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25.あらゆる手段でブランドの価値を伝える

商品を売り込むのは苦手、商品説明するのはかっこ悪いという考え方をするクリエイターがいます。私達がすることは売り込み(購入を強制すること)じゃなくて、ブランドや商品の存在を知ってもらうこと、商品情報を提供すること、購入するかどうかの判断はお客様がします。買ってもらう前に知ってもらわないとビジネスが始まりません。しかもそれを伝えるのはあなた自身しかいません。ビジネスにするためにできるだけ多くの人に知ってもらいましょう。

◆あらゆる手段でブランドの価値を伝える

デザイナーのなかには、ブランドを構築してファッションビジネスで成功したいと言っているのに、きちんとブランドを紹介ができていない人が多くいます。彼らは「良いものを作れば売れる」「納得できる商品になるまで改善する」と言いますが、今の時代は良い商品なのは当たり前。やっとビジネスのスタート台についたようなものです。
しかも、良い商品かどうかは買って使ってみなければわからないのですから、まず良い商品だと思わせる努力をしなければなりません。商品の魅力や価値を十分に伝え、ほかの商品と比べて優れている点、なぜその商品を買ったほうがいいのか、商品のメリットなどをきちんと明示しましょう。

商品価値だけでなく、デザイナーのこだわりやどのようなライフスタイルを提案するのかという世界観も伝えてください。
名前が知られている大手ブランドは、既に十分すぎる情報発信をしていますから、店舗における情報発信量を少なくしても、お客様は価値に納得し、商品を買ってくれます。しかし、無名のデザイナーが大手ブランドのマネをして情報量を抑えてしまうと、ブランドの価値が伝わりません。
無名ブランドはとにかく情報量を多くするべきで、文字で説明するだけでなく、イメージ写真やプロモーションツール、ディスプレイの什器、接客など、消費者の目に触れるありとあらゆるもので伝えたいものです。

デザイナーの考え、ポリシー、センス、こだわりは、商品以外の部分でもおおいに表現できます。「聞かれもしないのにパンフレットなどで商品説明をするのは売り込んでいるみたいで嫌だ」とか「商品だけ見て価値を判断して欲しい」とか言う人もいますね。しかし、価値が伝わらなければ、商品は売れません。
これは仕事についてもあてはまります。自社でどのように品質の高い仕事をしているか、どれほど長時間頑張っているか、どんなに工夫しているか、どれだけコストを切り詰めているか、自社の仕事がどんなメリットになっているかという仕事の価値を伝えるべきなのです。

では、どうやって伝えるのか。
それは、会社案内や営業案内のような資料をまとめることだったり、ニュースレターをお客様に配信したり、ブログをつけたり……。取引先と接触するためのツールの種類と回数を増やしていくことです。
仕事に対するこだわりを情報発信し、取引先から「そこまでやってくれていたんですね」と泣いて感謝されるくらい、きっちり価値を伝えましょう。

◆さまざまなアクション

とにかく自社ブランドの情報を発信しつづけて閾値を越えない限り、ビジネスは離陸しません。情報発信はブランドの信用を高め、見込み客を増やしたり顧客化したり、新規取扱店を獲得することなどにつながります。

見込み客を獲得する情報発信手段のひとつに、プレスリリースをマスコミに送付して雑誌や新聞、テレビなどで取り上げてもらう方法があります。その際は、自分が言いたいことではなく、読者や視聴者が聞きたそうだったり、知りたそうな内容や表現にすること。マスコミ露出は知名度を向上させ、見込み客獲得につながります。
ほかにも、見込客を獲得するためにはホームページの整備や、ショップに来てくれる人を増やすためのイベント開催看板やポスターの整備なども効果的です。

それでは、すでにブランドを知っている人を顧客化するにはどのような方法が良いのでしょう?

ファッションの場合は、「魅力で欲しくさせて、機能で満足させる」という方法が適しています。
魅力は、デザインやスタイリングイメージなど見てわかることでアピール。 機能は、ブランドコンセプトや開発秘話、デザイナーの経歴人柄、接客サービスなど目に見えない部分です。
商品のデザインだけで消費者に十分な満足度を与えられると考えるのではなく、付随する価値を伝えきることでようやく満足してもらえると考えるほうが妥当でしょう。

さて、最後はデザイナー本人による伝達の話。有名百貨店での取り扱いが決まったあるデザイナーがいます。取り引きのきっかけは展示会の案内とブランド資料をバイヤーに送ったことでした。
バイヤーが展示会に来て話をしたときに、ブランドコンセプトやターゲット、商品のポイントなどを聞かれたそうです。バイヤーはそれらを聞かなければ、自社の売場のコンセプトや客層に沿うブランドかどうかを判断できません。そのデザイナーはきちんと説明できましたが、バイヤーによると説明ができない人が多いのだとか。そのデザイナーがこれまで作ってきた商品のセンスとクオリティがバイヤーの求めるレベルに達していたことはもちろん、ブランドコンセプトをはじめ、販促ツールにまで一貫しているイメージ、こだわり、センスのよさが評価され、それを本人がきちんとプレゼンできたということが取り扱いにつながったのでしょう。

◆間違ったアピールに注意

デザイナーはあまり意識していないかもしれませんが、広告や販促による消費者からの期待度と満足度のコントロールはかなり大切です。
効果効能を大げさに宣伝して、買ったらがっかりという商品の話をよく聞きます。
「いいです」「効きます」とアピールすればするほど、もっともその効果に期待している人が興味を持つもの。そのお客様はとても困っていて、期待度が高くなりすぎている状態です。それだけに、実際の商品が最高でないと満足してくれません。
期待度を高めると集客につながりますが、逆に満足度が低くなるのでリピートしてもらえず、結果として持続的なビジネスにならない場合があります。
だからといって、期待度を下げるためにあえて価値を伝えなかったり、価値を低く表現したりしてもビジネスとして成り立ちません。

広告や販促では、「客観的で適切な表現」というバランスの良さが大切です。第三者の視点や消費者の視点で客観的に自分のブランドや商品を表現しましょう。
作り手の気持ちばかりが先走ると、「頑張る」「こだわる」「苦労した」と感情語 ばかり羅列することになってしまいます。これではまったく商品説明になりません。作った本人は、商品を理解しすぎているので、客観的な視点が欠けてしまいがちなのです。

◆プロモーションしても売れないのは……

デザイナーによくある勘違い。
それは、とりあえず知名度が高まれば売り上げがついてくるとか、イメージアップしないと売れるようにならないとか。しかし、お金を得るための仕組みが欠けている限り、どんなに宣伝してもイメージアップしても儲かりません。十分に練り上げられた商品と戦略が核になければ、プロモーションをしても共感を得られないばかりか、信用を失うことさえあるのです。
自分の商品を過信しがちなデザイナーは、プロモーションではなく商品や営業方法、信用などについても再確認してみましょう。

※このNOTEは2010年発行「好きを仕事にする自分ブランドのつくりかた」の一部を再編集して公開しています。


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