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今月は 622,050円 割引きしてもらう。

街に出た帰り、雨が降り出した。
左手に傘、右手に酸素カートを転がし歩く。
人の流れについていけず、道を外れて小休憩。
そこに懐かしい場所を見つけた。

かつてよく通った喫茶店。
珈琲とともに約一時間、原稿を書く。
乗ったときはお代わりしてもう一時間。
病気を発症する、五年も前の話。

ふと「回数券」がなかったか財布を調べる。
うわ。律義に折りたたんで入っていた。
有効期限はない ――使える?
雨宿りに店へ入った。

¥ 627,050-
先月の医療費に溜息。
これが「指定難病受給者証」の掲示で、月々一万円の自己負担で済む。
さらに「高額かつ長期」なら、五千円――ですよね?
と、役所へ不備修正しに行った今日。
ポンコツなる私の、がめつさよ。
やさしくない国なら生きていけないよアンタ。

窓外を人々が足早に行き交う。
皆さん仕事だろうか。
雨は止まない。
私はゆっくりと無料珈琲の苦さを味わう。


小雪

小雪や財布の底の回数券

(しょうせつやさいふのそこのかいすうけん)

季語(初冬): 小雪(せうせつ)……二十四節気の一つで、十一月二十二日ごろ。



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