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〈#1〉テレビ局の記者になった日

そもそもテレビ局に記者なんているの?
そう思った人も多いと思う。

事実、高校の同級生に会うたびに新聞記者と勘違いされた。
説明しても結局はうまく伝わらないので、誤解は永遠に解けなかった。

新聞記者は、朝刊や夕刊に掲載される記事を書く。
テレビ局の記者は、ニュースでアナウンサーが読む原稿を書く。
ざっくりこんな感じだ。

また、テレビ記者は自分が出演することがあるので、
アナウンサーと誤解されることもあるが、これはまた別のお話で。
(高校の恩師はアナウンサーと勘違いしていた。)

なぜ記者になったのか

どうしても記者になりたいわけではなかった。
実はテレビで働きたいと思ったこともなかった。

転職した今はテレビすら持っていない。
ジャーナリズムに関心はあるが、人生はかけられないと思った。

就活ではマスコミは地元企業以外は受けなかったし、
どちらかというと東京で就職するつもりだった。
内定をもらっていた都内の企業に行くという選択肢もあった。

ただ、最終的には地元に残ることにした。
振り返れば情けない本音があったと思う。

田舎の就職先は、
「都道府県庁か地方銀行か放送局ならスゴい」みたいなところがある。
そして、縁あってそこに受かってしまった。

東京で働くのが怖かったのだと思う。
地元での知名度に惹かれたのだと思う。

かくして、私は地元のテレビ局への入社を選択した。
(結局、地方公務員をやっているので何とも言えない状況にある。)

入社初日

真新しいスーツと履きなれない革靴。
乗り慣れていない車。

もうあまり覚えていないが、それでも初めての出社は緊張した。
朝の通勤ラッシュが怖いので、9時出社の予定だったが、7時に家を出た。
(田舎は車社会で、8時くらいはめちゃくちゃ混む。)

昔は研修と称して3月は普通に働いていたらしいが、
何かとコンプラが叫ばれる昨今では、それが難しいようだ。
同期と顔をあわせるのもこの日が初めてだった。

今思えば、応接室とか空いている部屋に通せばいいのに
出社時間より1時間早く着いた私は、ロビーで待たされていた。

同期にアナウンサーがいるとは聞いていたので、
「アナウンサーってどんな奴なのかな」などと考えていたら、
「それはいかにも俺です」という雰囲気を漂わせたイケメンがやってきた。しかも、声をかけてみたら地元出身ではないらしい。
(アナウンサーは、地元出身ではないケースも多い)

「なんだか自信たっぷりそうで苦手かもしれん…」
「でも、アナウンサーはこういうものか…」
「同期そんな多くないし、仲良くなれんと困るな…」
思考が頭の中を駆け巡る。どんな話をしようか。

探りさぐり話を投げかけていると、
どうやらアナウンサーではないらしいということが分かった。
(よく通る声の同期アナが、そのすぐ後に来た。)

「じゃあなぜこんな田舎に…?」と思ったが、聞けるような関係ではない。何とも言えない気持ちを抱えながら、入社式の時間を迎えた。

多くのテレビ局も同様だと思うが、
私は総合職として入社したので、配属は初日まで(一応)分からなかった。
入社式で辞令が発令され、正式発表となる。

とはいえ、面接は報道部配属が前提のような感じだったので、
「まあ記者になるんだろうな」くらいの気持ちで考えていた。

案の定、報道部配属の辞令が下りた。
アナウンサー風のイケメンも一緒に。

同期がいる安心感と何とも言えない不安。
(終わってみれば、その同期がいてくれて本当によかったのだが。)
その後、役に立たない5日間の研修を終え、ついに配属の日を迎えた。

配属初日

報道部の雰囲気は会社によって大きく異なる。

(チャンネルが)隣の会社は体育会系気質で、かなり詰められるらしい。
対して、私は所属していた会社はのんびりしていた。
(というか、キャップが優しすぎた。)

配属初日は、正直何をしたか記憶がないが、
報道フロアに通され、部長からあいさつを促されたのは覚えている。
(何を話したかはまったく覚えていない。)

後に先輩から教えてもらったことだが、
このあいさつで「やべえ奴が入ってきた」と認定されたらしい。
(もちろん「やべえ奴」というのは、いい意味ではない。)

「やべえ奴」に認定されたうえ、
同期は苦手かもしれないアナウンサー風のイケメン。
(同期も無事、「やべえ奴」だった。)
幸先はどう考えてもいいものではなかった。

こうして私の記者生活がスタートした。
短いけれど、濃密で、大変で、楽しい日々だったと振り返れば思える。

褒められたことも、失敗したこともあった。
思い出すまま書き記していこうと思う。

<#2>初めて取材をした日 へ続く。






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