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趣味のデータ分析039_子どもを持つということ⑤_専業主婦というバブル時代の夢

前回は、女性の予定、理想のライフコースについて、年齢別に分析してみた。
そして、
1. 1990年代以降、若い女性が専業主婦を理想としなくなったこと
2. 1990年代以降、理想としての両立が全年齢的に増加していること
3. 30代女性で、理想としての非婚が漸増していること

の3点が確認できた。

コーホート分析

さて、このデータ、足掛け23年にわたり調査されており、年齢層別データもあるので、コーホート分析が可能である。2002年→2005年のタイミングで、調査のラグが3年になっていることなどで、代表性は十分ではないのだが、下記のコーホートについて、13年間独身でいた女性の、ライフコースへの考え方の変化を追っかけることができる。
A. 1973年~1974年生まれ
 1992年に18~19歳、1997年に23~24歳、2002年に28~29歳、2005年に31~32歳
B. 1978年~1979年生まれ
 1997年に18~19歳、2002年に23~24歳、2005年に26~27歳、2010年に31~32歳
C. 1983年~1984年生まれ
 2002年に18~19歳、2005年に21~22歳、2010年に26~27歳、2015年に31~32歳

では、A~Cの理想のライフコースについて、まず見てみよう。

図1:1973~1974年生まれの女性の理想のライフコース
(出所:出生動向基本調査)
図2:1978~1979年生まれの女性の理想のライフコース
(出所:出生動向基本調査)
図3:1983~1984年生まれの女性の理想のライフコース
(出所:出生動向基本調査)

1973~1974年生まれについて、専業主婦コースが大幅に減少し、対象的に両立コースが上がった以外は、1973年~1984年生まれまでで、理想のコースが大きく変わった感じはあまりない。三つ子の魂百までというか、理想のビジョンは年齢に応じてそこまで変化しないようだ(まあ、全体感でも年齢別推移でも全体的に横ばい感は強いので、予測できた結果ではあるが…)。
では、予定のコーホート分析をしてみよう。

図4:1973~1974年生まれの女性の予定のライフコース
(出所:出生動向基本調査)
図5:1978~1979年生まれの女性の予定のライフコース
(出所:出生動向基本調査)
図6:1983~1984年生まれの女性の予定のライフコース
(出所:出生動向基本調査)

予定についてはもう少し動きがある。各世代の共通点としては、まず年齢が上がるにつれ、高水準だった再就職が急減、非婚就業が急増している。また専業主婦については、若い頃はまだ水準が高いが、年齢とともに急速に割合を切り下げている。
違いとしては、まずなんだかんだ1978~1979年生まれまでは、30代でも再就職=結婚して子どもを生むことを予定する者のほうがまだ多かったが、1983~1984年生まれは、30代での非婚就業コースが上回った。また、5ポイント程度であるが、両立コースについては年代を下るにつれ、徐々に水準を切り上げている。最終的に、1983~1984年生まれでは、予定としても両立が再就職を上回っている。
理想ビジョンについては、コーホート別にそこまでの差がないことを踏まえると、この2つの世代間の差については、社会情勢の差が反映されていると考えられる。

理想と予定の差

次に、コーホート別のライフコースの理想と予定の差を確認してみよう。

図7:1973~1974年生まれの女性の予定と理想の差
(出所:出生動向基本調査)
図8:1978~1979年生まれの女性の予定と理想の差
(出所:出生動向基本調査)
図9:1983~1984年生まれの女性の予定と理想の差 (出所:出生動向基本調査)

予定と理想の差をみると、まずいずれのコーホートでも、20代前半までは再就職について予定>理想で、20代後半以降は非婚について予定>理想となっている。個人的に興味深いのは、1978年以降生まれの、18~19歳時点での「予定」では、予定専業主婦≧理想専業主婦となっていること。直感的なイメージとしては、「理想は専業主婦だけど、現実的な予定は両立か再就職」という感じだと思っていたが、コーホートで見ると、逆に「理想は両立か再就職だけど、現実的な予定は専業主婦」と一部の層が考えている可能性が確認できた(理想と予定のクロス分析がないからなんとも言えないが)。
この辺は完全に想像だが、18~19歳という年齢を考えると、「本当は子供を産んでも働きたいけど、若くてそのイメージが持てず(あるいは専業主婦である母親のイメージに引きずられ)、結局専業主婦という予定をイメージしている」ということなんじゃないかと思う。なんとなく、「専業主婦は楽だから理想ではあるけど、実際は難しい」という、「甘えた女性像」に一石を投じる感はある。

逆に理想>予定となっているのは、20代前半までは概ね両立、20代後半以降は概ね専業主婦となっている。こうなった背景はちょうど真反対で、両立が若い頃に理想超過であったのは、両立予定が少なく、その後その割合が増加し、理想との差分が減ったことだが、専業主婦は予定が急減したことで、理想との差分が広がってしまったことだ。別に専業主婦や両立の理想水準自体に変化はないので、あくまで予定の方の動きに反応しているに過ぎない。
あえて注目するなら、1979年までは、30代になっても比較的両立の理想超幅が大きいが、1983~1984年生まれでは、20代後半以降の両立の理想超幅が減少し、非婚の予定超が増加している、ということだろうか。

まとめ

コーホート分析では、1973~1974年生まれ=2023年時点で50歳の女性が、18~19歳の頃=1992年だけにせよ、専業主婦を比較的多く理想とし、そこから急低下したことは、それなりに示唆的である。1978年生まれ以降の女性群は、そもそも専業主婦を理想とする者が多数派となったことがない。そしてこれ以降もないだろう。専業主婦という理想像は、バブルに青春期を過ごした否かで収束しており、今は、理想としても両立か再就職が理想像なのだろう。

さらにもう一つ妄想しておく。合算値なので実際は不明だが、多分どのコーホートであっても、「18~19歳の頃に専業主婦を理想とした人は、30~34歳でも専業主婦を理想としている」んではないだろうか。三つ子の魂百までというか。
一方で、その人達も現実的な予定としては両立なり再就職なり非婚就業なりを考えている(≒諦めている)ため、結果として専業主婦の理想と予定の差は、年を追うに連れ増加し、30~34歳段階では10~15%に至っているのではないか。はっきり言えば、このギャップにも関わらず理想像としての専業主婦を掲げ続けている10~15%くらいの人たちが、「結婚できない女」なんじゃねぇかな、と思う。

さて、なんか結構話がズレてしまった(そもそも更新がめっきり落ちているという問題もある)。ただ3638と今回で、DINKsは、ライフコースの観点でも非常に少なく、日本において結婚することは、かなりの意味合いで子供を持つことということ、年代を下るに連れ、非婚傾向が(望むにせよ望まざるにせよ)ライフプランとしても増加していることは観察できた。

補足・データの作り方等

いつもと同様、すべてのデータは、第16回出生動向基本調査から取ってきている。

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