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のんびりと立春

朝、大きく寝坊した。
前日までの旅疲れだろう。
起きる気になれずしばし布団でもぞもぞしていた。
と、六歳の息子が声を掛けに来る。

「パパ、芽が出たよ」
「ん? 何?」
「チューリップの芽が出た」

背中を押されて庭に出る。
寄せ植えたパンジーの横にひょっこり顔を出していた。
「朝、出たんだよ。昨日の夜、豆まきしたときはなかったもん」

三か月前、一緒に球根を仕込んだ日が蘇る。(※)
春に小学生になる彼の成長を願って植えた。
まもなく開花か。時が経つのは早いな。

「寒くないの?」
洗濯物を干しに来た妻の声に振り返る。
意外な陽射しの暖かさに思い出す。そういえば立春か……。
「洗濯するのあったら出してね。二回まわすから」

部屋に戻って荷解きをする。
お土産の日本酒を神棚に供えた。
普段飲まないが、父の故郷の酒と知って衝動買いした。

手を合わせる。
節目があるっていい。心機一転できる。
ゆっくりだけど自分の一歩をまた踏み出そうと誓った。


神棚へ故郷の酒春来る

(かみだなへふるさとのさけはるきたる)

季語(初春): 立春、春立つ、春来る、春になる、春に入る、春迎ふ



※三か月前の記事はこちら


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