかがえます。
台湾のデザイナーについては、昨年、日本でも本が出版されました。
注目されているようですね。
台湾のデザイン政策については、経済産業省の下の文章をご参考にされてください。
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2021FY/000561.pdf