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「阿弥陀」の意味、知ってる?【英語で歎異抄】

鎌倉時代の作品ながら、現代にも通じる教えが記された親鸞聖人のお言葉をまとめた『歎異抄』。ただ、その内容はときに難解だと評されることも多いです。本連載では、全十八条の中からその一節を抜粋し、英語と日本語で解説します。英語版『歎異抄』に触れる事で、仏教・浄土真宗をよりさまざまな角度から見ることができ、新たな気づきが見つかるはずです。

『歎異抄』第一条

A Record in Lament of Divergences, 1
 
【英文】
“Saved by the inconceivable working of Amida’s Vow, I shall realize birth in the Pure Land”: the moment you entrust yourself thus to the Vow, so that the mind set upon saying the nembutsu arises within you, you are immediately brought to share in the benefit of being grasped by Amida, never to be abandoned.
(Collected Works of Shinran, p.661)

【日本語訳】
弥陀の誓願不思議にたすけられまゐらせて、往生をばとぐるなりと信じて念仏申さんとおもひたつこころのおこるとき、すなはち摂取不捨の利益にあづけしめたまふなり。(『註釈版聖典』831頁)

【現代語訳】 
阿弥陀仏の誓願の不可思議なはたらきにお救いいただいて、必ず浄土に往生するのであると信じて、念仏を称えようという思いがおこるとき、ただちに阿弥陀仏は、その光明の中に摂め取って決して捨てないという利益をお与えくださるのです。(『現代語版聖典〈歎異抄〉』4頁) 

今回の英単語
inconceivable / working / Amida: 不可思議/はたらき/阿弥陀仏
Vow / the Primal Vow: 誓願/本願(根本の誓願) 
birth in the Pure Land: 浄土に往生する
entrust: 信じまかせる、ゆだねる 
immediately: ただちに
being grasped by: に摂め取られる
never to be abandoned: 決して見捨てられない ※abandon: 捨てる、諦める

【コラム】
私に届く阿弥陀さまの誓願 〜Vow(ヴァウ)とBow(バウ)〜

 『歎異抄』第一条は、浄土真宗の教えがすべて集約されていると言われる大切な一章です。左のご文は、その前半部です。

 浄土真宗のご本尊は阿弥陀さまです。

 私たちは、阿弥陀さまの「すべてのものを見捨てず救いたい」という誓願を聞き、それはつまり私ひとりのための救いであったと聞き仰いでいきます。

「阿弥陀(アミダ)」はインドの古語を音写したもので、英語でもそのままAmida と訳されます。阿弥陀の意味は、「無量寿・無量光」ですので、英語ではimmeasurable life(はかりしれない寿いのち)、immeasurable light(はかりしれない光ひかり)と訳されます。私に届く無限の寿(いのち)と光(ひかり)の仏さまが、阿弥陀さまなのです。

 余談ですが、Vow と似た言葉にBow(バウ)があります。Bowは、「お辞儀、会釈」という意味です。以前、私が阿弥陀さまの誓願のことを「Amida’s Vow」と言いたかったのに、発音が悪かったため「Amida’s Bow」と聞こえてしまい「阿弥陀さまがお辞儀するの?」と言われてしまった恥ずかしい思い出があります。Bow するのは、阿弥陀さまではなく私たちです。私に届く不思議なAmida’s Vow(ヴァウ)を味わい、「なもあみだぶつ」とBow(バウ)させていただくのです。
 

南條 了瑛(なんじょう・りょうえい)
龍谷大学大学院文学研究科博士後期課程修了、博士(文学)。専門は真宗学。現在、東京都中央区 法重寺 住職、武蔵野大学仏教文化研究所客員研究員、築地本願寺 英語法座 運営委員、東京仏教学院講師や複数の大学で非常勤講師をつとめている。本願寺派布教使、本願寺派輔教。

※本記事は『築地本願寺新報』掲載の記事を転載したものです。本誌やバックナンバーをご覧になりたい方はこちらからどうぞ。


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