ハカsober

短編小説を書いていきます。統合失調症で闘病中。趣味は格闘ゲーム。

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短編小説を書いていきます。統合失調症で闘病中。趣味は格闘ゲーム。

記事一覧

僕らって幸せになれると思う?

 僕は扉を開けて教室の中に入った。  教室の中には赤い夕陽が差し込んでいた。光と闇の、極端なコントラストだった。僕は目を細める。  窓際の席に知らない制服を着た…

ハカsober
9日前
12

短編小説:スト6毎日引退してる。

 時計の針は2時を指している。AM、だった。 「いや、次で本当にラストだから。ダルシムはノーカンでしょ」  PCのモニターを凝視しながら、私は一人呟く。  疲労はラ…

ハカsober
12日前
5

短編アクション小説:男一人、犬一匹

 その犬は、男を睨みながら、ぐるる、と唸った。  大きな犬だった。飯を食っていないのか、痩せているが、まだ戦闘能力は有りそうだった。 「そんなに警戒するなよ、俺…

ハカsober
3か月前
2

短編小説:ナイフとラブレター

 穏やかな春の日の午後だった。少年はコンクリートに寝ころび、イヤホンで音楽を聴きながら、青色の空を眺めていた。小鳥が飛んでいる。  屋上に他の生徒はいない。いま…

ハカsober
4か月前
5

短編小説:ヘッドセット・ゲームキッズ

 23時。決闘の舞台は、ダークシティの片隅にある路地裏だった。殺し合う二人は共に人外の技を使っている。一方は掌から黒い気弾を放ち、一方は肉食獣よりしなやかに動く。…

ハカsober
8か月前
3

【掌編小説】手首の傷に花丸を

 朝、3回目のアラームで目を覚まし、ベッドから身を起こし、思い至った。  今日は特別な日。  私は、起床後にやるべき様々なことをやろうとする。一日の始まり。その…

ハカsober
11か月前
4

ブルーライト・ゲームキッズ

 暗いベッドルームに一人の少年がいた。ゲーミングチェアに座る彼は白いパーカーを着ていて、茶色の髪は中性的な長さにカットされている。目の前にはPCモニターがあり、唯…

ハカsober
1年前
8

【短編アクション小説】恋と煙草と格闘ゲーム

 決闘が始まろうとしていた。  私は意識して呼吸する。左手でレバーを握る。右手の下には六つのボタン。目の前にはゲーム画面。  キャラクター選択。私はレバーを操作…

ハカsober
1年前
7

【短編小説】半透明少女関係

 ヒグラシが鳴いていた。太陽がゆっくりと落下して、世界は明度と温度を下げていく。街は夜を迎えようとしている。――だけど、まだ夕方。    街の片隅にある、アパート…

ハカsober
1年前
2

恋と煙草とアーケード

 午後七時。バイトを終え、私はゲームセンターへと入っていく。騒がしい電子音が私を迎える。それと、煙草の匂いも。一か月前は抵抗感のあったそれらも、今では慣れたもの…

ハカsober
2年前
18

トランポリンガール

 私は混乱している。それは確かだ。だけど、私はなぜ混乱している? その理由が分からない。記憶が混乱している。一時間前、私は何をしていた? 脳にアルコールが入って…

ハカsober
3年前
4

魔術人間ユカリ

 ユカリは考える。 「おれは何の為に生まれたのか。おれはどこに行けばいいのか。おれが生きることに意味はあるのか」  血液と臓物、肉片をばらまきながら、彼は考える…

ハカsober
4年前
9

ラヴリータイラント

 十四人の視線が、王の前に立つ少女に向けられていた。 「ふむ」  少女は微笑み、尊大に頷いた。 「不信、殺意、畏れ――そんなところか、この凝視は。悪くない。私が誰…

ハカsober
4年前
7
僕らって幸せになれると思う?

僕らって幸せになれると思う?

 僕は扉を開けて教室の中に入った。

 教室の中には赤い夕陽が差し込んでいた。光と闇の、極端なコントラストだった。僕は目を細める。

 窓際の席に知らない制服を着た少女が座っていた。他には誰もいない。

 僕は彼女に歩み寄る。

 彼女の髪は短かった。右手に剃刀を持っているのが見えた。ああ、手首を切っているのか。

「へい」近づき、声をかける。

 彼女は僕を見た。泣いていた。僕は笑った。

「な

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短編小説:スト6毎日引退してる。

短編小説:スト6毎日引退してる。

 時計の針は2時を指している。AM、だった。

「いや、次で本当にラストだから。ダルシムはノーカンでしょ」

 PCのモニターを凝視しながら、私は一人呟く。

 疲労はラインを越えつつある。脳の処理能力は悲惨なほどに低下している。この状態、全くもって楽しくない。

 だけど、私はゲームをやっていた。

 私がやっているのは〈ストリートファイター6〉……通称スト6。去年の夏に出た格闘ゲームだ。

 

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短編アクション小説:男一人、犬一匹

短編アクション小説:男一人、犬一匹

 その犬は、男を睨みながら、ぐるる、と唸った。

 大きな犬だった。飯を食っていないのか、痩せているが、まだ戦闘能力は有りそうだった。

「そんなに警戒するなよ、俺ごときに……」

 男はそう言って、犬の目の前にしゃがみ込んだ。

 男の身なりは貧相なものだった。長い髪に、無精ひげ。汚れたジーンズに、汚れたジャケット。背中には小さな鞄、腰には刀身をむき出しにした無骨なサーベル。

 一人と一匹がい

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短編小説:ナイフとラブレター

短編小説:ナイフとラブレター

 穏やかな春の日の午後だった。少年はコンクリートに寝ころび、イヤホンで音楽を聴きながら、青色の空を眺めていた。小鳥が飛んでいる。

 屋上に他の生徒はいない。いまは授業時間だった。

 少年は学ランの前を開けていて、白いシャツが見えている。眠そうな目をした少年だった。携帯の近くには、大型のナイフ二本が転がっている。

「ユウ」

 寝ころぶ少年に声が掛けられた。いつの間にか、そばに別の少年が立って

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短編小説:ヘッドセット・ゲームキッズ

短編小説:ヘッドセット・ゲームキッズ

 23時。決闘の舞台は、ダークシティの片隅にある路地裏だった。殺し合う二人は共に人外の技を使っている。一方は掌から黒い気弾を放ち、一方は肉食獣よりしなやかに動く。二人とも、素手だった。

 気弾を放つ男――黒いスーツを着た大男は、ギミー・デンジャーという名で知られていた。ファイターの中でも屈指のパワーを持ち、一度相手を捕まえれば、それですべてを終わらせることもできる。しかし、彼はいま、劣勢だった。

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【掌編小説】手首の傷に花丸を

【掌編小説】手首の傷に花丸を

 朝、3回目のアラームで目を覚まし、ベッドから身を起こし、思い至った。

 今日は特別な日。

 私は、起床後にやるべき様々なことをやろうとする。一日の始まり。その中で、ボンヤリと思考する。ああ、私は今日まで生き延びたのか、と。

 洗面所で歯を磨きながら、鏡の中の女を眺める。短い黒髪。少年のような顔。

 口の中のものを吐き出す。口の中を洗って、呟く。

「頑張って生きてきたな、私」

 長袖を

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ブルーライト・ゲームキッズ

ブルーライト・ゲームキッズ

 暗いベッドルームに一人の少年がいた。ゲーミングチェアに座る彼は白いパーカーを着ていて、茶色の髪は中性的な長さにカットされている。目の前にはPCモニターがあり、唯一の明かりとなるブルーライトを放っていた。少年の頭部にはヘッドセットが装着されている。手元にはレバーレスコントローラ―。これは細長い箱の表面に12個のボタンがついた奇妙な代物だ。

 モニターの中では対戦が行われている。二人のキャラクター

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【短編アクション小説】恋と煙草と格闘ゲーム

【短編アクション小説】恋と煙草と格闘ゲーム

 決闘が始まろうとしていた。

 私は意識して呼吸する。左手でレバーを握る。右手の下には六つのボタン。目の前にはゲーム画面。

 キャラクター選択。私はレバーを操作し、迷わず「フライデイ」を選ぶ。パンツスーツにサングラスの、黒人女性。見た目で選んだが、今では私の分身と言える存在になっている。

「やってるねえ、女子高生ちゃん」

 背後で女性の声が聞こえたが、スルーする。

 相手の選んだキャラク

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【短編小説】半透明少女関係

【短編小説】半透明少女関係

 ヒグラシが鳴いていた。太陽がゆっくりと落下して、世界は明度と温度を下げていく。街は夜を迎えようとしている。――だけど、まだ夕方。
 
 街の片隅にある、アパートの一室。そこでは、二人の少女の笑い声が響いていた。二人は壁際のモニターに向かって、クッションに座りながら、格闘ゲームをやっている。部屋は8畳ほどの広さで、壁には女優のポスターやミュージシャンのポスターが、壁を埋め尽くすほどに張られている。

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恋と煙草とアーケード

恋と煙草とアーケード

 午後七時。バイトを終え、私はゲームセンターへと入っていく。騒がしい電子音が私を迎える。それと、煙草の匂いも。一か月前は抵抗感のあったそれらも、今では慣れたものだ。私の世界は変わろうとしている。

 私は目的地へと足早に歩く。――視線を感じる。それはそうだ。私は目立つ外見をしている。顔が良い十代の女で、セーラー服を着ているから。正直に言うと、気分のいい境遇ではある。あの、彼のことが無かったらの話だ

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トランポリンガール

トランポリンガール

 私は混乱している。それは確かだ。だけど、私はなぜ混乱している? その理由が分からない。記憶が混乱している。一時間前、私は何をしていた? 脳にアルコールが入っているのか? 薬が入っているのか? 思い出せない。私はジャケットを着ている。スカートをはいている。私はストリートにいる。真夜中だった。街のライトが輝いている。

 私は息を切らして走っている。

「はあっ、はあっ、はあっ……」

 自分の息遣

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魔術人間ユカリ

魔術人間ユカリ

 ユカリは考える。

「おれは何の為に生まれたのか。おれはどこに行けばいいのか。おれが生きることに意味はあるのか」

 血液と臓物、肉片をばらまきながら、彼は考える。

「おれは何の為におれになったのか。あるいは、おれはおれになることができるのか」

 覚醒は突然だった。まるで神からの贈り物のように、彼は自我を獲得した。それまでの彼は造られた生命であり、実験動物であり、意思なき戦闘兵器でしかなかっ

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ラヴリータイラント

ラヴリータイラント

 十四人の視線が、王の前に立つ少女に向けられていた。

「ふむ」
 少女は微笑み、尊大に頷いた。
「不信、殺意、畏れ――そんなところか、この凝視は。悪くない。私が誰だか忘れられたかと思ったぞ、アスラ」

 評定の間は幽玄なる灯で照らされていた。今、この場には国の最高幹部十三人が揃っている。彼らは皆、頭に角を生やした鬼であった。

 そして玉座に座る男こそ、鬼の王、アスラだ。彼はまだ若く、精悍な顔立

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