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でっかい妬きそば弁当|毎週ショートショートnote(富樫チャレンジ編)

「焼きそば弁当」と聞いた時、「北海道民は焼きそばをおかずにしてご飯を食べるのか」と、少し驚いた。

だが、違った。

いわゆるカップ焼きそばで、普通は捨てるはずのお湯を別の器に注ぎ、付属している中華スープの素を入れて飲むことができる。
北海道民のソウルフードであり、私もすっかり焼きそば弁当を常備するようになった。

ある日、いつものようにセイコーマートに寄ると、「焼きそば弁当・スーパージェラシーストーム」という新商品が発売されていた。

「スーパージェラシーストームなんて、なんか中二病みたいなネーミングだなぁ」

そう思いながらも、面白そうなので買って帰った。

作り方には、こう書いてある。

1.お湯ではなく、水を入れてください。
2.過去でも現在でも、ありったけのジェラシーの感情を爆発させてください。
3.ジェラシーの感情が大きいほど、美味しくなります。

俺は「焼きそば弁当・スーパージェラシーストーム」に水を入れ、少し考えた。

「ジェラシーねぇ……」

――高校2年の時、好きだった吉村さんは4組の林田君が好きだった。

何も変化が起きない。

――もし、「5分間法律がフリー」になったら真っ先に刺してやろうかと思うほど嫌いな上司には、15歳も年下で超美人の奥さんがいる。

……ダメか。

多分、この程度のジェラシーでは、水がお湯になることはない。
試しに井上陽水の「ジェラシー」を歌ってみたが、やっぱり何も起きない。

――ジェラシーって意外と難しいぞ!!

諦めた俺は焼きそば弁当から水を捨て、お湯を入れた。

そう言えば、26歳の時に付き合っていた人。
結婚も考えていたが、ある日

「プロポーズされちゃって」

と言われた。

俺は何が何だか分からなくて、思わず「どんな人?」と聞いた。

超有名大学を卒業して、
世界的大企業に勤めていて、
エリートしか入れない部署で、

――何がエリートだよ。

焼きそば弁当の中のお湯は、ボコボコと沸騰していた。

エリートを支えてるのは……何百、いや、何千っていう凡人なんだよ!

エリートなんて……、

――クソ喰らえ!

……

………

テレビオホーツクが、朝のニュースをお伝えします。

昨夜未明、紋別市で「家が燃えている」と付近の住民から119番通報があり、消防車が出動しました。
火はおよそ1時間後に消し止められましたが、住宅1棟が全焼し、中から住人と思われる遺体が発見され、警察は身元の確認を急いでいます。
出火原因はガス爆発と見られていますが、警察と消防は詳しい出火原因を調べています。

次のニュースです。
昨日の昼頃、遠軽町の図書館に除雪車が突っ込み、運転していた富樫徹也(43)を現行犯逮捕――……。

【了】(1075字)


毎週ショートショートnoteの主催者、たらはかにさんより「富樫チャレンジ」として、特別なお題「でっかい妬きそば弁当」を頂きました。

タイトルとタグに「毎週ショートショートnote」を付けてしまって良いものか悩みましたが…まぁいいかなって。(何)

本家の毎週ショートショートnoteはこちら。

焼きそば弁当は北海道民のソウルフードですね。
まさか「焼きそば」が「妬きそば」になるとは…。(;^_^A

でも、意外とサラッと書けました。
本来のお題は苦戦するのに…。

「富樫チャレンジ」についての詳細は以下のTweetをご覧ください。

ありがとうございます!(・∀・) 大切に使わせて頂きます!