記事一覧
僕らって幸せになれると思う?
僕は扉を開けて教室の中に入った。
教室の中には赤い夕陽が差し込んでいた。光と闇の、極端なコントラストだった。僕は目を細める。
窓際の席に知らない制服を着た少女が座っていた。他には誰もいない。
僕は彼女に歩み寄る。
彼女の髪は短かった。右手に剃刀を持っているのが見えた。ああ、手首を切っているのか。
「へい」近づき、声をかける。
彼女は僕を見た。泣いていた。僕は笑った。
「な
短編小説:スト6毎日引退してる。
時計の針は2時を指している。AM、だった。
「いや、次で本当にラストだから。ダルシムはノーカンでしょ」
PCのモニターを凝視しながら、私は一人呟く。
疲労はラインを越えつつある。脳の処理能力は悲惨なほどに低下している。この状態、全くもって楽しくない。
だけど、私はゲームをやっていた。
私がやっているのは〈ストリートファイター6〉……通称スト6。去年の夏に出た格闘ゲームだ。
短編小説:ナイフとラブレター
穏やかな春の日の午後だった。少年はコンクリートに寝ころび、イヤホンで音楽を聴きながら、青色の空を眺めていた。小鳥が飛んでいる。
屋上に他の生徒はいない。いまは授業時間だった。
少年は学ランの前を開けていて、白いシャツが見えている。眠そうな目をした少年だった。携帯の近くには、大型のナイフ二本が転がっている。
「ユウ」
寝ころぶ少年に声が掛けられた。いつの間にか、そばに別の少年が立って
【掌編小説】手首の傷に花丸を
朝、3回目のアラームで目を覚まし、ベッドから身を起こし、思い至った。
今日は特別な日。
私は、起床後にやるべき様々なことをやろうとする。一日の始まり。その中で、ボンヤリと思考する。ああ、私は今日まで生き延びたのか、と。
洗面所で歯を磨きながら、鏡の中の女を眺める。短い黒髪。少年のような顔。
口の中のものを吐き出す。口の中を洗って、呟く。
「頑張って生きてきたな、私」
長袖を
ブルーライト・ゲームキッズ
暗いベッドルームに一人の少年がいた。ゲーミングチェアに座る彼は白いパーカーを着ていて、茶色の髪は中性的な長さにカットされている。目の前にはPCモニターがあり、唯一の明かりとなるブルーライトを放っていた。少年の頭部にはヘッドセットが装着されている。手元にはレバーレスコントローラ―。これは細長い箱の表面に12個のボタンがついた奇妙な代物だ。
モニターの中では対戦が行われている。二人のキャラクター
恋と煙草とアーケード
午後七時。バイトを終え、私はゲームセンターへと入っていく。騒がしい電子音が私を迎える。それと、煙草の匂いも。一か月前は抵抗感のあったそれらも、今では慣れたものだ。私の世界は変わろうとしている。
私は目的地へと足早に歩く。――視線を感じる。それはそうだ。私は目立つ外見をしている。顔が良い十代の女で、セーラー服を着ているから。正直に言うと、気分のいい境遇ではある。あの、彼のことが無かったらの話だ