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ポップコーンは買わない。vol.107

MINAMATA

経済成長の闇、水俣病

SDGsの重要性が叫ばれており、それは企業から個人レベルにまで認知が広がりつつある。

特に企業に関しては、達成目標のあれこれを目指しています。あるいは、達成していますということを声高々に謳っているところをしばしば見かける。

でも本当にできているのだろうか?意外と簡単な目標ではないことはよく読めば分かるために、何か履き違えてはいないかと思う部分もある。もちろん意識することは大切だし、ビジネスにおけるベンチマークとなっている面でもあるから取り入れたい気持ちは分かる。

美味しいところだけを掲載して、中身は低賃金かつ過酷な労働環境だったりしないだろうか、はたまた環境にはよろしくない物質を排出していたりしないだろうか?

これはSDGsウォッシュという問題に当たるのだがが、ここでは詳しく言及しないので各々で調べてほしい。

日本でもかつて50年代から60年代で高度経済成長という発展の裏で公害が大きな問題となっていた。

その公害に代表されるのが「水俣病」である。

水俣病とはなんなのか引用した文章だが、以下を参考にしていただきたい。

水俣病は化学工場から排出されたメチル水銀 で汚染された海産物を多食することによって発 生した。メチル水銀は容易に脳へ取り込まれ、 成人の水俣病患者は大脳や小脳を中心に特定部 位の神経細胞が傷害を受け、傷害部位に応じた 中枢神経症状を呈した 。

引用: 坂本峰至, 他. メチル水銀の胎児期曝露影響――水俣病から環境保健学研究へ. 日衛誌 72, 140-148, 2017.

私が在住している新潟県でも「新潟水俣病」として大きな問題となり、50年以上経った現在でも患者認定など裁判で争っている状況である。

その当時の日本の主菜は肉ではなく魚。

川に排出されたメチル水銀を川にいる魚が取り込み、濃縮される。それを獲って食べた漁師から症状が出始めたと言われている。

こうした水俣病は大きな問題となり、徐々に世界でも注目されるようになった。

私も小学生の時代に新潟水俣病の資料館を訪れたことがあり、被害者の方だったか、関係者の方だったか記憶が定かではないが、お話を聞いた記憶が残っている。しかしその内容ははぼ記憶にはなく、資料館とその方のお話を聞いたという事実しか私には残っていなかった。

しかし、新潟水俣病も熊本で起こったものとほぼ同様の事例で、工業排水に含まれるメチル水銀を魚が取り込み、人間がそれを食らい、という流れで多くの人に被害がでた。

もう一度そこに訪れて勉強し直したい気持ちが強くなってきた。

ユージン・スミスについて

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この映画が公開されてユージン・スミスを初めて知った人も多いのではないだろうか。

私もその一人である。

色々調べてみると、私生活のだらしなさが目に付く。アルコール依存症であったことは有名みたいで、他にも2〜3日寝ずに仕事をして、そっからしばらく潰れてしまうという計画性のない生活、そこには薬物に関わっていたりとか、生活はぐちゃぐちゃだったらしい。

そんなユージン・スミスは戦争写真家として、第二次対戦時に「LIFE」という雑誌に写真を提供し、名をあげた経験がある。

そんな経緯があったからかというべきか、彼の仕事のポリシーとして現場で起こっている酷い状況の前線を撮影し、全世界に伝えることについて強い意志のある人間であることが、本作をみていても感じられた。

日本の富士フイルムのCM出演に依頼を機会に日本で起こっている水俣病の存在を知ることになる。

そこからすぐに熊本に向かうのだった。

一方で、彼の行動のスイッチがどこにあるかよくわからないのだが、彼自身が戦場での状況を写真に収める仕事に対して、何かしらの成功体験みたいなものがあったのではないかと考える。

時代も相まってのことだろうが、戦争写真はかなり金になったのではないかと考える。そんな成功体験があったからこそ、熊本の水俣病は世界的にもまだみられていないスクープであるから、金銭的な嗅覚が働いたのは大きのではないか。

もちろん、彼の写真が世界に衝撃を与え、水俣病の知名度をあげたことによって裁判での勝利にも繋がっていったと思うので、意義のある仕事であることは間違いないのだが、ユージンの私生活のだらしなさをみると裏の思惑はあったに違いないだろうなという意地悪な見方ができる。笑

でもそのだらしなさはキャラクターしてはとても魅力的である。しかしながら、実際に近くにそんな人がいるのはトラブルが多くて大変そう。。笑

映画「MINAMATA」の目的

あくまで憶測であるが、この映画の目的は一概に興行的な成功ではないと考える。

後世に作品を残し、考えさせることだ。

環境問題が問題視される昨今、かつての日本では原油をガンガンに燃やして、排気ガスもガンガン出して、廃液をドンドンと流して経済成長をしてきて今の日本があるということを忘れてはいけない。

そして現在進行形でも国の成長のために石油を燃やしている現実がある。

そんなことを含めて個人レベルでできることはなんなのか考えるきっかけとなる作品になっている。

また物語の主軸となるユージン・スミスの活動ともオーバーラップするところがある。

彼の仕事は形として残るもの。

その記録は後世に伝わり、彼らの心を揺さぶり、行動へ導くはずだ。

そんな役割がユージンの写真にはあるし、映画「MINAMATA」にもその役割があると考えている。

最後に

MINAMATA上映のこのタイミングで、ユージン・スミスに関する映画がもう一本上映されている。

50年代半ば、ジャズミュージシャンのセッションをユージン・スミスの目線から描き出したとされる本作、MINAMATAとセット観ると、より彼に対する理解が深まるのではないかと考える。

都心のごく一部でしか上映されていないようなので、のちのち新潟にも回ってくるように祈っている。

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