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能力開発が鈍化しているのはメンバーシップ型雇用のせい?(インプット備忘録8-1)

こんにちは。とあるベンチャー企業でひとり人事をしている朱夏です。

先日12/17に、東京労働大学の最後の試験が終了しました。
9月から数えて約3ヶ月半、非常に学びの多い講義で新しいことをたくさん知ることができました。

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記憶が消えていってしまう前に書き留めなければ!
ということで、すっかりご無沙汰していたインプット備忘録の再開です…!

今回は能力開発管理のお話です。
従来の日本企業が採用してきたメンバーシップ型雇用に焦点をあてた内容になります。

ボリュームが多いので、前回同様に前後編の2本立てで書いていきたいと思います。
それでは早速いきましょう〜

◾️日本企業が抱える「ヒト」の問題

・なんだか職場に元気がない、社員が楽しそうじゃない
・若年層が管理職になりたがらない
・メンタル不調者が増えて対応に追われている
・チャレンジしたがらない現場

皆さんの職場でも心当たりはありませんか?
弊社で研修を提供しているクライアント企業でも、こういったお話はよく聞きます。

なぜこういった事象が起きるのか。
要因は様々ですが、人材管理の観点で考えると次のような要因が絡んでいると考えられます。

・管理職が本来の役割を果たしていない
 前回の人事役割の記事でも書きましたが、管理職の本来の役割はメンバーが期待役割を全うするためのサポートをすることです。最終的には、管理職が逐一細かく指示をしなくても、方針だけ渡してメンバーが自走している状態が理想形ではあるのですが、過度の人員削減によって管理職自身がプレイヤーから抜け出せず育てる余裕がないという職場も多いのではないでしょうか。

・競争力の厳選をコスト削減のみに求めてきた
 →商品、サービスの差別化に限界が訪れ、コストを下げることで競おうとした結果、従業員の賃上げを渋ってきたことで、人が育ちにくい環境が出来あがってしまい、企業としての競争力が弱まっているという現状があります。
実際、この10年間で労働者の平均賃金はほぼ横ばいな一方、株主配当は約5倍、経営者の給与は約2倍になっているそうです。

◾️メンバーシップ型雇用と日本企業人事制度の迷走

日本企業は長らくメンバーシップ型雇用を採用してきました。
ここ10何年くらいはジョブ型雇用がもてはやされていますが、メンバーシップ型が古いとか時代遅れというわけではありません。
メンバーシップ型でできることを改めて眺めてみると、日本人の気質に合っている部分がかなり多い様式であることが見てとれます。

〈メンバーシップ型雇用でできること〉
・柔軟な人材配置
・容易な職種間異動
・突発事項への対応
・愛社、会社の都合を優先してくれる
・会社の発展=自分の生活の安定
・新卒一括採用による若年層の失業抑制

任される業務がかっちり決まっているわけではない故に、状況に応じて職種を越えた人のアサインが可能になり、業務と業務の狭間にあるような仕事もお互いに拾い合いながら遂行することができます。

また、スキルがなくても学校卒業と同時に会社に入れるので、日本は若年層の失業率が他国と比較してもかなり低水準です。
就業経験の中で能力開発をさせてもらえる環境が整っていることも特徴的です。

一方で、メンバーシップ型雇用に伴い企業が負わねばならない責任もあります。

・雇用保障
 →本人の退職まで面倒を見る、雇用削減の際は誠意を持って対応する責任
・能力育成
 →職種間異動を可能にする育成の仕組みを整えて運営する責任
・生活保障
 →従業員が家族の生活を支えられるような報酬その他権利を提供する責任
・安全への配慮
 →長時間労働などの健康被害が起きないように対策を講じる責任

一昔前までは、この企業側の責任と従業員に求めるもののバランスが取れていました。
ところが、バブル崩壊の後遺症、アメリカ型経営の真似っこによる安易な短期志向と成果主義の導入etcによって、日本企業の人事制度はどんどん迷走していくことになります。

社会・経済状況の変化に応じてその在り方を少しずつ変えていかなければならなかったにも関わらず、経営側は段々とメンバーシップ型雇用に伴う責任を忘れ、従業員を都合の良いように動かして見返りを十分に与えてこなかった結果が現在の状況と言えます。
※もちろん、全ての企業がそうだというわけではありませんのであしからず。

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昨今はジョブ型雇用に注目が集まり、従来の採用手法から舵を切る企業も増えてきました。メルカリさんやLINEさんでは、ジョブディスクリプションも綿密に整えられてかなり体系化されています。
(余談ですが、これからジョブ型採用を検討される企業の方はぜひメルカリさんのジョブディスクリプションを見てほしいです。めっちゃ参考になります)

今回のお話では「メンバーシップ型が悪い、ジョブ型にすれば全て解決」ということが言いたいわけではありません。
よく理解もしないで短期指向、成果主義、ジョブ型を導入しようとしてメンバーシップ型の良いところを殺し、歪になってしまったことを問題に挙げています。

じゃあ、こんな歪な状況になっているのは企業側のせいなんだから企業が全部なんとかすべきなのかというと、そういうお話でもなく。

後編では、個人と組織に求められるこれからの能力開発について書いていきたいと思います。

それでは今日はこの辺で( ˘ω˘)

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