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vol.128「ジブリ作品に見る、女性リーダー像と、男性サラリーマン中間管理職。」

ジブリ作品、宮崎駿監督についての雑談です。

「宮崎駿は母への敬慕の念が強く、そこから女性性に対する敬意が育った」「だからスタジオジブリでは例えばトイレが男女半々ではなく女性用を多く(広く)つくったのだ」といったエピソードを読んだことがあります。作品であつかうテーマ、人物の設定にも、当然ながらそれが表われているのだそうです。


◆ジブリの主人公の共通点。

ジブリ作品、または宮崎作品の登場人物たちを、キーワード3つであらわすと、「子ども」「女性」「独立」です。

①「子ども」
主人公(たち)の半数以上は子ども、または少年少女層である。(『未来少年コナン』『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』『となりのトトロ』『魔女の宅急便』『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』『崖の上のポニョ』)。
逆に、主人公が成年の作品は、『カリオストロの城』『紅の豚』『ハウルの動く城』『風立ちぬ』。
※『カリオストロ~』『コナン』はジブリより前。ハウル~は一方の主人公ソフィーが18歳だから、前者の例に入れるべきかも。

②「女性」
主人公(たち)は、ほとんどが女性、または男女のペアである。そして、物語のコアを支える重要人物は、ほぼ必ず「力量のある女性」である。
(クシャナ、ドーラ、エボシ御前、湯婆/銭婆、サリマン/荒れ地の魔女、グランマンマーレ)
「強い女性像を描くこと」が、宮崎監督のライフワーク的なテーマのひとつなのかな、と考えています。

③「独立」
主人公(たち)の家、職業、立場。重要人物たちの棲む場所やなりわい、身分。お城か、王族か、海賊か、無法者か、一匹狼か、自由人か、がほとんどです。組織に所属する一員、というのはすくない。
関連して「孤独」「孤立」も宮崎駿氏の共通テーマ。ナウシカ、ハウル、ポルコ、シータ、ドーラ、アシタカ、サン、千尋、ハク―。
宮崎氏が"開発"した手法ではなくて、ペルセウスも孫悟空もルスタムもスーパーマンもハリー・ポッターも、物語のヒーローたちは孤独だった。孤独という陰が、突出した能力や使命という光を際立たせていた。

◆強い、女性の、リーダー

『天空の城 ラピュタ』で人気のある登場人物、と言われたらドーラはトップ3に入ると思います。※個人的には次男のルイが好きです。
そこらの男より強い。度胸が据わっている。口は悪いけど優しい。主人公たちを見守る。実は、正義感が強い。
魅力はいくつもいくつか挙げられるけど、指揮官(上司)として魅力的なのは、「公正さ」と「平常心」だと考えます。

公正さ。実の息子たちと、ほかのスタッフを差別しない。宝物を取り逃がしても、少年たちにアタらない。
平常心。占拠した家(危険のあるはずの)で、食べる、飲む。嵐のなかの航行で、平然と叱咤・指揮する。部下たちの前で、公明正大にふるまうこと。平然としたふりをすることの重要さ、効用を知っている。

言い換えると、「肩書きを拠りどころとしていない」こと。「公明正大」は、彼女の最大の魅力。そのまま「リーダーが備えておくべき資質の上位」とも言えます。

軍隊や海賊の世界にくらべたら、現実の世界では、上司の言うことを聞くのも、反論・反抗するのも、かなりやさしい。
軍隊や海賊の世界にくらべて、部下(組織の構成上、目下の人)に命令したり、抑えつけるのは、はるかに難しい。

ということは、リーダー(管理職)が、気を遣う、知恵を使って観察して工夫する対象=エネルギーを消費すべき相手は、(目上ではなく)目下の人だということです。
上司に対する部下の立場より、部下に対する上司の立場のほうが、ずっと脆弱で、もろいものです。絶対的な物理の法則に支えられているわけでもなんでもない、ただの幻想だからです。

「ドーラ船長」は、ああいうふうになりたい、あんな魅力を身につけたいと思ってなかなか真似できない、モデルリーダー像のひとりです。

◆男性、サラリーマン、中間管理職。

宮崎作品の主要人物にほとんど登場しないのが、男性サラリーマンの中間管理職。「大人」「男性」「従属している」。前述の3つのキーワードの、すべて逆だからです。
クロトワ(風の谷のナウシカ)、ゴンザ(もののけ姫)ぐらいでしょうか。
しかし彼らも「リーダー!」というよりは、組織のナンバー2。現代風にいえば「女性社長に頭の上がらない専務」。と同時に、トップへの敬意や自身の価値観をちゃんと持っている。「カイシャの中間管理職」とはちょっと違う。

例外が『風立ちぬ』。はじめて、主人公が「男性サラリーマン」かつ、実在の人物でした。ただし、専門職で天才肌で奇人。「能力が普通の、バランスの取れた男性」はいまだ主人公になってないと思います。
「子どもから大人も楽しめる冒険活劇」として、サラリーマン中間管理職が主人公では無理がある、ということもあるけど、宮崎監督自身が、ニッポン型のサラリーマン的な職業に魅力を感じないのかもしれません。

一方で、宮崎駿作品のファンには、成人男子、中年男性、サラリーマンが(も)多いように思います。
※統計を取ったわけではなく、そもそもジブリ作品にかぎらないから、仮定です。そもそも「男性のほうが、大人になってもマンガを読み続ける見続ける」説も聞くから、「宮崎作品だから」ということはないかもしれません。

仮に要因があるとしたら、自分たちと離れた理想像だから惹かれる(子ども・女性・若い・独立自由)、または、女性主人公のほうが男性も女性も身が入りやすい、すなわち視聴率や入場者数が伸びやすい、ということかとも想像しています。

宮崎監督の、また作品のファンではありますが、同時に、宮崎駿という人は「憧れたり真似すべきではない典型」だとも考えています。次はそのあたりを分解してみます。


男性か女性か、は単純化しすぎですが、例えば連続テレビ小説の主人公はほぼ女性。大河ドラマの主人公はほぼ男性です。後者は歴史が主に政治・軍事の記録だから。「歴史(の公式記録)を長いあいだ男が独占していたから」だと考えています。このテーマは回を分けて、また取り扱ってみます。

最後までお読みくださりありがとうございます。

画像はスタジオジブリ公式サイトからお借りしました。

「常識の範囲でご自由にお使いください」



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