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茶道論の系譜—茶道とは何か

茶道論の系譜

 茶道論とは「茶道とは何か」という茶道の思想である。あるいはその問いかけに対して書き残されてきた文章である。茶道にはいろいろの要素がある。思想哲学、文学、宗教、芸能、美術工芸、建築造園、衣、食の文化、花、医学など、包括的で複合的であり重層的文化である。それだけにあいまいな茫漠たる性格は否めない。また茶道は時代の変遷とともに様々な形へと変化してきた。茶道論も社会的背景とともに変化してきたといえる。
 茶道論の系譜には、芸能論、茶禅一味論、分限論、趣味論という切り口があるとされている。芸能論は室町時代、能阿弥を代表する書院の茶である。茶禅一味論は戦国時代、一休禅師から千宗旦のわび草庵茶といわれる時代、分限論とは江戸時代中期、裏千家七代如心斎をはじめ藪内竹心、小堀遠州時代とされている。そして明治維新以後、近代数寄者といわれる益田鈍翁、髙橋箒庵に代表される趣味論である。

つまるところ、それはあまりにも常套句に過ぎるが、茶道は、茶の点前、道具、茶会、見識等さまざまの方法を通じて、人間が人間らしくなる道というほかはない。すでに出発点において「心の文」が喝破し、近代の入り口において直弼が語ったことも、その点において共通している。芸能論も、茶禅一味論も分限論、趣味論も、その時代の色を強く受けた茶道論であるが、その根底では、道としての表現や方法を、さらに責任や楽しみを語ってきたという意味において、一貫していたのではないかと思えるのである。

熊倉功夫、1999「茶道論の系譜」熊倉功夫・田中秀隆編『茶道文化体系 第一巻 茶道文化論』
淡交社、45頁。




参考文献
熊倉功夫「茶道論の系譜」熊倉功夫・田中秀隆編『茶道文化体系 第一巻 茶道文化論』1999年、淡交社。

画像:南都称名寺(筆者撮影)

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