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vol.146「後付で正しいことが言えるのは当たり前。仕事をしたことにはならない。」

前に、「あなたの会社は社員に『感情労働手当て』を払っていますか?」という視点について触れました。

ほとんどの会社で、部下に「感情労働手当」が払われて、管理職より社員のほうが給料が高い、なんてことはない。
ということは、歩み寄る/我慢する/話を最後まで聴く などの義務を負っているのは「給料を多くもらっている上司(管理職)だ。映画やテレビ番組とちがって、部下は途中で席を立ったり音声を消したりできないのだから。
なのに勘違いを起こすのは「自分には役職が付いてる」→「それだけ立場(身分)が上である」→「上の人間に合わせるのが正しい」と錯覚するからだ。
というお話でした。

続きです。


◆部下は管理職の私物ではない

部下は上司の私物ではない、という当たり前の感覚をまず持つこと。

仮に、ヒトではなくモノ(有形固定資産)だったとして、株主からの一時的な預かり物であるにすぎない。つまり、勝手に毀損したりそのパフォーマンスを下げたりすることは許されない。

あるいは、時間の一部を提供することで給料と交換する「契約」に基づいて仕事をしている一人の人間である。所有者は当然その本人(とその家族)だ。会社と個人の雇用契約に関して、管理職はまったく何の権利も有していない
また「給料以上に働いて貢献する」「自分の価値を高めるために学ぶ」等はまた別の話で、本人が決めることである。管理職が、何の正当な根拠も報酬も提示せずに強制するものではない。

こんな単純な原理を、前は今よりもっとわかっていませんでした。

◆「生産性」のことをつねに考える

次に、経済的な観点で考えてみます。
仕事というのはサッカーやラグビーと似たところがあります。むやみに止めると流れなくなり、ゲームの効率が悪くなる。観客(=つまり商品にお金を払う人)から見ても、面白くなくなる。

仕事を止める、たとえば細かいチェックで突き返してやり直しさせるのは、それ以上のメリットがあって初めてやることです。メリットとは、「本人のためを思って鍛えてやってるんだ」といった情緒的な主観ではなく、具体的に、数値で置き換えられるものです。なければやる根拠がない。
管理職の仕事は、監督であると同時に、審判でもあり、球団オーナーの代理人でもあるということです。試合が面白くなるよう、プレイを中断するタイミングを考え、観客の満足度が上がるよう考える。
時にはトラブル事案の収束で交渉相手の前面に立つこともあるから、選手も兼ねている。

経済的な観点=生産性は、常に考えるものだと思っています。生産性に優先させるものは、コンプライアンス、法令遵守、人権等への配慮を除いて、そうそうありません。
対面で打合せ、出社する/させる、資料の書き直し、惰性の会議、手書きで書かせる(気持ちを込める)、ゼロベースから考えよ(独創性にこだわる)。
多くの場合、生産性に寄与しなません。命令する側の自己満足や形骸化した不文律によることが多い。

「やったほうがいいこと」はいくらでも見つかります。
全部やるとか同時に(優先度同率一位で)やる、ではなく、何かを捨てる。判断の拠り所になるのは「生産性」だ。上位3つで全体の9割を占めるとき、6位とか9位の事案で細部にこだわって上司も部下も時間を費やさないことのほうが重要です。

※まして、ただ長時間説教するなどは問題外です。時間の面でもメンタルの面でも、生産性にマイナスの影響を及ぼす。「利益を創出するのが任務」だとすると背任行為とさえ言えます。「お金を横領する」との違いは、「目に見えるか見えないか」だけです。

◆後付けで正しいことが言えるのは当たり前。

誰かのやったこと、特に部下の仕事で、失敗やトラブルの報告を受けて、「内心で思っていた」等と言うケースがあります。「すでに発表された解答」をなぞるのは、誰でもできる。
「だから言ったのに」と言うこともあります。友人や後輩ならともかく、「上司が言ってはダメな台詞トップ10」のひとつです。

承認したのは自分です。"命令"したのは指揮官です。
たとえ完全に事後報告で、いま初耳で聞かされたとして、結果責任を取るのが仕事です。

※信頼関係があり、かつ【雇用や将来への責任が取れる】場合、また、育成のために『計画的に手頃な失敗をさせる』のはありだと思います。やり方と表現方法によりますね。

そもそも報告とか相談、プレゼンというものは、受けるほうが圧倒的に有利なゲームです。
説明を聞いているあいだに、欠けているところを考えて、それらしく指摘する。わざと「ハズした感想」をいう。ゆっくり転がされた、コースの分かっているPKを止めるようなもので、簡単なゲームなのです。これらの現象を「非対称性のマジック」と呼んでいます。

自分が上司の立場で、相手(部下)がこちらの発言を受け入れたり、肯定したり、合いの手を入れてくれているときはこの裏返しで考えます。
聴きながら「何を言おうか」考えているし、大原則として、部下のほうが常にものが見えている。また自分より若い人は常に賢い。

さまざまな法則・戒めに照らし合わせて、「本当か?」「大丈夫か?」と自分に問うのがいい、と考えています。


「ちょうどよく自戒する」ことは非常に難しいことです。多くの場合、管理職が自分で思っているより自覚自戒が必要です。
次回はそういった点を整理してみます。

最後までお読みくださりありがとうございます。


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