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皮と実の間の美味しいところ

虚実皮膜きょじつひまくという言葉。
嘘と本当の微妙な境目に神髄がある、とする芸術論。
演劇も俳句も。私の全ての理想。

夕食後、妻子と運動会の編集動画を視聴。
何度見てもリレーの劇的な引分けに感動する。
――よく最後抜かれなかったよ。

五歳息子はばあばからもらった自分だけのシャインマスカットを頬張りニコニコ。
妻が席を立ち二人きりになった時ぽつり呟いた。
「リョウマ君が同点がいいねって言ったんだよ」
え?
「リレーの入場の時に」
……??
「二人でそう話してたの」

ゾクリとした。
リョウマ君とは息子と共にアンカーを走った親友。
仕組んだ? あの勝負の場で五歳が? いや侮れない。むしろ直線で息子が離されなかった合点がいく。引分けに二人が抱き合って喜んだことも……

やるじゃないか、大人たちを感動させて
……って穿ちすぎか。
追及が一番の野暮。
「ふうん」とだけ返し「一個くれよ」とブドウを指した。

「皮も食べれるよ」と息子はニコリ。


五歳児の虚実皮膜の葡萄食ふ

(ごさいじのきょじつひまくのぶどうくう)

季語(仲秋): 葡萄、デラウエア、マスカット、巨峰、ピオーネ、葡萄園、葡萄狩


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