見出し画像

トップダウンかボトムアップか

高校の同級生が、東京の高級中華料理店に就職して早8年。最近、私が上京したタイミングで再開する機会があった。
近況を報告し合いながら、話す中で、彼の勤めている職場の経営体制(トップダウン型)が見えてきて、良し悪しだなぁと思った。そしてたまたま、僕が彼と会う前に真逆の経営体制の飲食店(ボトムアップ型)を体感してきたので、その違いを照らし合わせたら、トップダウン型はエントリー時点で0近いところからのスタートしても叩き上げられる気がしたが、ボトムアップ型は、エントリー時から50以上はないと厳しいものがあるなと思った。しかしながら、そこには有機的な温かみがあった気がする。

トップダウン

メリット
・意思決定から実行までが早い
・組織として一貫した動きができる
・大きく舵を切りやすい
デメリット
・下部の社員から反発が生まれやすい
・トップの能力に大きく左右される
・トップの人望がないと機能しない

ボトムアップ

メリット
・現場のリアルな状況が反映されやすい
・現場のメンバーが意見しやすくなる
・下部のメンバーの成長に繋がる
・離職率が低下する
デメリット
・意思決定から実行までのスピードが落ちる
・現場のメンバーの能力に左右される
・大きく舵を切りにくくなってしまう
・自立した思考で自ら動ける従業員がいなければ成り立たない

トップダウンに向いている企業

推進力やカリスマ性のある経営者がリードするフェーズ、またはそれを組織風土とする企業が合っています。つまり、経営陣や経営者が現場についてのことを深く理解していれば、トップダウンでも問題ありません。例えば、ベンチャー企業やスタートアップの段階にある組織は、経営者が現場で培った経験を持っていたり、創業時の状況を知っていたりするため、意思決定に対する信頼が得やすいです。
また、スピード感を持って急成長を目指すフェーズにある企業や、それを組織風土とする企業も適しています。

ボトムアップが向いている企業

様々なアイデアを取り入れたい企業や、ダイバーシティに力を入れる企業がボトムアップに適しています。多様な価値観を活かした事業をおこなう場合、意思決定をする際も多くの意見を取り入れて議論をした方が有効です。新たなアイデアや創造性のあるサービスや製品開発を目指すフェーズや、広い視野で物事を考えたいときにも、ボトムアップが向いているでしょう。

トップダウン、ボトムアップ、なんとなく聞く単語ではある。
意味もなんとなく理解している。が、いざ自分の職場がどういう形態かを分析することは一度もなかった。私は今、高校の同級生に再会した時の話を元にこの文章を書いているが、これはトップダウンで、これがボトムアップだとわかった時にやっと自分の中で会得できた感覚があった。幸運だったのは、トップダウンの経営の話をきく前に、ボトムアップ式の経営をしているお店に行っていたことが思考を巡らせる上では非常に大きい出来事だった。

高級中華料理店に勤める同級生

高校では畜産を専攻し、豚肉のブランディングに携わっていた経験がある彼は、卒業後は東京の某有名高級中華料理店に就職し、同職を転々としながら今のお店に辿り着いた。その店はゴリゴリのトップダウン経営らしく、渦中にいる彼の話を聞くと、
一つのミスを終業後のミーティングで30分以上注意されたり、規定を上回る長時間勤務は当たり前だったりするらしい。
裏を返せば、強制的に長時間仕事、料理について考える時間を長くすることでより早く技術の習得や精神的な強化をすることができる。という理論に理解することもできるが、時代的にはあっていない。

この仕組みは昭和でよく聞くいわゆるスパルタ方式である。
個人の能力はあまり関係なく、レベルアップできる仕組みではあると思う。ただ、この仕組みを理解できないと、というかできてたとしても自然と離職の可能性は高まる。そこを繋ぎ止めるのはお金だったり、トップのカリスマ性にある。
高級中華なので、技術や品質は一筋縄ではいかない。他とはより早く人材を育成するためにとっている手段なのではないかと考える。

彼と会う直前にボトムアップ経営に触れていた偶然

あるパンやワインを扱うお店を友人に教わって一緒に行ってきた。
中に入ると賑やかなコミュニケーション。お客さんではなく、従業員の皆さん。私たちが入店した際は、お客よりも従業員が多い状況だった。仕込みも兼ねてのことだとは思うが、店の大きさの割に大人数だなという印象を受けた。活発なコミュニケーションやひとりひとりが醸し出す雰囲気、人間の魅力的なものが迸っていて、非常に魅力的に見えた。実際にその日初めてのアルバイトの人も入っていて、教育係の方が指導している様子も目の当たりにした。初日アルバイトの方も雰囲気があって私の目には魅力的に映った。もちろん店自体のバイアスもあるかとは思うが、でも個人の力も強いように感じた。
ボトムアップ経営は元々ある個人の能力が前提となるので、その人の能動性が重要となる。
離職率は低いが、ひとりひとりが能動的に動かないと経営としてはうまくいかない。人間の性質を考えた時にそれをやるのはなかなかしんどいものがある気がするが。
実際、その店がどういう経営方針なのかはわからないが、ボトムアップに近い経営なのかなと勝手に予測する。笑
個人事業主に多い雰囲気を感じるというかひとりひとりが自らの世界観を纏っている人に多い感じが店全体にある。多様なおしゃれが混在し、その中で働いている人たち。ひとりひとりの個性があるようでない感じ。
営業中のコミュニケーションの多さに関しては正直驚いたが、これは私が気付かぬうちにトップダウン経営に囚われていたことに原因があるのではないかと考えている。

私にとってのトップダウンとボトムアップ

そもそも学校時代からトップダウンの中で、与えられた課題をきちんとこなし、それがよしとされた。集団の秩序をなるべく乱さぬように生きてきた。正直、大学までこれに準じてきた。これが正しいと思っていた。
確かに社会に出てみると、これに準じておけば楽だし、生活はできる。
しかし、豊かではないし楽しくない。

それは私自身が、農家であり、家族と仕事をしているという環境にも限りなく影響があると思う。現在のうちの経営はトップダウン経営といって間違いないだろう。祖父が中心となっている。しかし、祖父も3月で80になるという年齢を考えるとなかなか持続的ではない状況である。父親も捻くれている人間で、祖父の言うことを聞くところと聞かないところとある、その原因は完全に祖父にあるのだが、トップダウンをするにあたってはやはりその人が尊敬されなければいけない。家族であればなおさらだと思うのだが、そのスタイルの形成に完全に失敗したと思っている。

上司にあたる人間を尊敬できないことも含めて、信用できなくなり、そこに関わることへの嫌悪感や責任感のなさが独立や自らの世界を構築したいという実験欲に駆られてくる。今の私はまさにその状況の中にある。

ボトムアップ経営の中で、働くことを想像するといかに自分の立てた会社ではないがいかに自分の会社という意識を持つかが重要になってくると思っている。何事も自分ごととして捉えられるかどうか。これはもはや何もお金が掛かっているかどうかの話ではなくなってくる。いかに理念に自分を入れ込むことができるか。初めからそれを意識して選択していては何も選択できないことになってしまうので、エントリーはなるべく考えない方がいいんだろうなとも思う。

最後に

とにもかくにも、ボトムアップの企業は側から見ると非常に魅力的だし、惹かれてしまう。しかし、そこへのエントリーは簡単ではないことを自覚するべきだ。高い専門的な知識と、高いコミュニケーションスキルを備えた上でないと太刀打ちできな世界だと思っている。

逆にトップダウン経営へはエントリーは比較的簡単にできるとは思うが、レベルアップまでのプロセスがかなりしんどい。のだと思う。

どれもあくまで憶測の範囲を超えない話でもうしわないのだが、友人との会話を元に考えたことである。
この話で自分がいかにトップダウンの元に晒され、自らの個性を消して生きてきたかを自覚したとともに、可能性の有無も含めてこれからどうしたら自分の世界観を表現できるのかという深い問いに再びぶち当たるのだった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?