見出し画像

愛犬を失って落ち込む父を、元気にしてあげたい【仏教で答える悩み相談6】

人の数だけ、悩みは尽きぬもの。
皆さまから寄せられた悩みに、お坊さんや仏教関係者たちが答えます。


Q 定年退職した父が、長年可愛がっていた犬が亡くなりました。犬の散歩がなくなって外出も減り、犬関係で出会った人々の交流もなくなり、ふさぎこんでいます。年齢的にも新しいペットを飼うのは難しい状態です。どうしたら父の気持ちを前向きにできますか?
(40代・女性)

A1  寄り添うだけで、想いは伝わる


「いのち」あるものが亡くなるということは、人であれ、動物であれ大変悲しいものですね。お父さまの悲しみ、私も同様の経験をしておりますので痛いほどよくわかります。悲しさ、寂しさはいつまでも癒えることはないと思います。

でも、そんな悲しみの中でも、近くに誰かいるだけで少し和らぐこともあるのではないでしょうか。一緒に悲しみを受け止め、寄り添ってくれる方がそばにいるだけで気持ちが和らぐこともあるのではないでしょうか。お父さまとともに近所に散歩に出かけるなど、ふとしたことでも良いと思います。少しの時間でもお父さまとともに過ごしてあげることで、ご自身の思いも伝わるのではないでしょうか。

いつでもお父さんのそばにいるよ、と寄り添ってみてはいかがでしょう。仏さまのように。
(築地本願寺コンタクトセンター担当・戸見嶋淳昭)

A2 まずは共に外に出かける工夫を


愛犬が亡くなり、お父様がふさぎこんでいるとのこと、心配ですね。まして感染症拡大により、不要の外出自粛が求められている中、ますますお家に籠もりがちになることが、人々の健康に影響しているとも報道されています。
地域には、ボランティアや趣味の会など、多様なグループが活動しています。できれば、お父様が興味のある活動に参加できるといいですね。西照寺でも法話会や旅行会なども開催しており、そこに参加されている方々は自然と仲良くなり、自分たちのことを「寺友」と言っています。

とはいえ、今のお父さんの状態で、すぐに一歩を踏み出すことは難しいかもしれません。まずあなたがお父さんを公園や食事に連れだす工夫してみてはいかがでしょうか。
(西照寺住職・酒井淳昭)

A3 向き合う時間が必要でしょうね

そうですか。それだけ大切な存在だったのですね。でも元気のない父親を見るのは辛いですね。

一案ですが、遺骨が近くにあるのなら、自身で選び直した骨壺に移すのはいかがでしょう。エンディングフェア関係者の話ですが、人間用骨壺にこだわる人はまれだけれど、ペット用は10万円を超えるような超高級品にも一定の需要があるそうです。高いから幸せになるなどは一切ありませんが、何かを実感し、それで気持ちを整理していく人もあるといいます。

急に別の気晴らしを用意しても引っかかりを抱えたままでしょう。だから失ったことを受け止めていく段階が必要と思います。新たな骨壺に自分の手で移すのはその手段の一つです。葬儀や法事を勤める意義にも通じます。
(編集委員・藤本真教)

そのほかの悩み相談はこちらから


※本記事は『築地本願寺新報』掲載の記事を転載したものです。本誌やバックナンバーをご覧になりたい方はこちらからどうぞ。