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「難病になって何を学んだんですか....?」(5)

(写真は2016年8月ころの減塩食)

2016年7月に「紫斑病性腎炎」という腎臓病の難病を発症して、何を学んで来たかについて書いています。続けて読んでくださっているあなたも、初めてこの記事をご覧になった方にも、まず知って頂きたいことがあります。

それは、2021年10月現在、「寛解」に至っているということです。この病気によってダメージを受けた腎臓は元の状態に戻らないので「完治」とは言うことができないのですが、腎炎は治まったわけです。どうぞご安心ください。

ハイパフォーマンス・コンサルタントの髙澤健(たかざわたけし)です。
難病を発症して何を学んだかと尋ねられることが少なくありません。
これを読んでくださっているあなたの成長のために何らかの刺激になればと願ってしばらくシリーズで書きたいと思います。

さて、最初の入院(その後あと8回入退院しました)が終わった後、直面した食事を通して学んだことをご紹介させていただきます。

腎臓病=減塩

まさか自分が腎臓系の病気を患うとは思ってもいませんでしたが、そんなわたしでも知っていたことは、腎臓の悪い人は「減塩食」にしなければならないことでした。

都道府県によって異なるようですが、日本人男性の塩分平均摂取量は食塩相当で約11グラム。世界保健機構(WHO)は一日平均5グラム以下にするようにと推奨しています。世界の基準の2倍以上の塩分を摂取していることになります。

なぜ、「減塩」なのか?

身体が必要とする塩分を摂取すると、血液をとおして腎臓に運ばれ、腎臓が不必要な塩分を腎臓が尿に排出させるフィルターのような働きをします。腎臓のフィルターに不必要な塩分を排出させるために、血圧が高くなるわけです。それで、高血圧の治療のためにも「減塩」といわれるわけです。

「減塩」をどうやってするのか?

塩辛いものを食べたら、沢山の水を飲んで、塩分濃度を相対的に低くすれば、良いのではないかと愚かにも考えていました。それでは「減塩」になりません。「減塩」のパンフレットを見ながら気持ちが落ち込んでしまいました。

もともと、五味覚の甘味、酸味、塩味、辛味、うま味の中で、塩味は一番といって良いほどスキでした。煎餅やポテトチップスの方がケーキやクッキーなどより好きでした。

「減塩」それとも「滅塩」?

一日の塩分を食塩相当量で6グラムにするように言われました。実際に病院食は一色2グラム以下でした。退院してからが大変です。2グラムの量がどの程度なのかわからずとりあえず、味噌汁を辞めました。もちろんスナックも食べられません。サラダにはドレッシングをかけない。納豆にも醤油をかけない。そばやうどんはざるやもりにして、汁を極力減らす。ラーメンは食べない。大好きだった梅干しも食べない。そのような対応をしました。

好きだった食べ物が食べられないことで、精神的な圧迫感に押しつぶされそうな気持ちになりました。外食はできなくなりました。ファミリーレストランなどでは、塩分がメニューに載っていることが多いのですが、一品2グラム以下のメニューが、デザートかサラダのドレッシング別添えしかないことも多々ありました。

お弁当を買おうと成分表を見れば、全て2グラム以上の塩分。コンビニのおにぎりを一つ食べると、もう後は水やお茶でお腹を満たすしかないということもあり、困難を覚えました。外にでることは諦めるようになりました。ステロイドを接種して免疫力が著しく低下していましたので、マスク着用、手指消毒、ステイホームとコロナ禍のような生活をしていました。

で、何を学んだの?

治療をしている時だけではなく、一生の間、ラーメン食べられないのか、梅干しも食べられないのか、味噌汁も飲めないのか、そう考えていくと落ち込みました。おいしいものをお腹いっぱい食べることが趣味のようでしたから、食の楽しみを一気に奪われたようでした。

あれも、これも食べられない。気付くと一日中、食べられなくなったもののことを考えていました。

そしてある時、世界には一日平均6グラム以下を実現している国があることを知りました。そうか、まだまだ食べたことのない「減塩」でない食事があるんだと気付いたのです。

自分が食べられないもののことばかり考えていたけれど、それでもまだ食べられるものが沢山ある。一生かかっても食べきれないほど食べ物があるんだ、と思えるようになりました。重かった気持ちも期待に変わりました。

それと同じように自分は何か制限がかけられると、その制限のことばかり考えて、可能性のことを考えることができなくなるのだと知ったのです。

「できない」ことばかりを考えていても仕方がない。
「できない」ことに注目するのでなくて
置かれた状況の中で何が「できるのか」を考える。

これを読んでいるあなたが、「できない」ことに押しつぶされそうになっていたら、そんな状況でも何が「できる」のかについて考えることができますように。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

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