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【学び㉓冊目】生き方~人間として一番大切なこと~ 稲盛和夫

はじめに

京セラ、KDDIの設立者として知られる、稲盛和夫氏の1冊です。

彼の経営観や生き方は、仏教に大きく影響を受けています。
以前に読んだ「嫌われる勇気」や「幸せになる勇気」を通して、アドラー心理学の観点からの生き方のヒントを得ました。この本を通しては、歴史に名を残す経営者として、また宗教家としての稲盛氏の考え方に触れ、新たな観点からのヒント得ることができれば、という期待がありました。


”私の成功に理由を求めるとすれば、たったそれだけのことなのかもしれません。つまり私には才能は不足してしていたかもしれないが、人間として正しいことを追求するという、単純な、しかし力強い指針があったということです。”

本を開くとすぐに目に入った、このセリフですが、ここでいう人間としての正しさとは、なんなのかを紐解くことで、彼の生き方を理解することが出来るのではないかと思い、本を読み始めることにしました。


仕事を通して磨く人間性

プロローグから早速、興味深い一文を発見しました

”労働には、欲望に打ち勝ち、心を磨き、人間性をつくっていくという効果がある。”

この一文から、彼の人間観が性悪説に基づいていることが分かります。

人は欲望に打ち勝つことが出来ないが、仕事を通して欲望に打ち勝つことが出来る。それ故、人は生まれてから死ぬまでに少しでも心を磨いていくことこそに、生きていく意義がある。人生の大半を占め、人間性を作っていくために必要である仕事の重要性はそのような形で説明される。

私が本書を読んだ中での、彼の人生観の解釈はこうです。

そして、ここで一番おもしろいと思ったのは、「嫌われる勇気」で紹介されているアドラー心理学と全く違う立場を表明している点です。

アドラー心理学では、人は自我や欲望から開放され、自立し、あらゆる共同体への所属感を持ち、貢献の心を持ち続けていることが幸せになるための条件であるとし、自身に承認欲求など「自分のために生きる」考えがある限り、まだ自立していない段階であるとしているため、労働を通して欲望と戦い続けるという稲盛氏の考え方とは相容れない部分があるのです。なぜなら、仕事を通して自分の中の悪と戦うのではなく、仕事を通して共同体への貢献をし続けることが、アドラーの提案する生き方であるため、仕事をする中で欲望と戦わなくてはいけないということは、アドラーの心理学に照らせば、まだ人のためでなく自己中心的であるということになるからです。

私個人としては、アドラー心理学側の立場に立ちます。大きな焦点としては、人生における迷いや苦悩を認めるか認めないかで、「生き方」ではそれを認めつつ克服していくことを美としている一方、「嫌われる勇気」では、過去の苦悩やトラウマなどを否定し、今後全ての瞬間を幸せに生きていくことにフォーカスを当てています。

たしかに、人生を一つの物語とした時に、様々な挫折や苦悩があるとより素晴らしい人生に思えるかもしれません。しかし、誰もが幸せになるために生まれてきたのにも関わらず、苦しみと戦い続けなければならないのは矛盾なのではないかと感じます。無論、アドラー心理学の生き方を選んだからといって、必ずしも全ての瞬間に幸せであることが出来るとは限りません。しかし、何があっても、物事の結果や過去、変えられないものではなく、「これから」にフォーカスをあてていく考え方の方が、絶えずなにかと戦い続けながら今を生きる全ての人の心により強く響くメッセージなのではないかと思います。


とにかく、立場が違うことによる人生観の大きな違いに驚き、とても興味深く感じたのが、この1節でした。


貢献の心


彼を含めて、歴史に名を残す経営者の多くが、貢献の心を持っていると感じました。貢献の心は、この本の言葉でいう、人間として正しいこと、道徳的に正しいことの1つにも当たります。与えられることばかりに目をやるのではなく、与え続ける心です。会社を作り経営するだけならば、(誰でも出来るという言い方をすれば語弊が生じるかもしれませんが)、多くの人が行っています。彼のように人々の記憶に残り続ける経営者たちに共通するのは、社会をより良くするために与え続けよう、自分のためではなく誰かのために、という貢献の心を持っているということです。

スキルよりも人間力の方が大事だという意見には同意しても同意しきれません。特に現代社会で多く見られる、スキル志向ですが、自分のスキルが目的となってしまえば、終わりの無い旅に出てしまうも同然で、永遠に自分に満足することが出来ないサイクルに陥ってしまいます。また、自分のためになるかどうかが判断基準になってしまうので、視野やできることも結果的に狭まってしまいます。自分のために、から、人のために、に変えることで、見えるものも増え、結果的に自分の出来ることの範囲も広くなります。また、その貢献そのものに満足感をえることで、自分自身も幸せになることができるのではないかと思います。


因果応報の法則


後半で登場する、因果応報の法則についての話では、彼の思想がいかに仏教に大きく影響されているかを伺うことが出来ます。いくら善事を積み上げても、直ぐに報われない時も多いでしょう。また、誠実に生きていない人間が得をしているのを見て、人生が不公平だと思うかもしれません。ですが、全く心配する必要など無いと、彼は言います。なぜなら、善事は、結果に繋がるまでの時間は異なるものの、必ず善の結果を導き、悪事もまた、悪の結果を導くからです。なので、ただ良いことの積み上げをしていけばいい、というのが彼の考え方です。なるほど、文字通り、善を積み上げ続け、成功を手に入れた彼の経営観、生き方にこの因果応報の考え方が大きく影響を与えたのは言うまでもないありません。

まとめ

まず、「嫌われる勇気」を読んだ直後に。この本を読んだことにより発見した、それぞれの本でしめされている人生観の違いに、非常に面白みを感じました。まだ、嫌われる勇気を読んでない人は、そちらを読み対比してみることをおすすめします。


また、現代を生きる全ての人に生き方を選ぶための読書が必要だと感じました。どの生き方を選ぶかは自分次第ですが、そもそも自分の生き方が見つかっていないのにも関わらず、生き方に関する本に触れていない人が多いように感じます。彼のように経営者として、人々の記憶に残るような人の生き方は、多くの人に影響を与えていることは間違いなく、その人の生き方に触れてみる価値は多いにあるでしょう。読書を通して多くの人の「生き方」に触れ、自分の哲学を常にアップデートし続けることの重要さを再確認させてくれた1冊でした。

今日も最後まで読んでくださり、ありがとうございました!!





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