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《詩》夏はじめ
カレンダーを見ると
今日に印がついている
なんのためのものかもよく憶えていない
くずれたまるがきみらしい
パンをやいて珈琲をいれる
朝はながくて
いちにちが永遠みたいなきもちになる
ベランダからみる、いつかあおかったそらに
えがかれるのは飛行機のあとと
春のうしろすがた
電線にちいさな鳥が せわしなく
どこかへいってはもどってくる
明るすぎるひかりのなか
手をあわせて祈るのは
なぜだかいつも夏のはじまり
ここにはもういないきみとの日々にまるをする
もどらなかった鳥の色を思い出せるだろうか
ぼくは憶えているんだ
あの日、きみがどんな表情をしていたかを
言葉を交わし、
笑う声が混ざり合っていた日に
夏はじめに発つ鳥を一緒に見送った日に
こんどはぼくがまるをつける
すこし角ばってしまった慣れない筆跡で
きみの書いた印に重ねるように
きみのいたことをなぞるように
古屋朋