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僧侶が選ぶ、もう一度行きたいあの場所4選 海外編

雨続きで、なかなかお出かけしづらい梅雨のシーズン。ぜひ、誌面上だけでもおでかけ気分を味わっていただくために、国内外のいろんな土地から、編集委員が選ぶ「もう一度、行きたいあの場所」をご紹介します。そこで、今回は「海外編」をご紹介。「国内編」と共に、ぜひお楽しみください。

 

①お釈迦さまの説法の地 インド・王舎城(おうしゃじょう/ラージギル)

 古代インドのマガダ国の首都であったラージギルはインド北東部に位置し現在のビハール州にあります。マガダ国の国王・ビンバシャラはお釈迦さまに帰依し、お釈迦さまがお弟子達とともに滞在できる地を寄進されました。ここが竹林精舎(ちくりんしょうじゃ/ヴェヌワン)です。現在竹林精舎は公園として整備されています。
 
 また、町を囲む山の一つ霊鷲山(りょうじゅせん/グリットラクータ)は大無量寿経(だいむりょうじゅきょう)や観無量寿経(かんむりょうじゅきょう)などが説かれた地であり、山の頂の一部は煉瓦で覆われ仏像が安置されています。

 この霊鷲山の地は永く不明でしたが、1903(明治36)年に本願寺22代大谷光瑞門主が組織した大谷探検隊によって発見されています。かつて2度、霊鷲山に登っていますが、前回は早朝未明に登り、山頂で日の出を観、同行の方々と読経させていただいたことは感慨深い思い出です。

 王舎城の南東にはビンバシャラ王が王子のアジャセによって幽閉された牢獄の遺跡もあります。この遺跡から東に霊鷲山を望むことができます。ビンバシャラ王の后・イダイケは幽閉された王に食事を運びますが、そのことによりイダイケも幽閉されてしまいます。そのイダイケにお釈迦さまが説かれたのが「観無量寿経」です。(酒井) 


②自然の圧倒的な厳しさ美しさ ワシントン州


 


 テレビドラマ『大草原の小さな家』の原作小説のひとつ『長い冬』では、西部開拓時代のアメリカで、一家がようやく安住の地と居を構えた町で初めて送った冬の、あまりにも長く厳しい様と、その困難を乗り越える様子が描かれています。10月には吹雪に襲われ、来る日も来る日も雪との戦いが7ヵ月続きました。

 私がワシントン州東部のある町で暮らしていたときも、長い冬を送ったことがあります。銀行の前の温度計は華氏マイナス8度を表示。日本でいう摂氏マイナス20度くらいでしょうか。

 それが華氏7度になったときは、ようやく春がくると思いましたが、それでも摂氏マイナス13度程度。外を歩くと口の中が凍り、髪の毛が氷柱状態になるのは日常茶飯事で、車のドアの取っ手に指がくっつく危険もありました。小説のような飢餓の心配はなくとも、ローラたちの長い冬を思い浮かべたものです。

 そして長い冬のあとの春の美しさは最高でしたね。灰色の山は緑に覆われ木々は色とりどりの花で彩られ、そして青々とした牧草地には子羊の群れが! 空も青い! 生命力ってすごい。自然ってすごいと、景色の移り変わりとそこで生きる動物や人の力に圧倒された春でした。ワシントン州、行くなら春から初夏がおすすめです。(枝木)

③願いはかなう?イタリア・ローマのトレビの泉


 10年以上前の話です。新婚旅行でイタリアを巡りました。ローマではトレビの泉でコインを投げてきました。ここでコインを後ろ向きに投げると、再びローマに来ることができると言われています。

 イタリアはローマ帝国時代の遺跡だけでなく、カトリックの教会も多いので、教会に行くことがよくありました。教会に行くと、お寺にいる時に似た雰囲気を感じました。信仰が違っていても、共通するものがあるようです。 

 予定では、ミラノから成田行きの便で帰ることになっていました。ミラノ滞在中、アイスランドで火山が噴火し、周辺の国では飛行機が飛べなくなっていました。「あっちにいる人は大変だな~」とすっかり他人事で帰り支度をしていたら、「飛行機が飛ばなくなりました」。火山灰がイタリアにも飛んできたのです。滞在が突然延びて、ツアーコンダクターさんがかなり頑張ってくださいました。 

 延長4日目に「明日のローマ発の便で帰ります」とのこと。翌日、ミラノからローマの空港まで約600㎞をバスで移動中、トレビの泉にコインを投げたことを思い出しました。「再びローマに来ることができる」とは、このことだったのか……。(多田)


 ④1000年の時を超えて現れた インドネシア・ボロブドゥール 遺跡

  千余年の遺址尚(いしなお)みるべきものあり。その最たるものをボロブドウルという。―大谷光瑞師 

 ボロブドゥール遺跡は、インドネシア・ジャワ島中部に所在する世界最大級の仏教寺院です。1000年もの間火山灰の下に埋もれ、人々からもその存在は忘れ去られていましたが、1814年、密林の中からイギリス人によって発見されました。西暦790年から860年ごろにかけて、仏教を信奉する王朝によって建立されたものとされていますが、定かではなく謎多き遺跡です。

 黒っぽい安山岩で造られた、基部の一辺が120m高さ35mの6層構造のピラミット状の建造物です。実際に訪れ、その壮大かつ独特な姿を目にすると圧倒されます。内部に空間はなく外観だけという極めて独特な建造物で、各層には回廊もあり、頂部まで登ることができます。回廊の壁には、仏陀の生涯やインドの説話が1460面にわたって描かれているのが見どころ。全部で72基の釣鐘状のストゥーパ(仏塔)があり、中には仏像が納められています。 

 建物の頂部から日の出を見るのがおすすめとのことで、遺跡敷地内のホテルに宿泊。翌朝日の出前に登頂。少しモヤのかかった山の向こうから登る朝日は、私たちを幻想の世界に導きました。(宮本)

※本記事は『築地本願寺新報』掲載の記事を転載したものです。本誌やバックナンバーをご覧になりたい方はこちらからどうぞ。

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