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僕と彼女の宇宙旅行【連載小説#1】

#1 宇宙をお散歩していたら...

 無重力は楽しい。何でもぷかぷかと浮かぶ。
 だから、宇宙を散歩するのは大好きだ。今日も少しだけ散歩しよう。

「宇宙は綺麗だなぁ。」

 宇宙では大声で独り言を言っても、外に声が漏れることはない。外には誰もいないし、何てったって真空だから。

「また言ってる。よくもまぁ、毎度毎度感動出来るわね。」

 外に声が漏れる事はないけど、隣にいる人には丸聞こえだ。

「だってほら、外、星空綺麗だぞー。」
「それはそうだけどね。でも、もう見飽きたよ。いつも同じ所にしか行かないし。」
「まぁ、そう言うなって。」

 僕の名前はマーク。奇跡の星・ケビウスの住人だ。
 そして、窓の外から見える星空に感動さえしない女性の名前はレイニー。僕の大好きな女性で、いわゆる彼女だ。好きで好きでたまらない。
 ちょっと素っ気ない所もあるけど、時々すごくロマンチストな所を見せてくれる素敵な女性だ。

「ねぇねぇ、マーク。今日、ちょっと冒険しない?」
「冒険?散歩しに来ただけなのに?」
「いいじゃない。ちょっとだけ。」
「レイニー、何考えてる?」
「え、それはねぇ、退屈しのぎ!」

 僕の彼女はたまに突拍子もない事を口にするが、今回はその範疇を越えている気がした。何をしたいのかもう一回聞き返さないと、突然行動に移すから怖い。

「退屈しのぎって、何する気...?」
「よく聞いてくれたわねー。これなんだけどね!」

 レイニーは、とあう雑誌を取り出して来た。そこには「宇宙ミステリーツアー」の文字。

「え、これは...。」
「これはね、未だ見ぬ星系へのミステリーツアーよ。」
「未だ見ぬ星系って…。」
「まだ開拓されていない星系って事よ。わかる?」
「わかるけど…それって怖くないの?」
「大丈夫よ。開拓されていないって言っても宇宙海賊や星系間戦争は縁のない星系郡だから。ま、そのどこに着くかはミステリーだけどね。」
「そこがミステリーなのか…。」

 きっと言っても聞かないんだろうな。どこに着くかもわからないミステリーツアー。確かに冒険だけど…。

「じゃ、明日出発ね。今日はここで待機ねー。」
「明日!?」
「そうよ。何日か宇宙行くよって言ってなかったっけ?」
「言ってたけど、それはいつもの三日間くらいの宇宙散歩だと思ってたから。」
「えー。それだけだと、退屈するって言ってるじゃん。」
「と言われても急すぎて...。」
「行こ!」

 あー、始まった。僕の正面に立ち、両手で僕の頬を包み込む。そして、必ず二回言うのだ。

「行こっ!!!」

 これに抗えるはずがない。だって、僕は彼女の事を心底愛しているから。

 勢いのまま申し込みを済ませた僕たちは、翌朝の出発を前にゆっくりと寝る事にした。

 少しワクワクし過ぎて眠れないは秘密にしたい。

 だって、これはレイニーと付き合って初めての旅行になるから。

つづく

T-Akagi

【 つづきはこちら(note内ページです) 】


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