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門前仲町「たにたや」さんと、季節のお弁当を考える。(その21 冬至)

たにたや、終了致しました。

のっけから、大々的な発表となりましたが、たにたやが、12月23日(木)をもって、閉店となりました。正式に言うと「移転」となります。そんな23日は、ちょうど「冬至の時期」でした。(正式には22日(水)だけど)

冬至は「1年で夜が最も長く昼が短い日」です。冬至は天文学的にいうと、太陽の黄経(こうけい)が270度に達する日で、太陽が一番南にある状態です。そのため、北半球では1年中で昼がいちばん短く、夜がいちばん長くなる日を意味します。

一方、冬至の別名は「一陽来復(いちようらいふく)の日」。

中国や日本では、冬至は太陽の力が一番弱まった日であり、この日を境に再び力が甦ってくるという前向きな意味合いを含んだ言葉なのです。冬至を境に運も上昇するとされているので、かぼちゃを食べて栄養を付け、身体を温めるゆず湯に入り無病息災を願いながら寒い冬を乗りきる知恵とされています。

1年のうちに、18個のお弁当をいただきました。

冬至のお弁当は、年末で僕自身、予定が詰まり、ランチの時間帯が取れなかったので、急遽、夕方に実施することになった。いつもと違う、夕暮れ時。先日メニューデザインで盛り上がった(?)チアキさんの、ニューメニューが提出されて、食事がスタート。「ゆずなますのいくら添え」が僕にとっては懐かしく、そこから「カキフライ」、冬至といえば、「カボチャとひよこ豆のグリルマリネ」が食に彩りを加える。この冬を超え、そして冬至を過ぎれば、明日から「日はまた長くなる」季節の到来だ。

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さて24節気弁当も、21回目、9月は欧州出張のため、2回ほどお休みをいただきましたが、2月から12月までのおおよそ10ヶ月(イレギュラーもありますが)で18個のお弁当をいただきました。初回から6回目あたりは、弁当自体も、もの珍しさが強く、また、コロナ禍ということもあり、私自身も興味深くいただいたのを覚えています。

そこから7月ー8月のオリンピックの時期、そして9月の欧州出張後からの中盤が訪れたその時、たにたやの移転に絡んで、事業再構築補助金の提出をしていた谷田さんの心境が、お弁当にも絡みながら、すこしずつ「変化」が起きておりました。

まずスタッフ要員が増えたこと。

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ドリンクをはじめ、魚の仕入れ、捌きのアドバイザーをしてくださっているトシコさんのおかげで、圧倒的に旬の魚に「色合い」が生まれました。すこし正確に書くと、単にその時の24節気にこれが旬です、という魚を使うわけではなく、実際に市場での魚の動きから、「その時に旬のものを選択する」ようになったのです。そこから格段に、魚に対する愛着が増えてきました。

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次に、上野さん。たにたやには無かった「ランチ時間」を活用した飲食業態「食堂アルヒ」を作り、ランチ営業期間中にリピーターが生まれ、野菜を中心としたメニューとワンプレートランチが好評を博している。

最近では、江東区への引っ越しも決定し、たにたや移転後は、定期的に「食堂アルヒ」が復活するのだと思います。

そして、先日メニューデザインから登場したチアキさん。美術大学を卒業後、就職活動をしていたが、ひょんなことから谷田さんと出会い、来年からいよいよ新卒として、Light and Dishesに入社することが内定している。元々はプロダクトデザイナーではあるが、今らしく「プロフェッショナル」ではなく、「ジェネラリスト」の要素を持つ若手だ。むしろ若手は「ジェネラリスト」の要素が強くなっている印象で、ピン芸人のようなものだ。

こうしたスタッフが3名ほど集合しながらも、谷田さんのスキルを邪魔することなく、ポジティブに、弱点補強を「人材登用」で賄えたのは大きいと感じる。

その後、10月からの後半。無事に補助金も獲得し、いよいよ心機一転、福住(同地区)に物件契約、そして内装工事がスタートする運びとなった。ちょうど、たにたやの現物件は、他の方に、造作譲渡することも決定し、後顧の憂いなく、2022年に臨むタイミングが生まれつつある。

イシューからはじめよ

さて、環境が整いつつある谷田さん。料理の方向性として、この1年間、2週にいっぺん、弁当を食べながら、お話をさせていただき、移転に絡む、次なるステップ、2022年はどこを見ていくのかがポイントだ。

一つ言えるとしたら、僕は「イシュー」から始めてほしいと思っている。

「イシュー」とは、「2つ以上の集団の間で決着のついていない問題」であり「根本に関わる、もしくは白黒がはっきりしていない問題」の両方の条件を満たすもの。

実は、僕らが「問題だ」と思っていることは、そのほとんどが、「いま、この局面でケリをつけるべき問題=イシュー」ではない。本当に価値のある仕事をしたいなら、本当に世の中に変化を興したいなら、この「イシュー」を見極めることが最初のステップだということだ。

「食」をコミュニケーションツールとして、様々な出来事が生まれる瞬間をつくっていきます。そこには、人と人、人とつくり手、その繋がりに必要とされる照明があります。これまでの経験と出会いから生まれる、心地よい光を提供していきます。

改めて、谷田さんの会社、Light and DishesのConceptを振り返ってみる。食と光の接点はどこにあるのか。事業としてはソリューション、解決方法がビジネスに直結するはずだが、谷田さんの事業会社が目指すべき方向性は、もっと大きなものだ。照明機材を作ること、料理を提供することがゴールではなく、なぜそのコンセプトを掲げながら「照明機材を作り」「料理をサービスするのか」がポイントだ。

実は、修錬度が高いのは「コミュニケーション力」。

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そうこうしているうちに、12月23日、最終日を迎えた、たにたや。

16時スタートから23時ころまで、最終日営業は、惣菜がふんだんに入ったミニ弁当と、一杯のお酒のクイックな対応となった。いかにも、たにたやらしいと感じている。その中で、多くのお客様がお越しになり、声をかけられ、時には、感極まる谷田さんをすこしばかりみるにつれて、「照明や料理にスポットがあたっているわけではなく、コミュニケーションが好きなんだ」と改めて感じることがある。もちろん、照明も料理もそれぞれ自らオペレーションし、こなしてきたからこそ見えてくるものがあるし、それが見事に反映されている姿を見ると、来春オープン予定の新店舗も、成功を収めるのではと確信をしている。

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事業は、社長として担うべきか、スタッフとして支えるべきか。そのどちらも「時間」を要する。どっちのポジションにしても、その時にしか感じないこと、見えないこともおおい。だからといって、どっちがいいということではなく、改めて、自らの「イシュー」を問い直してほしい。そのイシューこそが、明日の朝何食べようかな?のような「小さな選択」から、ここは転職すべきだろうかという「大きな決断」をちらつかせるはずで、その選択肢が多ければ多いほど、より「最良な選択」を得ることができると僕は考えている。


人は最良の人生を選択しながら生きている

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これは、僕の元ボスである、小山薫堂さんの言葉だ。

人生は分岐点の連続である。

ありえたかもしれない人生が枝分かれしている。

きっと自分の人生は、その一番よい枝を選びながら進んでいるのだ。

万が一、失敗、敗北のほうを選んでしまったとしても、
それは目先の失敗や敗北に過ぎない。

よりたくさんの光が届くほうに向かって、
人生の枝は伸びているに違いない。

その「光」こそ、谷田さんの売りだ。



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