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趣味のデータ分析045_子どもを持つということ⑪_結婚と出産の解体

041042043044で、結婚と出産(子持ち希望や妊娠含む)の関係について確認してきた。今回は、出生動向基本調査の2021年の詳細数字が出たことも踏まえ、可能な範囲でグラフを更新した上で、得られた結果を改めて概観したい。

結婚と出産にかかる実際の行動

まずは、結婚と出産に関し、結婚願望(更に既婚か未婚か)と子持ち希望の関係を復習しよう。実際に妻45~49歳の夫婦が産んだ子供の数及び結婚15-19年目の夫婦が産んだ子供の数は、図1、2のとおり。(一般的に、夫婦の最終的な出生子ども数=完結出生児は、結婚15-19年目の夫婦が産んだ子供の数として定義されているが、「女性がこれ以上子どもを産まない年齢」として、妻45-49歳の夫婦の数字も取り上げている。個人的には、晩婚化が進展していることから、後者のほうが適当だと思っている)

図2:結婚15-19年目の夫婦の出生子ども数の構成比
(出所:出生動向基本調査)
図2:妻45-49歳夫婦の出生子ども数の構成比
(出所:出生動向基本調査)

いずれの定義にしても、2010年以降、子どもをもたない夫婦の数は10%弱いるものの、多数派を占めるとはまったく言えない状況である。結婚している夫婦は、最終的には1人以上子どもを持つことが大多数と言える。
次に、未婚、既婚それぞれの持ちたい子供の数を比較しよう。まずは、34歳以下の結婚意思のある男女から(図3、4)。2021年のデータで更新している。

図3:結婚意思のある34歳以下未婚男性の希望子ども数の構成比
(出所:出生動向基本調査)
図3:結婚意思のある34歳以下未婚女性の希望子ども数の構成比
(出所:出生動向基本調査)

男女いずれも、子どもを希望しない(できない)者は、こちらも2021年データで若干増加したものの、10%程度に留まる。一方で、結婚意思のない者をみると、子どもを希望しない(できない)者は8割を占める(図5、6)。

図5:結婚意思のない34歳以下未婚男性の希望子ども数の構成比
(出所:出生動向基本調査)
図6:結婚意思のない34歳以下未婚女性の希望子ども数の構成比
(出所:出生動向基本調査)

カバー範囲を広げて希望子ども数の平均(図7)で見てみても、年齢性別に関わらず、結婚願望のある者のほうが高く、無い者は低い。

図7:年齢別性別結婚願望別平均希望子ども数
(出所:出生動向基本調査)

既婚者の側はさらに顕著である(図8)。既婚女性の95%以上が、子どもを一人以上持つことを理想としている。

図8:既婚女性の理想子ども数の構成比
(出所:出生動向基本調査)

実際に結婚した夫婦の大多数は子どもを持っており、結婚願望のある者及び既婚者も、大多数は子どもを一人以上持つことを希望し、一方で結婚願望の無い者は、8割がそもそも子どもを希望していない。ここまでをみる限り、結婚と出産(子どもを持つこと)には、強い相関があるように感じられる。

次に、結婚のきっかけやメリットについてのデータを見てみる。結婚するきっかけについて、「子どもや家族が欲しかったから」を挙げる夫婦は、全体の50%弱で、かなり安定して推移している。もっと直接的な「子どもができたから」は、全体の数%である(ただこれは、ゼクシィ購読者という母集団の問題もあると思われる)。

図9:結婚を決めた理由
(出所:ゼクシィ結婚トレンド調査)

更に「結婚のきっかけ」について、前回は見逃していたが、出生動向基本調査でも同様のものがあった。2010年と2021年の2回分だけだが、年齢別とかが簡単に取れるのでやや詳細に見たものが、図10になる。質問は「結婚を決めたきっかけ」で、子供関係の理由だけを抜粋した。
25歳未満では「子どもができた」、つまりデキ婚が多数派(ちなみに他の選択肢と比較しても最も多い)だが、それ以外の年代ではせいぜい10%を超える程度。「できるだけ早く子どもが欲しかった」という選択肢についても大差ない割合で、ゼクシィ以上に、結婚の決心をするのに、子どもを持つことの希望は決定打になっていない。

図9:結婚を決めたきっかけ
(出所:出生動向基本調査)

未婚者が結婚のメリットとして子どもを挙げる割合(図11)も、せいぜい30~50%程度で、多くはあるが、普遍的とまでは言えない程度である。

図11:各「結婚の利点」を選択した未婚者の割合
(出所:出生動向基本調査)

なお、婚姻届を提出した日から9ヶ月前後以内に出産した夫婦、いわゆるデキ婚は、「子どもができたことを直接の契機として結婚した夫婦」と言えると思われる。そしてこれについても、正確には測れないが、可能なデータでみる限り(図12、13)、少なくとも増加傾向にあるとは言いにくい。

図12:結婚期間が妊娠期間より短い出生数が嫡出第1子数に占める割合
(出所:人口動態調査特殊調査)
図13:第1子出生までの同居機関別に見た出生構成割合(累積)
(出所:人口動態調査特殊調査)

結婚に踏み切る契機、理由としての子どもは、重要ではあるが決定打ではない、という可能性が窺われる。

結婚と出産に関する世間の見方

最後は、子どものいない夫婦(そして嫡出子ではない子ども)を、世の中がどう受け止めているか、というところを見てみたい。質問の仕方が調査ごとにまちまちなので、「結婚しても子どもをもたなくてよいという考え方に賛成の人の割合」という形にまとめたが、子なし夫婦に関する理解は継続的に上昇しているようで、足元では50%程度が賛成しているようだ(図14)。

図14:結婚しても子どもをもたなくてよいという考え方に賛成の人の割合
(出所:男女共同参画社会に関する意識調査、NHK「日本人の意識調査」、生活定点、出生動向基本調査)

また、非嫡出子に関しては、相対的にデータが少ないが、こちらも漸増傾向にあり、50%弱くらいの人が理解を示しているようだ(図15)。

図15:未婚で子供がいてもかまわないという考え方に賛成の人の割合
(出所:生活定点、出生動向基本調査)

ただ、非嫡出子の数自体は、日本ではずっと安定して数%にとどまっている(図16)。

図16:嫡出子-非嫡出子の構成割合
(出所:人口動態調査)

まとめ

今回は大半が再掲グラフで非常に省エネだったが、改めて、以上からどういったことが言えるだろうか。ちょっと踏み込んだ憶測をすると、
1. (本質的には結婚と出産は一対一対応ではないが、)結婚=出産という社会的な共通認識が存在している。
2. よって、実際に結婚するだけでなく、結婚を希望するかどうかの段階で、子持ち願望の有無が大きな影響を持つ(結婚願望と子持ち願望が密接に結びつくこととなる)。子持ち願望をもたない者は、いわゆる婚活市場にも参入すらしない。
3. 反面、婚活市場は、子持ち願望(の一致)を前提とした上で、それ以外の価値観が一致するかを確認していく場となる(子持ち願望は結婚の決定打ではない)。
4. 2000年代初頭まではある程度前提とできた1.の社会共通認識、つまり結婚と出産の結びつきが、徐々に解体され始めており、今後「結婚はするが出産はしない」「出産はするが結婚はしない」という人たちが増えるのかもしれない。(以前は明確には触れなかったけど、)2021年のDINKsを理想とする女性の若干の増加(図16)も、その表れかもしれない(ただし、十分多い割合になるかどうかは完全に別問題である)。

図16:理想のライフコース
(出所:出生動向基本調査)

5. . 少子化対策的観点では、現状子持ち夫婦、子無し夫婦、結婚したい(≒子どもを持ちたい)独身への支援を実施しているが、うち「望んで子なし夫婦になっている者」と、こうした支援から完全に外れる、「子どももいらないし結婚もしたくない」という者のトレンドが問題となる。

補足・データの作り方等

ほぼ前回までのデータなので、補足は無し。

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