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母子家庭に生まれた私が、お坊さんになった理由

「宗教には関心がない」「お寺にはお墓参りや仏事以外で行ったことがない」という若者が増えているなか、築地本願寺には、全国各地から次世代を支える若手僧侶たちが集まっています。

お寺に生まれて家を継ぐために僧侶になった人もいれば、最初はお寺とはご縁がなかったけれども、親鸞聖人のみ教えに触れたことで僧侶を志した人もいたりと、「お坊さんになった理由」ひとつ取り上げてみても、人によって大きくその内容は違います。

今回の特集では、築地本願寺で働く若手僧侶を取り上げて、彼らがどんな想いで僧侶になったのか、どんな想いで働いているのか。また、実際に築地本願寺ではどのような役割を果たしているのかをご紹介。普段はなかなか表舞台に立つことが少ない「若手僧侶たちの素顔」をお届けしていきます。

その① 一般家庭に生まれるも、父のすすめから伝道の道へ


教化育成部 築地本願寺倶楽部担当  小室 典証(31歳・神奈川県出身)

――小室さんは一般家庭ご出身だそうですが、僧侶を目指したきっかけはなんですか?

小室 父の影響が大きいです。私は母子家庭で育ちました。幼少期はやんちゃな子どもで苦労をかけましたが、次第に「母子家庭だから」という周囲の目に気が付き、10歳前後からは真面目に勉強するようになりました。母が再婚するときにも「幸せになってほしい」という強い想いから、相手がどんな方なのかをとても心配していました。しかし、実際に会うととても温厚な方で、いつしか自然と尊敬するようになりました。

 父と血のつながりはありませんが、何かつながりが欲しくて父の出身校である慶應義塾大学に進学しました。在学中、進路に悩んでいた時に父からすすめられたのが「僧侶」でした。

 実は父は門徒推進員としてお寺の活動支援をするほど熱心な門徒でした。苦しい時にお寺に参拝し、仏さまのお話を聞き、心が救われることも多かったそうです。また、父自身も「僧侶になりたい」との想いがあったとも聞き、尊敬する父の夢を叶えたい気持ちから、僧侶をめざしました。

―‐僧侶になって驚いたことは?

小室 一番驚いたことは、意外と力仕事が多いことです。僧侶というと日々お経を読んで正座をしているような優雅なイメージがあるかもしれませんが、重い仏具を持ったり、長時間に渡って鐘を叩いたりと、力を使うことも多いので、体力づくりが非常に大事だと感じています。


※本記事は『築地本願寺新報』掲載の記事を転載したものです。本誌やバックナンバーをご覧になりたい方はこちらからどうぞ。