種ありか?種なしか?
5月の「ジャムの旅」で目指すのは宮崎県日南市だ。
もう何度も来てるし「ジャムの旅」としても3回目。
2年ぶりかな。
宮崎県日南市で柑橘栽培をされている「緑の里りょうくん」の田中良一さん、聖子さん夫妻に会いにいく。
余談だが、先日の朝の情報番組「THE TIME」の安住キャスターが、農園から生中継で田中さんの国産グレープフルーツの魅力を伝えていた。
田中さんが育てるグレープフルーツは「樹上完熟栽培」だ。
「樹上完熟栽培」とは?
樹に成らせたまま十分美味しくなるまで待って収穫する。
形、大きさはバラバラでも酸味、甘みが濃厚で美味しい。
表面に斑点や傷があるのは、農薬を最小限まで減らしているから。
自然にも、そして携わる人間にも優しい栽培方法なんだ。
「持続可能な農業」を続けておられる素晴らしい生産者さんです。
安住さんと田中夫妻の掛け合いが面白かったな〜。
希少な国産グレープフルーツの魅力が全国に伝わって嬉しい。
テレビに映る馴染みのある農園の風景や、田中夫妻の笑顔を見ていたら会いたくなった。
だから会いにきた。
宮崎空港から出た瞬間に東京とは違う南国の日差し、そして海風の香りにハッとする。
雨が続いていたみたいだが、幸運にも最高の晴天日に来れた。
時間に余裕があったので宮崎市の街中を散歩したり、ご当地グルメのチキン南蛮を堪能した。
そしてゆっくりと日南海岸をドライブしながら向かう。
あ〜、やっぱりいいな。この時間の流れ。
これが宮崎なんだよ。
毎度のように好きな時間に農園に着いて、勝手に好きな場所にテントを張った。
「古久保さんならもう全部わかってるし、いつも通り放置でいいですか?はははー!」
広報の女性からも事前にそう言われている。
「好きなところから好きなだけ取っていいよー」
良一さんもこんな感じだ。
来たというより戻ってきた、って感覚になる。
みなさん、ほんっとにありがとう。
遠慮なくくつろがせていただきます。
ポカポカのお日様の下、本を読んだり昼寝したりした。
今夜は最高の星空を見るんだ。
遠くから聞こえる獣の鳴き声も気にせず、快適なテントでぐっすり眠れた。
翌朝5時には目が覚めてテントから出る。
昼間はポカポカだが朝晩は気温がグッと下がるので、テントは露でびっしょりだ。
貸切状態の畑で朝露が滴るグレープフルーツを収穫した。
いいね。
ここから黙々とマーマレード作りをすること12時間…。
疲れた〜。
マーマレード作りは下処理にとても時間がかかるもの。
立派に大きく育ったこの樹上完熟グレープフルーツ。
果汁たっぷりでみずみずしい。
そして…。
種がめちゃくちゃ多い。
輸入のグレープフルーツに慣れていると驚く量だ。
丁寧に種を取り除いて、それでもまだ残っていないか再確認しながら作業を進めていく。
もう大丈夫だろうと思っていても、最終段階でポツッと一粒出てきたりなんかする。
今までどこにいたんだよ!
この気が遠くなる様な作業。
別に嫌いではない。
感覚としてはとんかつに添えるキャベツの千切りを切っているような。
無心で種を取り除き実を刻む。
都会のように雑音がないから集中できる。
そもそも何で種があるんだ。
最近では種なしのブドウやスイカなんてのも普通に売っているのに。
田中良一さんに聞いてみた。
「ん〜、まあ、いろんな考えがあるけど…。人間の都合、わがままもあるのかな…。」
人が食べやすいように。
食べやすい方が売れる。
売れるものをどんどん作る。
人間の経済上の理由で種なしは作られる。
そもそも種は何のためにあるのか?
すべての動物、そして植物は子孫を残すという目的がある。
植物は歩けないから、種を動物に運んでもらう。
甘くて美味しい果実を鳥に食べてもらい、はるか遠い地で種を含んだフンをする。
そこでまた新しい芽が出て実を成らす。
そうやって繁殖の範囲を広げ生存していく。
美味しくないと動物に食べて運んでもらえないのだ。
ということはだ。
「種がある方が美味しいよね」ってなる。
種ありが正義で、種なしが悪って話じゃないよ。
物事にはいろんな角度からの考えがあるねってこと。
自然本来の美味しさも大事だし、継続していくための生産性や効率化、消費者のニーズも大事。
全国を巡っていると様々な生産者に出会え、それぞれの考え方に触れることができる。
置かれている環境はみな違うもんね。
何が正解ではなくて「知る」ってことが大事なんだ。
そんなちょっとシリアスな話をしながらも、田中さんの生産現場はとっても明るくゆっくりした雰囲気なんだ。
まさに宮崎時間。
普段自分がいかに急いでいるか、詰め込んでいるかに気づかされる。
もっとゆっくりじっくりでいいじゃないか。
ほんとにいい時間を過ごすことができた「ジャムの旅」となった。
過去のグレープフルーツのお話も読んでみてください!
↓
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?