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宇宙漂流お父さん First Contact【連載第一弾#3】【シリーズ#6】

宇宙漂流お父さん First Contact③

 宇宙船に乗ってから(乗る気はなかったのだが)随分と経つのだが、誰とも会わずふわふわと宇宙を漂っているような気分だった。

 それが一夜にして全て変わってしまった。

 黒い物体がドッキングしコンタクトを試みて来た。

 決死の覚悟で、ドッキングした宇宙船を訪ねてみたのだが、無人の宇宙船だった。

 そこで見つけた『どこかに繋がっている扉』に飛び込んでみた。

ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

「うわ、、、暑い」

 踏み込んだ扉の中は、特別な事が起こる事もなく、入るまでに覗き込んでいた風景と何ら変わらなかった。

 宇宙船にいる時は適温で保たれていて、久しぶりに【熱】というものを感じたからだろうか。
 ちょっとした温度の変化でも、暑く感じてしまっているのかもしれない。

「んー、どうしようか…街っぽいのは見えるけど…。」

 草原が広がる風景の奥に街が見える。
 街は西洋風の石造りの建物が多い。木造よりは随分頑丈そうな造りだ。

「ここは、一体どこなんだ…」

 街に行って見るか、それともこのまま引き返すか。
 ここが、地球なのか他の星なのか。人がいるのか、別の生物が支配しているのかさえわからない。

ー PiPiPiPi -

 左腕に付いている装置が鳴っている。

≪ 大気:有り/酸素濃度:範囲内/有害気体:検知無し/呼吸可能 ≫

 表示を見るに、ここには人間に必要な空気があることを示していた。
 重力もあり、負荷も必要以上に大きいわけではなさそうだ。

 地球でも見たような鳥のような生物も飛んでいて、植物も豊かに生えている。

 地球に変わる居住地が必要な人類にとっても、かなり条件に合っていそうな星だ。

 しかし、地球以外の星であったとして、人類の次なる居住地に成り得るとしても、これだけ条件が揃っていれば進化した生物が住んでいるに違いない。

「ここは…帰るべきか…。」

 もし、先住民がいたら迷惑をかけてしまうかもしれない。
 迷って帰ろうかと考えていたその時だった。

『あなたは誰?』

 驚いて振り向くと、そこには人がいた。
 人間?ここは地球?
 湧き上がってくる疑問を抑えらなかった。

「すいません、ここはどこなんですか?」

 しまった。名乗りもせず質問だけしてしまったじゃないか。
 もし、敵対的な意識を持っていたら、攻撃をしてくるかもしれない。
 少し身構えて堅くなってしまったが、それは杞憂に終わった。

『ここは、ナルサスですよ。旅で来られたんですか?南の方から?』
「あ、いや、ナルサスでしたか。はは。」

 いきなり嘘ついてしまった…。
 多分、旅人だと思っている。言葉も通じるし、日本なのかもしれないけど、ナルサスってどこなんだ?聞いた事ないな。

『ナルサスはいい所ですよ。城下町で活気ありますし、新鮮な食べ物が多いですから。ゆっくりしてって下さい。』
「ありがとうございます。」
『じゃ、仕事の途中なんでもどります。あ、ナルサスに来た事ないなら一つ気をつけて下さい。』

 一拍置いて、

『”高台には登るな”。これだけは、守ってくださいよ。』
「えっ、」

 なんで?と聞く前に立ち去ってしまった。
 その男の名前も種族も聞く事が出来なかった。

”高台には登るな”

 最後にその言葉が気になったが、その高台がどこにあるかも知らないし、何があるかも知らない

 とにかく、街は平和なようだし、少し寄ってみようか。
 ここがどの国なのかも、わかるかもしれない。
 地球だったら、このまま家に帰れるかも。

 期待と少しの不安を残して、街に向かって歩き出した。

ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

 それにしても、人と話したのが久しぶりでうまくしゃべれなかったなぁ。
 家族と会えるかもしれない、と思うと期待してしまう。

 ナルサスは城下町だそうだ。

 城壁に囲まれた街。
 外にも、木造や石造りの小屋がいくつか並んでいた。

 街に続く道を歩いていると、左は海が一面に広がっている。

 時折すれ違う人が、じろじろこっちを見て来る。
≪宇宙服を着たまま歩いている変なやつ≫と思っているのは間違いない。

 街の城壁には、所々にシンボルマーク描かれていて、この街か国を示しているのだろう。

 街の入り口、門番のような鉄の鎧を着た兵士のような人たちがいる。

 その頭上、壁面にクロスしている旗も見たことがない柄だ。日の丸国旗などではない。
 ここが日本である望みは絶たれて、少し気落ちしてしまった。

「南の方から着たんですけど、通っても大丈夫?」

 衛兵らしき人物に問い掛ける。

『問題ない。ただし、あなたがどこから来たかだけ聞かせてもらえるか?』

 こっちをジロジロと見ながら、明らかに疑っている。
 中世ヨーロッパのような服装や鎧を着ている人達の中を、宇宙服で歩いているんだから仕方がない。

「東京です。日本の。」
『トーキョー?ニホン?どこなんだ。南の方にそんな国あったか…?』
『兵長、南にはそんな国ありません。本当に二ビアの者なのか怪しいですね。』

 あれ?これヤバくないか?
 明らかに国外の者としてマークされかけてる。

「すいません、ちょっと急ぎますんで」
『ちょっと待て。そのトーキョー、ニホンってどこにあるんだ。』
「いや、、その、、、島国でして…」
『島国だと!?』

 更にいらない事を言ってしまったらしい。
 足早に門をくぐろうとした瞬間に、右腕を掴まれてしまった。

『ちょっと来てもらおう。』
「えーっと、、、はい。」

 兵長と呼ばれる者の声に反応して、衛兵が何人も集まり一触即発。
 抵抗する事が出来そうになく、そのまま腕を前で縛られて拘束された。

『何のためにここまで来たのか。話してもらおうじゃないか。』

 ナルサスというこの街に、私は拘束されたまま入ることになった。

 宇宙に出てから初めて人と話したかと思うと、あっという間に捕まってしまった。

 私はこれからどうなってしまうのか。

 空を見ると、夕闇が覆っている。
 拘束されたまま入った街は夕飯時だからなのか、香ばしい肉の匂いが立ち込めていた。

T-Akagi

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