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マーケティング基礎知識(消費者の購買決定プロセスモデル)

今回は、webマーケティングを行う上でよく出てくる消費者の購買決定プロセスモデルについて解説していきたいと思います。

1.AIDMA(アイドマ)

 マーケテイングの本を読むと必ず、最初方に記載されている定番のプロセス。1920年代には、既に発表されていたという歴史ある概念です。海外においては
Mを除いたAIDAの方がメジャーなようです。

 AIDMAのは顧客が購買に至るまでのステップをつくり、その頭文字をとったものです。それぞれの内容は下記になり、そのステップのどこに顧客がいるのか?を分析し、そのステップのどこがハードルになっているのか?を見つけ、対策を打つのに使ったりします。それぞれの頭文字の意味は下記になります。

 ・Attention(注意する、気がつく)
    ↓
 ・Interest(関心、興味をもつ)
    ↓
 ・Desire(欲求、欲しいと思う)
    ↓
 ・Memory(記憶する)or Motivate(モチベート、後押しする)
    ↓
 ・Action(行動、購買する)

 最近では、4段回目のMemoryをMotivateに変えて説明するものもでてきています。ある意味、100年近くたった現在でも十分に通用する概念だと思います。人間の本質はそんなに変わらないんですね。
 ただ、それぞれのステップを喚起させるための手法がチラシや雑誌、テレビ、ラジオからスマートフォン等のデジタルデバイスへスライドはしてきているといった環境変化が起きています。

2.AISAS/AISEAS/AISCEAS(アイサス/アイセアス/アイシーズ)

 こちらは、ネットでの購買プロセスをAIDMA同様な視点で分解して考えて作られたモノです。インターネットの普及で購買行動自体が大きく変わってきています。
 普及前は 
 ・1人の人間の持っている情報がそれ程多くない。
  (基本自分の知り合いや自分宛の広告から情報を仕入れていた。)
 ・自分の行動圏内での消費がメイン

 普及後は、
 ・インターネットを介して、世界中の情報を集めることができるようになった。
 ・宅急便や電子決済の普及も相まって、ネット上で決済が完了できるようになった。
 →ネット通販の商圏範囲は全世界となった
 ・外食に置いても「ぐるなび」のような飲食店専門サイトや評価サイトとして「食べログ」がでてきた。
 →飲食店を探す際にもインターネットを使うようになった。
 と購買行動の中にインターネット検索が入り込んで来ました。

まずはAISAS(アイサス)の頭文字の示す内容を下記に記載します。

 ・Attention(注意)
   ↓
 ・Interest(関心)
   ↓
 ・Search(検索)←NEW!!
   ↓
 ・Action(購買)
   ↓
 ・Share(情報共有)←NEW!!

 とAIDMAになかったものとして、Search(検索)とShare(情報共有)のプロセスが加わりました。これまでは自分や知り合いの持っている情報内で物事を決めていましたが、膨大な情報を持つインターネット内でより最適なものを見つけることが可能な事を知り、ネット回線の普及と共に一気に広がっていきました。
 さらにblogや評価サイトの普及と共に自分の得た情報を簡単に発表できるようにもなったため、情報を共有するといった文化も醸成されてきています。
 ここで革新的だったのは、このshareするといった概念かなと思います。昔から口コミ自体はありましたが、あくまでも口コミなので人を通じての伝播しかしなかったものが、インターネットを経由する事で全世界に発信もしくは、それらを閲覧することが出来るようになったことが大きいです。
 実際に今私が書いている記事もインターネットがなければ、一部の知り合い以外にられることはないでしょう…

そしてインターネット上に情報が氾濫し、溢れてきた事でさらにプロセスを細かく分けるようになって生まれてきたのが、
 ・AISEAS(アイセアス)
 ・AISCEAS(アイシーズ)
です。AISCEASの方がAISEASの内容を含んでいますので、AISCEAS(アイシーズ)の内容を下記に記載します。

 ・Attention(注意)
   ↓
 ・Interest(関心)
   ↓
 ・Search(検索)  
   ↓
 ・Comparison(比較)←NEW!!
   ↓
 ・Examination(検討)←NEW!!
   ↓
 ・Action(購買)
   ↓
 ・Share(情報共有)
 
ここで加わったのは、Comparison(比較)とExamination(検討)です。これも昔から行われている事ですが、ネット検索での情報が増えた事でこれらが重要になってきました。特に高額商品や購入決定までに時間をかけるBtoB商品などはこういった傾向がより強くなります。
 サイトの方でもここを強化した価格.comを代表とするような比較、検討のサイトが次々と出てきています。最近でもホテルや旅行系は乱立していますね。
 特にどこで買っても同一品質の商品はより低価格でといった傾向が強くなるのでこの流れには逆らえないでしょう。また、これまではビッグワードでの検索しか知らなかった層が叙々により自分のニーズに則した具体的なワード(シーンや商品名、逆に曖昧なイメージワード)であったり、MAPで近隣に絞り込んでからの検索だったり、これまでの比較サイトや評価サイトでは検索のできないようなことも増えてきています。また、写真や動画での情報収集も増えてきているので今後の5Gの普及度合いによっては、それらをメインとした比較サイトが出てくるでしょう。これらに対応できるコンテンツを飲食店も準備しておかなくてはいけないかもしれません。

3.DECAX

 まだ、聞くことはほとんどないと思いますが、こちらは電通が2015年に提唱したコンテンツマーケティング向けに提唱したモデルです。
 →電通の記事はこちら

 こちらは、
 ・Discovery(発見):発見させる仕組みつくり
 ・Engage(関係作り):エンゲージしたくなる品質の高いコンテンツ
 ・Check(理性的態度による確認や注意)
 ・Action(行動)
 ・eXperience(体験とそれの共有)
 の略です。

 こちらは、コンテンツマーケティング向けということで、 企業側からのアプローチではなく、顧客からの「発見」で始まるといったところが違いだとのことです。これまでのAttention(注意)は、顧客が能動的に情報をとりにきていない状態です。一方のDiscover(発見)は、顧客が自身の好奇心や関心に基づいて情報を発見している状態をさし、能動的に 情報をとりに来ている事を示しています。ただ、他のフレームと比べる一つのワードに含まれている意味が大きいので、最初は理解がしづらいかもしれません。あと、仕組み作りの部分は個人では難しく、大手でないと実現できない面もあり、浸透していないとも思えます。ただ考え方のフレームとしては重要だと思いましたので、取り上げています。

Discovery(発見)
 これまでの企業側からのアプローチだけでなく、消費者側から発見したと思えるようなテクノロジーや仕組み作りのことです。
 例えば、Addressable TVのようにそこの視聴履歴や世帯構成などから最適なCMを分析し、地域レベルや世帯ごとにCMを差し替えるといった手法等。一見 消費者からは何の気なしにCMで見かけただけだが、実際は見せられていると言った事です。
 もちろんそれ以外でも消費者が探すようなコンテンツを作成し、ちりばめておくといったことも必要です。個人で費用をかけないようにするとするとこちらしか難しいかと思います。

Engage(関係作り)
 DECAXにおいては、能動的にDiscoverしてきている状態なので、コンテンツへのEngageへはそのまま行けそうですが、その内容が意図にそわないものであれば、離脱はしてしまいます。Discoverがコンテンツと出会わせる仕組みを指しているのに対し、Engageはそのコンテンツ自体の引きつける力を意味しています。偶然見つけた(それが見つけさせたものだとしても)コンテンツがどれだけ人の心を捉えられるかといった面とさらに実際の行動につながるパーセプション(認知、知覚)になっているか?が重要になってきます。

Check(理性的態度による確認や注意)
 品質の高くない情報の乱立により、コンテンツ自体の信頼性が、揺らいでいます。ステルスマーケティングの影響もあり、最近は情報収集時にその真偽、発信元、裏の意図を見極め、フィルタリングをかけています。一つの情報だけを見て判断せず、複数の情報を確認、しかも個人が発信しているSNSの内容などと照らし合わせたりしています。表面的なメッセージだけでなく、理性的に見たときにも真に価値のあったり、共感のできる情報や商品のコンテンツでないと弾かれるようになってきています。対策としてはやはりより多くの露出とその整合性を取ることです。

Action(行動)
 Actionは、これまでと同じく購買行動です。この前段階のDECのプロセスでニーズやエンゲージ面とを高められているか?が重要です。電通の記事の中でマーケティングにおけるコミュニケーションの役割は、「選ばれるための必然性を創ること」だと記載されており。まさしくその通りだと思います。そこができてくると直接的に検索されるような「ブランド」となりえます。

・eXperience(体験とそれの共有)
 youtubeなどでは頻繁に購入後のレポートや使い方、購入後の新たな発見etc.が投稿されるようになっています。今後もこの流れは変わらないでしょう。次のULSSAS(ウルサス)で出てくるUGC(user generated contents:ユーザーによって作成されたコンテンツ)もこの一環です。
 もちろん一般の方からだけでなく、こちらは企業側からの発信も含まれます。自社製品の使い方や利用の仕方の動画の発信もある種体験の発信です。こちら発信をきっかけとした新たな潜在ニーズの掘り起こしができたならば、結果、Discoverを生むということになりフィードバック・ループになって行きます。

最近、商品やサービスを購入した後もオンライン上で、たとえばHow-toやTipsコンテンツに接触して、商品の新しい使い方や魅力を発見することが増えてきている気がします。また、今後IoTの普及により、商品やサービスのオブジェクト指向が進むと、ユーザーの手によるHackコンテンツも増加し、このトレンドは更に加速すると考えられます。このプロセスをコンテンツのeXperienceと名づけました。

DECAXはコンテンツマーケティングを主軸とした考え方なので、個店の飲食店では、ちょっとイメージしづらいと思いますが、まあ、頭の高隅にでも入れておければと思います。

4.ULLSAS(ウルサス)

 AISASやAISEASなどインターネット時代に突入して提唱されたモデルですが、ここに来てSNSが台頭してきたこともあり、新たに提唱されたのがこのULSSAS(ウルサス)です。それぞれの頭文字の意味は下記です。

 U:User Generated Contents、ユーザーが作成したコンテンツ。通称UGC
 L:Like SNSの投稿にいいね!すること。興味を持つこと
 S:Search1 SNSで検索すること。SNSを利用する層はこちらでまずは検索。
 S:Search2 Google、yahoooなどを使っての検索
 A:Action 購買、来店
 S:Spread 拡散

下記にイメージ図を載せています。

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 これまでのAIDMAやAISEASのマーケティングはどちらかというとこちら側からプッシュしまくる、アウトバウンドの発想でしたが、このULSSASは完全にインバウンドです。3.のDECAXの発想もこちらに近いです。
 また、AIDMA等がA(認知)から徐々にステップアップさせ続けるモデルに対して、ULSSASはサイクルが回ってくれば、販促費用は大幅に抑えることもできます。

 一方で、企業(店舗)側で情報のコントロールができないといった面があります。リスクとしては
 ・意図していない内容が取り上げられてしまう
 ・そのコンテンツの品質レベルがばらばら(写真のレベルや内容の充実度など)
があるかと思います。そういった意味では自社(自店)の強みやオリジナリティー、アイデンティティを含んだ自社(自店)ブランドのイメージの浸透も含んだ集客戦略を考えていかなくてはいけません。そうでないとその時々のタイミングでやれそうなことばかりを行い結果として何でも屋になってしまいます。結果、統一したブランドイメージにつながらない→UGCを作ってもらえるようなお店でなくなってしまうので気をつけてください。

5.まとめ

 AIDMAが提唱された1920年代から焼く100年が経過し、環境は大きく変わりました。しかしながら、人間の根源的な欲求のスタイルは変わっていないと思います。そういった面ではこういったモデルは常に適用ができるはずですので、頭の片隅に入れてもらえればと思います。
 一方で、情報の伝達経路については日々変化し続けています。伝達のデバイスは下記のように変化してきました。

通信技術のない時代(口コミ)
  ↓
 手紙
  ↓
 電話
  ↓
 無線
  ↓
 ラジオ
  ↓
 テレビ
  ↓
 メール
  ↓
 携帯電話
  ↓
 スマートフォン

情報取得も
・口コミ
・新聞、雑誌、ラジオ、テレビといったマスコミ(情報の一方通行)
・インターネット(自分から探しにいく)
・SNS(双方向のやり取りに)
SNS時代に突入し自分も発する側になってきています。(shareやspreadもまさしくその一環ですね)

 何よりもここ最近で大きいのはスマートフォンの普及と通信速度の向上、画面の大型化です。これにより情報伝達の内容が個人間でも文字情報から写真、動画へと大きく躍進しています。それに伴い情報伝達のデバイスのメインがスマートフォンに移り変わりつつあります。
 情報検索が日常的にできるようになり、目的の行動のの直前のタイミング、場所でよくなった一方、普段の何気ない時でも情報を収集するようになってきています。AIDMAが提唱された時代のM(memory)は、自分の頭で覚えることでしたが、現在となってはスマートフォンの役割となりました。ちょっと昔にはわざわざ手帳などにメモしていたことが写真でキャプチャーすれば直ぐ済んでしまいます。その分、ちょっと気になっただけの情報も直ぐにスマホにメモリーするように行動も変わってきています。
 飲食店においてのお店探しも、行こうと思ったときからではなく、日常の中で行われています。そのあたりも考えていかなくてならない時代になりました。恐らく、ULSSASのステップの中にM(memory)とT(triger:きっかけ)が加わったモデルが出てくるのではないでしょうか?
 と書いているとキリがないので、ここでいったん終わりにしますが、また違った角度から書いたものをアップしたいと思います。

追記:飲食店向けの購買(来店)決定プロセスモデル『AISDSMAS-T』を作成しました。

これまで説明してきたモデルを改良し、新たなモデル『AISDSMAS-T』を作りましたので興味のある方は下記をご覧いただければと思います。 



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