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【学び㉕冊目】一倉定の経営心得

はじめに

徹底的な現場実践主義と、顧客第一主義を熱血的に社長のみを対象にして指導をする、異色の経営コンサルタントと呼ばれた一倉定氏による経営のバイブルです。あらゆる業種、業態に精通した「社長の教祖」とよばれた彼の教えに触れ、経営者に求められる人物像をより明確にするために、このタイミングでこの本を手にしました。




学び①自分の性格に合わない事業には手を出さないほうが無難である。

新規事業に踏み出すのは、良いが社長や会社が得意な事業、社長の性格に合う事業でなければ、中々上手く行きません。

もちろん、「嫌われる勇気」にある共同体意識のように、全ての人への貢献意識を持つ人格の持ち主であることが経営者には求められます。一倉氏が言うには、ダメな会社、ダメな従業員というような概念などは存在せず、あるのはダメな経営者だけなのです。経営者の価値観は、会社全体の在り方に影響するので、経営者が高い道徳心を持っていなければ、会社は崩壊してしまいます。

とはいえ、ビジネスを行う以上、全ての人や会社に貢献することは不可能です。どの事業を通して、顧客や社会に貢献をしていくのか、決めなくてはいけません。となるのと、経営者が得意とする分野であったり、経営者の性格に合う分野で攻めた方が、より貢献できる可能性は高くなります。

個人的にも、未踏の分野にチャレンジする前に、まず経営者が得意な分野で稼げる事業を1つ2つ作ることが、リスクヘッジの観点からも重要だと感じました。

学び②設備は現事業の強みではあるが、いったん情勢が変わったらお荷物になってしまう危険性を、常にはらんでいる。


膨大な設備投資のダウンサイドとして、減価償却や維持費、また人件費の増加などにより、損益分岐点がかなり増加してしまうので、そのリスクが高まります。また、変化に対応する機動力が落ちてしまったり、市場の変化により、せっかくの設備投資が陳腐化し、台無しになってしまう恐れすらあります。

ここでの学びは「経営者の長期的、また多次元での思考の必要性」であると考えます。一倉氏は、何も「設備投資に力を入れてはいけない」ということを説いている訳ではありません。投資ができない会社は事業をいつまでたっても大きく出来ないからです。

しかし、あくまで会社はお客様、社会のために存在しているものなので、市場の好みが変わった途端に、その設備はあっという間に台無しになってしまうことすらあり得るのです。そうなった時に慌てて、何も身動きができなくなるくらいだったら、初めからそんな投資などしない方が良いということです。経営者は常に長期的思考を伴った行動をしなければなりません。「鷹の目を常に持て。」というメッセージのように感じました。

学び③セールスマンの適格者は、頭の回転が遅く、社交性に欠け、口が重いことである

世の中の有能な営業マンのイメージとして、頭の回転が早く、コミュニケーション能力がずば抜けて高いことが、往々にして挙げられますが、一倉氏は、これを完全に否定しています。むしろ、これらのイメージとは真逆な、不器用ながらもコツコツと努力を重ねていくことができる人材がより適しているというのです。

多くの人にとって信じることができない論かもしれません。私の考えでは、ここで一倉氏が述べているのは、なにも営業マンが頭の回転が早く、コミュニケーション能力がずば抜けて高くてはいけない、と主張したいわけでは決して無いと思います。

いくら、営業マンのコミュニケーション能力が高く、受注に結びつけることができたとしても、「してやられた。今度から気をつけよう。」とお客様に思われてしまった時点で、ルーズーウィンの関係になってしまい、その商談は失敗と言わざるを得ません。

お客様を満足させることが営業マンの役目であり、高いコミュニュケーション力を持ってして、顧客にサービスを押し売りすることではないのです。

まとめ

とてもシンプルな言葉で経営者に必要な心得がまとめられている1冊で、一倉氏のコンセプチュアルスキルの高さを実感する1冊です。個人的には、もしも、経営関連の1冊だけ持ち歩くことが出来るとすれば、絶対にこの本を選びます。著者が嫌う空理空論は文字通りまったくなく、エッセンスだけが詰まっており、経営者でない者に対しても、経営者マインドを持つことへの手助けをしてくれる1冊です。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!



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