見出し画像

門前仲町「たにたや」さんと、季節のお弁当を考える。(その20 大雪)

小雪から大雪へ

二十四節気が小雪から大雪へと変わり、山だけでなく平野でも本格的に雪が降り出す頃となりました。木々の葉もすっかり散り終え、いよいよ冬将軍の到来です。

日中は暖かいこともありますが、朝晩は冷え込みが厳しく、池や川には氷を見るようになります。

冬の寒さが日ごとに加わり、動物たちも冬ごもりを始め、鰤 (ぶり) や鰰 (はたはた) など冬の魚の漁も盛んになります。また、新しい年の準備を始める「正月事始め」もこの時期からです。

忘年会の始まりでもあります。

元々は、鎌倉時代に行われていた「年忘れ(としわすれ)」という歌を詠む会がルーツとされています。当時は、年末に貴族や武士が集まり歌を詠み合いました。今のような賑やかな忘年会とは違い、厳かな雰囲気の会であったそうです。わいわいとお酒を飲む会としては、年明けに「新年会」を行なっていました。

その後、江戸時代に入り、庶民の間で「一年の苦労を労う会」として年末にお酒を飲むようになりました。この頃はまだ行事として定着していませんでしたが、明治時代には一般的な行事となりました。

日常が変わる瞬間。

画像1

そんな大雪のお弁当。そのお弁当の蓋に、ちいさなメニューが添えてあった。いま、たにたやで、アルバイトをしている、ちあきさんが作ったものだ。今年の春に美大を卒業し、その卒業制作で作ったプロダクトが、今年9月のミラノサローネに出展(するはずだったが、諸々あり出品できなかった)するはずだったのだができず、けれどミラノには足を運び、その旅先で、谷田さんと出会い、この秋から、たにたやの次の新店舗計画からスタッフとして参加している。

実は毎回、メニュー内容を食べる直前、直後に、谷田さんからSNSのメッセンジャーでいただくことが日常だったのですが、はじめて変わったのだ。

「責任が生まれる」ということ。

画像2

さっそくメニューに沿って内容を聞くことにした。

「あ、それでは谷田さんからお伝えいただきます」(ちあきさん)
「え?せっかくメニューを作ったので、ちあきちゃんから教えてください」(松田)
「あ、、それでは上から、鮭の、、、」(ちあきさん)
(中略)
「おから炊きとあるけど、すごく良い香りがする、これなに?」(松田)
「・・・・」(ちあきさん)
「あ、これは、柑橘の、、」(谷田さん)

なるほど、、

ちょっと気になって、ふと、本棚からフードグラフィック(飲食店のショップカードやロゴなどをまとめた冊子)の本を見せた。

たくさんのグラフィックデザイナーが多くの飲食店、食の小売店のデザインをまとめていたものだ。2009年に発刊されたものだが、僕は大切に持っている。そこに載っているデザインが好きとか参考にしようと思って持っていたわけではない。どちらかというと、反面教師のようなものだ。

反面教師とは「反省の材料となるような人や事例」のことだ。

僕は、食に対するデザインの可能性は「無限大」だと思っている。そしてなにより「食」では補えない部分の可能性を拡げてくれることが、僕自身、価値を感じている。

今回のメニューデザインも、とてもよいアクションだと思うし、これまでのたにたやのおべんとうにはなかった拡がりをもったことはとても嬉しかった。

だからこそ、そこに「責任」が生まれるということを伝えたかった。

メニューデザインは、いつも大変。。

シェフの思い、お店の思い。
どんなものを食べさせたいのか、食べて欲しいのか。
写真が必要か、どんな記載にすべきか。

メニューを作るときに聞く、作り手の言葉

まずは、なぜこのメニューかを問うべき。

「大雪」の「お弁当プロジェクト」と銘打ってあるのだが、
食べ手の僕にとっては大切かもしれないが、
もし第三者が食べるとしたら、関係のないこと。

「大雪」とすれば、僕とすれば
「鱖魚群 (さけのうおむらがる)」を記載するだろう。

スクリーンショット 2021-12-08 19.32.30

鱖魚群 (さけのうおむらがる)とは「鮭が川を遡上するとき」

鮭は、海中で1~5年過ごすとされていますが、不思議なことに彼らは自分の生まれた川をよく覚えており、長く海で生活した後でも、ほとんどの鮭はもとの川に戻ってくるそうです。その理由は、鮭の鋭い嗅覚によるものだと考えられています。産卵のため一心不乱に遡上してくる鮭は、まったく食物もとらず、役目を終えると力尽きます。こうして鮭は、次の命を育んでいます。

だから僕らは、その命を「戴(いただ)く」ことができる。

一年の集大成、来季に向けた資金調達もできた主人。
次の未来の糧として、「鮭」はとても大切な食材選びだと思っています。
だから市場にも並ぶはずですし、そもそも、その食材を選択した主人の気持ちを忘れてはならない。

明朝体、センター寄せ、サイズ合わせ。
ぜひ「伝わるデザイン」を、主人谷田さんから学んで欲しい。

デザイナーが求められているのではなく、
コミュニケーションができる人が求められている。

コミュニケーションができるからこそ、お店は続くのです。
そして新たなお店を作ることは「大事(おおごと)」です。

さて、いよいよ12月が始まり、次回は「冬至」です!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?