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カフェ4分33秒|毎週ショートショートnote

旅人は「カフェ4分33秒」に入り、カウンターに座った。ダンディなマスターが「いらっしゃいませ」と旅人に水を出す。

「アイスコーヒーを」
「かしこまりました」

旅人は店内を見渡し「いい雰囲気の店だな」と思った。

「あの、4分33秒って変わった名前ですね」
「妻との離婚の話し合いにかかった時間が4分33秒なので」

――え?

旅人は後悔した。ヤバい店に入ってしまったと。
マスターはカウンターの隅でコップを磨いている。旅人は早く店から出たくて、アイスコーヒーを一気に飲み干した。

「ご馳走様でした」

旅人は逃げるように店を出て行った。

――カチッ。

マスターがストップウォッチを押す。

「4分52秒か。惜しかったな……」

店の奥からマスターの妻が出てきて、ストップウォッチを覗き込んだ。

「4分33秒の壁はなかなか破れないようね」

カフェ4分33秒のオーナー夫妻は、いかに客を早く帰らせるかを競っている。

最短記録は、妻の4分33秒である。

(了)


たらはかにさんの「毎週ショートショートnote」参加用です。
今週のお題は「カフェ4分33秒」です。

まさかこの企画でジョン・ケージの「4分33秒」が出てくるとは思いませんでした。
「4分33秒」とは、譜面に全て「休符」がついており、演奏者が一切音を出すことなく終わるという、れっきとした「楽曲」です。
1952年にアメリカの音楽家のジョン・ケージが「作曲」し、実は世界的に高い評価を受けているという、頭のおかしい音楽作品です。


先週のお題は「イライラする挨拶代わり」でした。


テーマ「創作」で「CONGRATULATIONS」を頂きました!

ありがとうございます!(・∀・) 大切に使わせて頂きます!