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認知症の人の意思決定①

ビーチャムとチルドレスの倫理原則のうち、自立尊重の原則は、個人の自己決定能力を尊重し、その選択を尊重することを意味します。この原則では、個人が自身の健康に関する意思決定を行うために必要な情報を提供され、その選択が尊重されることが重要とされています。
一方で、認知症と診断されると、自己決定のできない人だとみなして、周囲の人が決めてしまうことがあると思います。

その時、どんな過程を経ているのでしょうか?

認知機能低下の認識

Aさんはとある地域で生活をしている80代の女性です。同居する家族、地域住民、近隣の小売店、取引先、地域包括支援センターなどの人が、最近Aさんに物忘れがあることに気づきました。
周囲の人は、認知機能の低下のあるAさんのできないところを意識していきます。ゴミ出しの日付がずれる、同じものを何度も購入する、コンロの火をつけっぱなしで鍋を焦がしたようだ、車の傷が増えている、などなど。

そんなとき、周囲の人は、Aさんが自分でできなくなっていることをやれていると認識していると感じます。そうすると、周囲の人はAさんには、自己決定を行う能力が十分でないと認識し始めます。

代理意思決定の動機

周囲の人は、Aさんが危険な目に合わないように、周囲の人が迷惑になるような行動を起こさないようにという思いから、Aさんに代わって意思決定を行いことを決定します。これは、Aさんの安全、健康、福祉のためもありますが、周囲の人の安全、健康、福祉のためでもあるという認識のもとされる場合が多いです。

意思決定の実行

周囲の人は、Aさんに代わって具体的な意思決定を行います。これには、居住環境の変更、医療的介入、日常生活のサポートなどが含まれます。一方で、これらの意思決定の判断には、Aさんの意思が入るとは限りません。周囲の人で一番介入を積極的にする人がメリットを得るような決定がなされることもあります。

意思決定の結果とその影響

周囲の人による意思決定は、Aさんの生活に直接的な影響を及ぼし始めます。これには、良い面ばかりではなく、生活パターン変更の強要、行動制限、移住の強制執行なども含まれます。Aさんからの意思決定のはく奪は、本人の生きる意欲の喪失、感情のコントロールの悪化などにもつながる可能性があります。

この意思決定には、成年後見制度などでも問題になります。成年後見人に強い権限があることにより、本人の望みよりも財産の維持が優先されるなどの問題が起こりうるわけです。

認知症の人の自己決定と周囲の人の生活の維持の両立

わが国では、共生社会の実現をするための認知症基本法が制定され、近々発行されます。その目的は認知症の人が尊厳を保ち、希望を持って暮らせるよう認知症施策を推進。 個性と能力を発揮し、相互に人格と個性を尊重しながら支え合い、共生する社会(共生社会)の実現を目指す、とされています。

そのためには、認知症という症候群を、ひとまとまりで考えないことだと思います。認知症の人の症状は、一人ひとり異なることを認識すること。一人ひとりの生活機能障害について、どのような工夫をすれば、生活が可能であるか考える専門家を得ることが重要だと思います。
そのようなときに考えなければならないのが、意思決定支援です。





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