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僕と彼女の宇宙旅行【連載小説#6】

#6 牢屋とヒゲの男

「ちょっと!出してくれよ!何もしてないじゃないか!」

 惑星に着き、宇宙船を降りて街に向かう最中に拘束され拘留されてしまった。

 なぜだ。そんなはずないじゃないか。ツアーなんだから通行許可は得られるはずなのに。許可が得られないどころか、ツアーの存在さえ知らないそぶりだったがどういう事だ。

 安心安全なミステリーツアーは一転。本当に未知の体験をするはめになった。こんな未知の体験はしたくないものだが、いまこの瞬間それに直面している以上、いま何が起きているのか一刻も早く知りたい。
 それに、レイニーともはぐれてしまって心配でならない。咄嗟に隠れたようだし、捕まっていなければいいが...。

――――――――――――

 夜も更け、看守の数も減っていってるようだ。

 看守は鉄の鎧を着ていて、槍のような武器を携えている。歩くたびにガシャガシャと聴こえて来て、近づいたり遠のいたりしている。廊下を歩いているのだろう。

 今、僕がいるこの部屋は、牢屋が6つあって薄い壁で区分けされているだけだ。隣に誰かいればすぐにわかる。しかし、今日この牢屋のある部屋には僕しかいない。何かわずかでもここの情報を得たい。でも話し相手さえいないのでは仕方がなかった。

 ぼーっとそんな事を考えていたら、つい先程とは少し様子が違っている事に気が付いた。

 動く度にガシャガシャと鳴っていた鎧の音が聴こえて来なくなった。看守が二人はいるだろうから、全く聞こえてこないのも何だか変だ。
 休憩だろうか。しかし、二人ともいない事があるんだろうか。兵士になった事がないのでさっぱりわからない。

「兵隊さーん。いるのー?」

 返事はない。やはり、近くにいないのか。何故か妙に不安になり、看守に声を掛けてみたが徒労に終わった。
 そう思っていると、不意を突くかのように誰かが僕に声を掛けて来た。

「ここに居たら、あと三年は出られない。」

 牢屋からは見えないが、誰かが近くにいるようだ。

「看守さん?いや、じゃあ、早く出たいんですけど。何で捕まったのかわからなくて。僕ツアーでここに来てるだけなのに。」
「ツアー?今、内戦中だぞ。浮かれたツアーなど組まれるはずがないだろう。」
「え?内戦?なんでそんな危ないとこに僕たち来たんだ…。」

(おいおい、冗談じゃない。内戦が起こってるなんて。それなら尚更早く帰りたい。)

 内戦って事はその国では戦争が起こっているという事。そこに誰かわからない別の星の者を見つけたんだから、そりゃ拘束するよ。
 危険な内戦が起こっているような星は、ミステリーツアーの対象惑星になるはずがない。大変なことが起こっている事に、ようやく気付き焦りは増していった。

「どなたかわからないけど、そこのお方。何とかここから出してくれないですか?僕、ここの星の者じゃないんですよ。」
「ここの星の者じゃない...?では、どこの者だ。」
「”ケビウス”人です。この星が何て星かわからないんですけど、ミステリーツアーでここに辿り着いたんです。」
「別の星の者という事は、宇宙船でここまで来たのか。」
「はい。どこにあるとかは今は言えませんけど、ここを抜け出せたら直ぐにすぐに帰ります。だから出して欲しいんです!」

 未だ見えざる声の主に懇願してみた。ダメで元々。ここにいつまでも居られないし、レイニーを探さないと。

「君、名前は?」
「僕ですか。マークです。」
「マーク君。私はここの看守ではない。以前、この監獄を抜け出した者だ。君は一緒に行くか。」

 声の主はやっと姿を現した。30代くらいの男性だ。要旨はケビウス人とそう変わらない。ヒゲが少し濃いくらい。
 そのヒゲの男は、私の檻の前に立ち、こちらの様子を伺っているようだった。

「それは、ここから出られるという事でしょうか。」
「そうだ。今すぐ決めろ。今しかチャンスは無い。」

 答えは一つだ。

「行きます。お願いします!」

 レイニーを探さなければならない。その前にまずここから出る。ヒゲの男の正体はわからないが懸けてみるしかない。

「よし、決まりだ。ここから。この星から、お前を脱出させてやる。」

つづく

T-Akagi

【 つづきはこちら(note内ページです) 】


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